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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第一章 ホワッグマーラの変
59/387

58:行方

 時は少々遡り、エァンダとサパルの前にコクスーリャが現れた頃。

 彼は突然の光の中にいた。

 これが世界が壊れたということなのかと、ユフォン・ホイコントロは思った。

 シャツの装いで、縮んだ身体。幽体だ。死んでも元の大きさじゃないのかと、彼は小さく「ははっ」と笑った。

「ユフォン」

 不意に名前を呼ばれ、その方向に顔を向ける。そこには手の平にガラス玉と、脇に禁書『副次的世界の想像と創造』を挟んだフェズルシィ・クロガテラーがいた。大層な疲労顔だ。

「これが、ホワッグマーラ、そして本」

 言いながら二つの持ち物を押し付けられ、ユフォンは当惑しながらも受け取る。

「雲の奴は先に吹き飛ばした。あとはお前の幽体だ。……ヒントくれたセラも、お前のためにも出してやりたかったけど、見つからなかった……悪い…………。ホワッグマーラを頼んだからな」

「ちょ、一体どうい――」

 言っている途中に、大きな力を受け、ユフォンの身体は光の中から弾かれた。

 なにが起きているのさっぱりわからないまま、衝撃に幽体を消さないように気を張るユフォン。身体の自由が利くようになって、浮遊感の中、彼が目にしたのは、白くて黒い、黒くて白い、異空間だった。

「どういうことなんだい、フェズ……」

 漂いながら、託されたガラス玉と禁書に目をやる。

 禁書については理解が及んでいる。この中に、自身の実体やヒュエリ、それから避難した人々がいる。ユフォンならば、いつでも出すことは可能だ。それで避難が本当の意味で完遂されることになる。

 では、ガラス玉は?

 ユフォンは親友の言葉を思い返して呟く。

「これが、ホワッグマーラ…………ははっ、まさか。いくらフェズでも、そんなこと……神様が作り出した鍵じゃあるまいし………………ははっ」

 ユフォンは苦笑から一転、表情を締め、ぐっとガラス玉を握りしめた。

「任されたよ、バケモノ」



 異空を漂う者が、他にもいた。

 ユフォンに先んじて、青雲が流れていた。

 気を失い、成されるがままに。

 そうして、どこかの漂流地に流れ着いて、住民に揺り起こされる。

 真っ青な瞳が半開きになって、どこか白んで虚ろだ。

「おい、大丈夫かいや」

 住民の声に、男は吐息を漏らす。

「名前、言えるけ? あ?」

「名、前…………」

「そうだ、名前け、名前がいえりゃ、ひとまず安心だけんね」

「…………ロク……マルニ」

「ロク・マルニけ、おっしゃ、わかった! ロク・マルニ。おらが運んだるけ、安心せいね」

 ロク・マルニは安心したように瞳を閉じた。



 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ――――――。

 ツーーーーーーーン――――――。

 カチャ、チャ、カチャン、カ、カチャン、ツン、ッチャ、カチャ――――――。

 ドゥォォォォン――――――。

 水晶に飾られた耳に、微かに音が届く。

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