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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第一章 ホワッグマーラの変
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27:凪

「セラは、どこだ」

 包帯のズィーが、半透明のズィーに問う。

「は? セラならとっくに見つけただろ?……てか、ここホワッグマーラか? 海底遺跡だろ」

 若いズィーは今度は辺りを見回した。そうして後ろを振り返ると、ジュメニと目が合った。

「あ、ジュメニさんじゃん。なに? これ、どゆこと?」

「……えっと、ズィプくん……それはわたしが聞きたいんだけど?」

「セラはどこだ」

「あん?」若いズィーは再び包帯の自分に目を向ける。「さっきからなんなんだよ、お前。てか、誰だよ。俺かよ、その格好。なら包帯だらけとかおかしいだろ。俺はそんなに怪我するほど弱かねーぞ……ん?」

 文句を垂れながらも若いズィーは、包帯ズィーの背中に愛剣がないことに気付く。

「んだよ、やっぱ偽もんだな。スヴァニも持ってねーじゃん、お前」

 鼻で笑って、若いズィーは背中からハヤブサの名を持つ剣を抜いて、包帯にその切っ先を向ける。

「俺の真似すんなら、まずスヴァニだろ」

「セラは……どこだ!」

 包帯のズィーが凄み、空気が騒いだ。

「だーっ! 意味わっかんねーだよ!」

 若いズィーが苛立ち、スヴァニを横に振った。

 空気が静まった。



 風が止んだ。

 エメラルドを瞳に宿したセラは、フォルセスを岩肌に突き立てると諸手を広げた。

「太陽の子直伝、天晴(あっぱれ)(しるし)。そして、北風の子直伝、寒風さむかぜの印」

 セラは身体の前で握り拳の甲を上下に重ねた。

 するとセラの両手を暴風が包んだ。

 それを見て、ゼィロスは呟く。「これはオクチュリアの印の技術か」

「なに? どういうこと、これ!?」

 凪いだことで、竜巻状の身体となって宙に姿を現すこととなった空気人間の少年。驚きで、身体がざわめいている。

「外在力がよく効くなら、風の力も当然聞くよね?」

 セラは空気少年に尋ねるように小首を傾げて見せて、それから術式による足場を用いて少年に向かっていった。

「うわっ、なにその手! さっきのより痛そうなんだけどぉ!」

 さらに高くセラから離れようと浮かび上がっていく気体人間。

 そこでセラは駆け上がるのをやめて、花を散らした。

 少年の背後だ。

「えっ!?」少年はセラに殴打され、地面に落ちた。「ぐああ……」

 セラが少し遅れて着地する。

「……いてて…………負けかぁ~」

 少年は潔く負けを認め、セラに向かってブレスレットが光る腕を伸ばした。

「わたしがもらっていいのかな?」

 セラはゼィロスとドードにどことなく申し訳なさそうな視線を向ける。

「まあ、ここはお前でいいだろ」

「むぅ~……俺の見せ場、取られた~」

 ゼィロスは小さく肩を竦め、ドードはむすっとして顔を逸らした。

 それを見てセラは少年の腕に手を伸ばす。

「これって、どんな仕組みでついてるの?」

 セラはそんな疑問を誰に聞くでもなく呟きながら、少年のブレスレットに手を触れた。これで彼女の持つブレスレットは三つだ。

「よーし、じゃあ続きやりましょう!」

 ブレスレットがセラの腕に移るのを待って、ドードが番刀を突き上げた。

「竜巻の君もまだ戦えるっしょ?」

「うーん、まあ動けるけど……」

 気体人間の少年は地面に胡坐をかいて、首を振る。

「俺はやめとく。このお姉さんにはもう勝てそうにないもん」

「諦めるんすか?」

 ドードは納得いかなそうだ。

 だが少年はまたも首を振る。表情は見えないが、体を形作る竜巻が穏やかになったようにセラには見えた。まるで笑っているようだと。

「違うよ。諦めてないからこそだよ。予選を通過して、決勝でこのお姉さんにリベンジするんだ。そのために、ブレスレットを集めるんだ!」

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