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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第零章 舞い戻る碧き花
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6:終わり告げる名。転じて新たな始まりの兆し。

 路地の世界での依頼を終えたさすらい議団は、ナトラード・リューラ・レトプンクァスへと帰還した。

「度が過ぎるぞ、三人とも!」

 漂流地にソクァムの怒鳴り声が届き渡る。

 腕を組み、目を細めるソクァム。床に正座をさせられる三人の仲間を見下ろす四角い瞳孔は、高さを押さえられ正方形に見える。

「依頼はちゃんと終わったんだからいいだろ」

 団長ズィードの言葉に、他の二人も黙って頷く。

「ズィード、ダジャール、ケルバ」傍の椅子に座るセブルスは三人を順に見て言う。「依頼はソクァムたちが果たしたんだろ。わかってるか?」

「そうだよ! あんたらのせいで、わたしも最後は協力できなかったんだからね」

 ネモがキンキンと文句を垂れる。

「猿娘が強けりゃ、俺たちを止められたろ? 責めるならそいつにしろ」

「きぃっ! 責任転嫁する? この状況で?」

「大人げない、ダジャールぅ」

 ベッドに座り成り行きを見届けていた、少年ということを差し引いても小柄な男の子。白虎を指さして笑った彼はアルケン。さすらい義団の最年少メンバーだ。

「黙ってろ、アルケン。捻り潰すぞ」

「へへへ」

 笑って流す最年少。ちろちろと口から細長い舌が覗く。歳が六つ、体格が三倍ほど違うダジャール相手でも全くもの物怖じしない態度だ。

「うはは」

 唐突に円らな瞳を細めてケルバが笑った。

「にしても楽しかったな、さっきの戦い! もっかいやらないか?」

「いいね」

「いいな」

「ぴゃぎっ!」

 懲りない三人の頭を巨鳥ピャギーがその嘴で順繰りに突っついた。

「った」

「って」

「っつ」

「ぴゃー!」

 ピャギーは宝石を散りばめてような美しき両翼を、誇らしげに広げて見せた。

「くそどり! 焼いて食ってやるぞ!」

 ダジャールがピャギーに飛び掛かり、部屋は騒々しさに包まれる。

 頭を抱えるソクァム。呆れるネモ。巻き込まれないように距離を取るアルケン。ダジャールとピャギーの乱闘に混ざるズィード。そして、腹を鳴らすケルバ。

 ケルバの腹の音はあまりに盛大で、部屋はそれで静寂を取り戻す。

「あー、ピャギーの焼き鳥じゃなくて、普通にメシ食いに行かない? 腹減った」

「おお、いいな!」ズィードは満面の笑みで、団長然として言う。「依頼の報酬も入ったし、腹いっぱい食おう!」

「駄目だ!」

 水を差すのはソクァムだ。その目は怒りを灯したままだ。

「なんでだよー、ソクァム。怒るのとメシは別にしようぜ。食った後、ちゃんと反省するから。な? な?」

 ズィードはダジャールとケルバに同意を求め、二人も揃って頷く。

「……いや、今回の依頼はマイナスなんだよ」

 口元を引きつらせながらソクァムは言った。その目にはもう怒りすらなく、虚空を見つめているようだった。

「お前たちが壊した建物の修理代でな」

 件の三人が揃ってあんぐりと口を開けて、喉から隙間風よろしい音を漏らした。

「あんなボロい建物の!?」とケルバ。

「壊れやすく作ったのがわりぃだろ!」とダジャール。

 はっと思い出したようにズィード。「……セブルス!」

 懇願に似た眼差しを向けてくるズィードに、セブルス左のサファイアでまっすぐ見返した。

「誰を見てるんだ、ズィード?」

「んん~っ……!」

「反省しろってことだな」

「そこをなんとかっ、セブ――」

「セラ!」

「っ!?」

 セブルスは部屋に勢いよく入って来た赤髪の友人、シァンに鋭い眼光を向けた。射抜かんばかりの睨みだ。義団の全員も凍りついたように彼女に視線を向けていた。

 だがシァンはそんなことは関係ないと言わんばかりにセブルスに詰め寄っていく。

「セラ! ユフォンさんが!」

 見つめる竜の眼に、フードから覗くサファイアが揺らいだ。

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