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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第一章 ホワッグマーラの変
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45:“そういうことだ”

「ジイヤ殿! 俺はここを抑える! フェズくんとセラちゃんもいるんだ、大丈夫だろう! 娘を安全な場所へ頼む! シューロくん、一緒に!」

「はいっ!」

 ブレグのその大声とシューロの返事を聞いて、ズィーも声を上げる。

「コロシアムは俺が!」

「了解しました!」

 ジイヤが主にブレグに向けてから叫んでから、シューロに寄り沿われるジュメニの元へ移動をはじめる。

 ブレグは爆発の後に一気に現れた敵たちに向かっていく。

 それを見てからズィーはマグリアにあるコロシアムを思い浮かべる。想い人の顔も一緒に。

 スヴァニを抜き、空気も纏う。準備万端。

 いざと言わんばかりのズィー。その透けて見える背景が、渦巻いた。

 空気の揺らぎを感じ、敵に後ろを取られたと思い、彼は振り返る。

 そして、「おっ」と目を瞠る。

「……そんな」

「おう、ユフォン。やっぱ会えた。戦闘以外の勘も随分役立つようになってきたな」

 ひとりで頷くズィーの前には、同じく、透けた身体で、赤系の髪色で、同じ人を想った男が目を瞠っていた。

 幽体のユフォンが、驚愕していた。

「ズィー……なのかい?」

「幽体化のマカ、使えるようになった」

「……マカそのものを使えないでしょ、君は」ユフォンは呆れを混ぜた嬉しそうな笑みで言った。「よくわからないけど、ズィー、君がいるのは喜ばしいことだ。見ての通り、ホワッグマーラは攻撃されてるんだ、すぐにコロシアムに行って。そこが最前線だ」

「おう、今、行こうとしたとこっ!」

「うあっ!?」

「ぐあっ」

 ズィーはユフォンに向けてスヴァニを振るった。

 頭を抱えたユフォンの後ろで白雲の男が伏した。

「思惟放斬もすげぇ使える」

 強張る口をなんとか動かして、声を絞り出すユフォン。「死ぬかと思った」

「半分死んでるようなもんだろ」あっけらかんとズィー。「幽体なんだし」

「君は……いいや、行って」

「おう、また後でな、ユフォン」

 随分逞しくなったな、なんてことを考えながら、ズィーはナパードで消えた。



 最悪だ。

 勘は果てしなく深い不穏の底にセラを叩き落した。

 壁に磔にされながら、セラは彼を睨む。

 フェズルシィ・クロガテラー。

「あんな奴の言うこと、信じるなんて、ありえないっ!」

「別に信じ切ってるわけじゃない。すぐに結果が出そうだからさ。約束が破られたらその時また違うやり方を試せばいい」



 ~〇~〇~〇~

「君がこの世界から出られる方法を、俺は知ってる」

 ズーデルは友達と話すようにフェズにそう言った。

「君が一番したいことだろ? どう? 俺に協力してくれれば、絶対外の世界に行けるよ」

「……」フェズは未だに訝しんで、ズーデルの真っ青な瞳を貫くほどに見つめる。「どんな方法だ? 俺を敵に回したくないから嘘言ってるんじゃないか? 司書さんだって簡単にいかないことだ」

「世界を壊す。簡単でしょ? そうすれば君は外の世界に出られる。方法は話した。どうする?」

 セラは黙り込むフェズを横目で窺う。彼はただズーデルを見つめている。

「帰る場所があるから、外に出る意味があるんだよ」

「ああ、なるほど。それは俺にはない考えだ。でも、安心しなよ、俺がこの襲撃の目的を果たせば世界を造れるようになる。だから、正確には一度(・・)壊すだ。悪いね、言葉が足りなくて」

「そっか」

「フェズさん」

「フェズルシィ」

 セラが、ドルンシャが、天才の名を呼ぶ。その呼びかけにフェズはドルンシャ、セラと順に視線を向けながら言う。

「帝様。セラ。そういうことだ」

「っ!?」

 軽く首を傾げたフェズに合わせ、セラは大量のマカによって後方へと吹き飛ばされた。

 そのまま魔素に押さえつけれらる。

「フェズ、さんっ…………!」

「うん、じゃあ、舞い花ちゃんをよろしく、フェズ。俺は君のためにも目的を果たしてくるよ」

 フェズはセラを振り返る。「ああ、そうしてくれ」

「ボリジャーク。フェズがバテたら助けてあげて。言っとくけど、君より彼の方が重役だからね、もし、俺が戻ってきてフェズが死んでたりしたら、三回は殺すから、お前のこと」

「……大丈夫だ。任せてもらおう」

 ズーデルは小さく鼻で笑ってドルンシャに向かって歩いていく。

 ドルンシャが手に魔素を集め放とうとするが、それよりも早くズーデルが手を差し向けた。するとドルンシャの動きが止まった。

 魔素の激流の中にいるセラに比べれば苦しそうではない。ただ、思うように体が動かせないようで困惑の色を浮かべている。

「さっきは殺すとか言ってごめんね、帝さん。でも大丈夫、保管場所に入るのにあんたが必要なことも実は知ってたんだ、俺。だから殺さないよ、今はね」

 動けない中、ドルンシャはズーデルを睨むことしかできていなかった。

 ドルンシャの元に辿り着くと、ズーデルは地面に向かって拳を振り下ろした。コロシアムの床がきれいな円形に崩れてなくなった。

「じゃ、行こうか」

 ドルンシャに触れることなく浮かせ連れ、ズーデルは穴に消えた。

 ~〇~〇~〇~

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