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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第二章 賢者狩り
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66:三本の刃

「セラさん、残念だったね。くっしゅん……ところでさシァン、こっちも重要なことなの」

「うん」

 誘拐騒ぎでごった返す大通りを堂々と横切るシァンとネモ。今は王城へと向かっているところだ。

 どうやら、ネモはシァンを探していたらしく、そのおかげで彼女は誘拐犯になることなく済んだというわけだった。

「ピャギーの具合が悪いの。はくしゅ……わたしが食べさせちゃいけないもの、食べさせちゃったのかも」

 不安な顔をするネモに、シァンは笑い返す。

「それは大丈夫だよ、心配いらない。ピャギーが食べ物で身体壊したことなんてないもん。それより、ネモもまたくしゃみ?」

「うん……はくしゅん…………ィルさんの薬が切れたみたい」

 騒ぎが届いていないところまで来ると、二人は王城へ向けて歩を早めた。



 料理が所狭しと置かれた丸テーブルを囲む三人がいた。

「なあ、アルケンは?」

 円らな瞳で骨付き肉に狙いを定めたケルバが言った。

 それに、滑らかなカットのサンドイッチを喉に流し込んだダジャールが返す。

「あ? 知るか。食い逃げはもうないんだ。逃げる必要なんてないだろ」

「じゃあ、トイレだな、トイレ」ズィードはケルバが狙いを定めていた肉を奪い、頬張る。「はぉるけんは小さいから、んぐ……一回でたくさん食えないんだよ」

「ちょ、ズィード、それ俺が食おうとしてたのに!」

「食おうとしてただけだろ、食ったのは俺だ」

「じゃあ、これは俺がもらうぞ、ズィード」

「んな、それは俺のだぞ、ダジャール!」

「もう遅い、俺が食った」

「俺もいただきぃ~」

「あ、ケルバまで! 俺は団長だぞぉ!」

 愉快な食卓は続く。



 ソクァムは四角い瞳孔を、同じく羽を持つ者に向ける。

「普段からそれだけ大人しくしてれれば嬉しんだけどな」

 雄を嫌う巨鳥の頭を優しく撫でる。

「ぴゃ~……」

 お騒がせトリオをアルケンと案内人に任せ、別行動していたネモから調子が悪くなったというピャギーを預かり城まで運んだ。相当辛いのか、運んでいる間から大人しかった。嬉しいとは口にしたものの、当然冗談だった。嫌悪の対象になっていようが、仲間であるピャギーの心配をしないわけがない。

「あとで突っついてくるなよな」

 ぐったりとするピャギーのそばから離れ、ソクァムはそれにしてもと思う。

「テムさんとイソラさんはどこに行ったんだろうな?」

 ピョウウォルが『賢者狩り』と繋がりを持っている可能性があると、ギーヌァ・キュピュテに来た。連盟の二人は王と対面して、なにを感じたのだろうか。なにか感じたのだろうか。

 ふと、部屋の前を通り過ぎる人影が目に入った。

 シァンに同行した案内人だった。

「確か……」記憶を巡り、案内人たちの自己紹介思い返す。「イジャスルプさんだ」

 彼がいるのならシァンも到着したのかもしれないと、ソクァムはピャギーに一声かけてから彼を追いかけた。イジャスルプが向かった先は他の部屋と違い、扉が明らかに豪華な部屋だった。

「イジャ――」

 声をかける前にイジャスルプは入室してしまった。

 どう見ても王に関する部屋だと思われる扉の前に、ソクァムは立ち尽くす。さすがに入るのはまずいだろう。引き返そうとする彼の耳に、中から会話が届く。

「ユール、この場所がやつらにばれた。追われる前に出よう」

「逃げなきゃダメかな、パパ。今ならボクでも――」

「慢心はいけない、ユール。あの女はあなたよりもたくさんの能力を持っている。確かにあなたの力は賢者たちそのものですが、力だけがものをいうわけではないんだ。パパの言うことを聞いてくれるかい?」

「……パパ」

「……ん?」

「もう遅いみたい。扉の前に、一人」

 その声に、ソクァムの背筋に悪寒が走った。敵意だ。無意識に半歩、身を引いてしまう。

「でもそれよりも、ここに二人と、一人……来た」

 突然、空気が荒れ、扉が開いた。ソクァムは顔を腕で覆いつつ、部屋の中を見る。



 濡れたような輝きを放つ刃。

 なんの変哲もない刃。

 フクロウ意匠が施された刃。

 三本の刀剣が各々に、敵に切っ先を向ける。

 テムの握る天涙は、ピョウウォルを。

 イソラの握る鍔のない刀は、セラを。

 セラが握るオーウィンは、イジャスルプを。

「ピョウウォルはボクとは言わない!」とテム。

「ルルフォーラっ!」とイソラ。

「あら」

 碧き花が散る中、不敵に肩を竦めるセラ。

「じゃあ……プルサージ! でいいかしら?」

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