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冬の陽射し 1

 クリスマス当日の午後。

 瑠衣は大志と一緒に彼の部屋に向かっていた。

 二人が再会したファミレスのある駅で待ち合わせたけど、彼の会社があるのとは反対方向に歩く。


「お家は事務所と反対側なんだね」

「そうなんだ。たくさんの人と会うし、家とは分けたくてさ」

 木々が多い坂道を少し登ったところに十階建てくらいの白い外壁のマンションがあり、エレベーターで七階に登る。

「どうぞ入って」

「お邪魔します」

 促されて部屋に入ると白い壁にグラフィックのパネルが数枚飾られ、木製の家具を配した居間のソファには独特な柄のカバーが掛けられていた。

「おしゃれなお部屋、大志くんセンスいいんだね」

「そうかな、IKEAで揃えて自分で組み立てたりして、結構そういう事好きなんだ。でもこっちはスウェーデンのお土産に貰ったんだよ」

 大志は陽射しを受けてキラキラと反射するモビールのような窓辺の飾りを指した。

「綺麗だね、ガラスの飾りなの」

「サンキャッチャーって言って、冬の陽射しを受けとめて楽しむ飾りなんだって。気に入ってて実家から持って来て飾ったんだ」

 受けた光の反射が床の上でも踊っている。

「わあ、ちゃんとツリーもある。これ可愛い」

 瑠衣の胸くらいの高さの扉付きボードの上には、白く塗られた木製パネルを組んで作られた三十センチくらいの高さのツリーがある。

 近づいて眺めると、枝の部分と本体にいくつかある丸くくりぬいた窓の部分にごく小さなフックがあって、カラフルにペイントされた小さなオーナメントをそこに提げるようになっている。

「それは最近見つけたんだ。今コーヒー淹れるね」

 対面式のキッチンから大志が言ってコーヒーメーカーが動き出した。

 それは赤い色の器械で、他にも赤い色のジューサーやキッチンツールがある。

「大志くん赤が好きなんだね、キッチンも赤で揃えてるんだ」

「うんそうだね、確かに赤が多いなあ」


 去年初めて出会った夜も、大志くんは赤いスニーカーを履いてたっけ。

「はい、瑠衣ちゃんはミルクだけ。僕は甘いので」

 ソファのそばの木製のローテーブルに大志がマグカップのコーヒーを運んでくれて、ソファに二人並んで座った。

「落ち着けるいいお部屋だね」

「いつも仕事でバタバタだから、部屋ではのんびりしたくて。もっとまったり感出そうか」

 大志がタブレットを取り上げて操作すると、部屋のスピーカーから音楽が流れてきた。

 男性の低い歌声と柔らかいギターの曲。

「本当にカフェみたいだねー」

「でもごめんね、ちょうどお菓子がないなあ。チョコならあるけど、瑠衣ちゃん食べる」

「ううんコーヒーでいいよ」

 二人並んで話すのって、ゆったりした感じでいいな。

 いつもは外で会うからカフェでもレストランでも向かい合わせに座るし。

 だから並んで座るって、あまりない。

 大志くんとの距離がいつもより近くて、彼が手にした赤いマグカップと横顔とに瑠衣がそっと目線を送ると、彼もこちらを見て言った。

「そのワンピースいいね、よく似合ってるよ」

「そうかな、大志くんが褒めてくれて嬉しい」

 今日はベージュ色で袖と首から鎖骨周りが透かし模様入りの、スカートがふわりと広がる上品な感じのワンピースにした。

「そう、とっても可愛いよ」

 微笑んだ彼に見つめられて、それを意識すると瑠衣は少し困る。

「あの、大志くんに私、クリスマスプレゼントがあるの。今渡してもいいかな」

 早くなった鼓動をなだめながらそう言った。

 大志へのクリスマスプレゼントは、モノトーンのボーダー柄でとても肌触りのいい部屋着にした。

「これ肌触りがすごくいいなあ、それにお洒落だし。ありがとう瑠衣ちゃん、大切に着るよ」

「よかった。大志くんの気に入ってもらえたなら、とっても嬉しいよ」

 好きな人にプレゼントを選ぶのって、すごく悩むけど楽しい。

 こうして大志くんの笑顔を見れたら嬉しい気持ちになるな。

 大志くんのこと、私まだ知らないことも多いんだよね。

 でもこれからもっと彼の事を知れたなら、もっと喜んでもらったり、もっと嬉しくなることができるかな。


「じゃあ僕からもプレゼント。これ、開けてみて」

 手渡された小ぶりな白い紙袋の中には金のリボンをかけたロイヤルブルーの小箱があり、その蓋を開くとブルーのベルベットの内張にピンクがかったゴールドのペンダントが載っていた。

 ペンダントトップはハート形を描く流線で、それが冬の陽射しを捉えて踊るような煌きを放つ。

「これ私に、綺麗」

「そうだよ。この色、瑠衣ちゃんに似合うと思って」

 煌きに圧倒された様子でしばらく言葉もなく小箱を手にしたままの瑠衣に、少し首を傾けて大志が言う。

「ねえ着けてみて。あ、僕が付けてもいい?」

「え、大志くんが」

 うなづいた大志がペンダントを手に取ると瑠衣は彼に少し背を向け、下ろして巻いた黒髪を避けて首筋を顕わした。

 細くひんやりとしたチェーンの感触と大志の手のぬくもりを肌に感じる。

 さっきよりもっと鼓動が速くなった時、後ろから言われた。

「はいできた。こっちを向いて」

「似合うかな」

「うん、やっぱりよく似合うよ。鏡で見てごらん」

 大志は瑠衣の手をとって立たせると、玄関の壁面に取り付けられた姿見の前に向かった。

 確かにベージュのワンピースにも、肌の色にもペンダントの色味が映えて品良く見える気がする。

「素敵。大志くんありがとう、このまま着けて出かけようかな」

「いいね。そうしてよ、すごく可愛いから」

 まっすぐに褒められると困ってしまう。

 また言葉を継げずにいると、姿見の中で後ろに立つ大志が手を伸ばして瑠衣の肩にかかる長い髪を避けた。

 と思った瞬間、頬に柔らかく唇が触れた。

「あ、大志くん」

「ごめん急に。瑠衣ちゃん、可愛いって言うと照れるよね、さっきもそう」

「だって私……、別に可愛くないもの、普通です」

 大志に気づかれていたのだと思うと急に顔が熱くなって瑠衣は俯き、大志はその手を取って向かい合わせにすると、軽く身を屈めて瑠衣の顎を持ち上げた。

「ほら、またそう言う。君は可愛いよ」

 そのまま瑠衣が言葉を継ぐ前に、唇が触れ合った。


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