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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第一章 ホワッグマーラの変
22/387

21:帝の指は二度鳴る

『全空チャンピオンシップ。今大会の予選はこの世界、ホワッグマーラを広く使う』

 ドルンシャ帝の説明はすでにはじまっている。

『まずそれが実現したことに対して、各帝都の帝、開拓士団、警邏隊の協力に、マグリアを代表して僕から多大なる感謝を申し上げます』

 彼は参加者たちから視線を外し、後方、貴賓席に収まる者たちに頭を下げた。

 前後二列になって並ぶ貴賓席の中にはセラの知る顔が五つあった。

 前列にホーンノーレンのヨルペン帝と、ワールマグの英雄クラスタス・ユル・リュリュス。

 後列にホーンノーレンの一人開拓士団ヤーデン・ガ・ドゥワ、マグリア開拓士団団長ヴェフモガ・ジュ・クルート、そしてマグリア警邏隊副隊長パレィジ・エサヤ。

『そしてこの世界を代表して』今度は参加者と客席に長々と視線を向けたドルンシャ。「参加者並びに観戦者の皆さんに、お詫びと感謝を申し上げます。この世界へ入ってくるとき、手荷物や身体検査に協力していただき、誠にありがとうございました。その時も説明を受けたことでしょうが、改めて、僕の方から説明させていただきます』

 帝は、以前ホワッグマーラに起きた大事件からの学びとして、多くの人に迷惑をかける制度を設けたことを丁寧に説明し、重ねて頭を下げた。

 その姿を見ながら、セラは気まずげにプライに呟いた。

「わたし、受けてないけど大丈夫かな?」

「俺に聞かれてもな」

「ですよね」

 肩を竦めるプライに、セラも同調するのだった。



『それでは今回の予選の内容を発表しよう』

 本題に入り、ドルンシャの声に重みが増した。

『サバイバルだ』

 その一言に参加者たちはもちろん、観客たちまでが息を呑んだ。言葉の圧が雑音を許さない。

『とはいっても命の奪い合いではない。命を大事にするのがこの大会だ。奪い合うのは――』

 ドルンシャは指を鳴らした。するとセラの腕にブレスレットが現れた。鮮やかな紫色が、サファイアに映り込む。

『――そのブレスレットだ』

 セラがプライの方を見ると、彼の腕にも同じものがあった。彼だけではない、参加者全員の腕に、紫が光る。

『みんなにはこれより、俺の力でホワッグマーラの各地に跳んでもらう。各都市の開拓士団が開拓した地で、管理された地ではあるが、人の手が付けられていない場所がほとんどだ。獣がいる場所もあるから注意すること。そして跳んだ先が各々のスタート地点。そこから三日、他の参加者を探し、ブレスレットを七つ、その腕にして、こちらが用意したゴールを目指してもらう。先着十六名の参加者が、本選出場者となる。予選の終了は十六人の参加者が出揃ったとき、もしくは期限である四日目の朝日が顔を出すまでだ』

 ここで一度口を閉じ、ドルンシャ帝はしっかりと正面を見据えた。

『どんな手を使ってブレスレットを手に入れても構わない。しかし、先にゲルソウ氏が言ったように、他の参加者の命を奪うことは許さない。予選終了までは、僕を含め、多くの人間が君たちを見ている。さらには映像はすべて記録される。言い逃れはできないからね』

 鋭く参加者たちに睨みをきかせてから、ドルンシャは表情を緩める。

『最後に、ブレスレットを奪う方法だが、物理的に奪うこともできるが、そのブレスレットにはマカがかかっているから、手、もしくは腕を他の参加者のブレスレットに当てればそれで大丈夫だ。以上で説明を終わるけど、予選開始の前に、最後の選択だ。参加を辞退するものは申し出てほしい。五分待とう』

 それから五分、何人かの参加者たちが地下闘技場を去っていった。

 当然セラは残る。

 そして。

 ドルンシャが口を開く。

『それでは、みんなの健闘、そして面白い戦いの提供を信じて、スタートだ』

 帝がぱちんと、指を鳴らす。

 その音が地下に響くと、参加者それぞれが一転に集中するようにその姿を歪ませる。

「では、セラ。出くわしたら本気でな」

「もちろん。でも、トーナメントで戦いたいな、プライさんとは」

 二人は笑みを交わし合い、姿を消した。

 地下闘技場は唐突に、ひと気のない場所となった。

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