表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第一章 ホワッグマーラの変
51/387

50:ナパスの英雄たち

「幽霊……」

「幽体化のマカ、できるようになった……ってかさ、俺って本当に死んだのか?」

「だって……ヌォンテェもイソラも……クィフォ(うそ)…………」

「ズィプ! なんでお前がいるんだよ。なんで攻撃止められたんだよ!」

「おう、フェズ」満面の笑みでフェズに手を上げるズィー。「難しいことはわからんけど、空気の中から魔素を消したみたいだ。俺がいる理由は俺にわかんねぇ……いや、たぶんセラを助けるためだ」

 ズィーはちらりと、だが確実にルビーをサファイアに向けた。そして再びフェズに向ける目は鋭い。

「で、なんか戦争がはじまったってのに、なんで二人が戦ってんだ? 俺はそっちの方が気になる。答えようによっちゃ、俺はお前の敵だぞ、フェズ」

「……『太古の法』やめっ」フェズは長く息を吐いた。「別にこれじゃなくてもいいし。ズィプより俺の方が強いから」

「今の俺は、ちょっとわかんねぇぞ? なんか知んねーけど、この辺の空気はすげぇ」

 ズィーは勝気にスヴァニを構えた。

「セラ、たぶんお前が戦う場所はここじゃねえ。行け。それとも俺の勘は信じないか?」

「…‥終わったら、ヒュエリさんも一緒に話そう。だから、消えないでよ」

「おう」

 彼の返事を聞くと、セラはコロシアムの穴の上に跳んだ。

 ウェィラが入っていった穴を覗き込むと、暗くない。地下闘技場が下に望める。

 そこにドルンシャとズーデルの気配はない。それどころか、辺りに二人の気配は感じ取れない。移動したのだろうか。

 各地であらゆる気配が混線する中、二人のそれを探す。比較的わかりやすい気配だが、見つからない。ウェィラも呼びかけに答えてくれなかった。

止まってる(ゼィグ)場合じゃない(ラーシス)

 セラは躊躇いなく、穴に落ちていった。

 術式の床を使いながら降りる最中、想うのはズィーのことだ。

 生死は定かではない。それでも目の前にいたのは紛れもなくズィプガル・ピャストロンだった。理屈はわからないが、彼がいた。胸が熱くなった。

 彼女の纏うヴェールが輝きを強める。



 地下闘技場に降り立つと、セラはその壁に巨大な横穴が空いていることに気付き、足を向けた。

 瞬間移動の類を使っていなければ、移動できるのは上の穴のほかにはそこだけだ。もしかしたら、ウェィラが飛ぶ前の揺れは、この穴が空いたことによるものかもしれない。

 横穴はしっかりと明るい。

 進めば進むほどに、明るさを増しているようだった。

 行きついた先は、地上よりも明るい空間だった。眩さに視界が白む。

 神々しくも思える静寂のなかに、セラはようやく気配を捉えることができた。

 二つ。

 ズーデルの異常に昂る気配。そしてもう一つは、セラの知らない大きな気配。ドルンシャの気配がない。

 目が光に慣れてくると、人影がはっきりとしてくる。

 ドルンシャはいた。鼓動を止め、燃え殻がごとくスカスカになって伏していた。当然ズーデルもいる。青雲のマント共々輝いていた。しかしセラには、それらがどうでもよくなった。

 絶句。

 ズィーとの再会すら、くすんでしまう。

 彼がセラに目を向けた。

「ああ、やっぱりセラだったか。似てる誰かであってほしかったな……戦いに身を置かせてしまったのは、俺のせいか…………」

 透ける手で持つツバメがフクロウの姿を重ねている。彼女の記憶にある彼の姿と遜色ない。

「でも、会えてうれしいよ、セラ。大きくなった」

「うん、ビズ兄様……っ!」

 ビズラス・ヴィザ・ジルェアス。

『輝ける影』に『碧き舞い花』は笑顔で頷きを返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ