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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第一章 ホワッグマーラの変
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17:かくして魔導世界へ

「セっラちゃ~んっ!!」

「わぁっ、あははっ……やっぱこうなる、ははっ」

 ユフォンの気配を頼りに、マグリア魔導書館司書室に姿を現したセラ。そしてすぐさま、勘でも予見でもなくとも想像できたことが起こった。

 ヒュエリの涙と笑顔交じりの抱擁。

 セラは破顔して抱き返す。

「お久しぶりです、ヒュエリさん」

「わ~、本当にセラちゃんです! あったか~い」

「……温かい?……ははっ、ヒュエリさんも温かいですよ」

「ヒュエリさん、そろそろセラを離してあげてくださいよ。新調したばかりの服が、涙でぐちゃぐちゃになっちゃいますから」

 ユフォンは半ば強引にヒュエリをセラから引きはがす。

「ああっ、ひどいですよ、ユフォンくん! 感動の再会なんですよ!」

「それはそうですけど、限度がありますよ。ね、セラ」

「まあ、ははっ、そうだね」

「はうっ、セラちゃっまでっ……!」

 愕然とするヒュエリ。彼女をよそに、ユフォンとセラは互いに口を開く。

「ねぇ、ユフォン」

「あのさ、セラ」

「おぉ~、さすがですね、お二人さん」

 ヒュエリは一転して、にやにや楽しそうに二人の間に入り込んだ。二人を何度も交互に見やる。

「いいですねぇ~、いいですねぇ~、仲睦まじいのはいいことですね~」

「「……」」

 二人はじっとヒュエリを睨んだ。

 その気は当然ないが、殺気に似た鋭さに、ヒュエリは急遽自粛し、二人から距離を取った。部屋の壁際まで、一足飛びに。

「……ぁぁ、っと、二人に……しましょうか?」

「ごめんなさい、ヒュエリさん」セラはふっと笑顔になって優しく言う。「でも大丈夫ですよ。ブレグさんも来たみたいなので」

 セラが扉の外をサファイアで示すと、それと同時にノックの音が響いた。

「は、はい」

 部屋の主が応えると、扉の外から勇ましさの滲む声が返ってくる。

「ダレだ。ヒュエリちゃん。セラちゃんが来ているだろ?」

「はい! どうぞ、入ってください、ブレグ隊長」

 扉が開き、ブレグが「おぉ」と息を漏らしながらセラに歩み寄ってくる。

 と、そんな彼の前にヒュエリが颯爽と割って入る。得意げな顔だ。

「ああ、駄目ですよ、ブレグ隊長。セラちゃんとの再会のハグはしちゃ駄目です。新しくした服が汚れてしまうのでね」

 ふんすと、腰に両手を当て息巻く。

「「「……」」」

 これには三人とも呆然だった。

「あぁ……ユフォンくん?」ブレグが筆師を窺う。「俺はそもそも握手で済ませようとしたんだが、一つだけ、確認していいか?」

「ええ」

「俺は、そんなに汚く見えるか?」

「いえ、そんなことは。ねぇ、セラ」

「はい」セラは力強く同意する。「わたしはハグでも全然大丈夫ですよ」

「……フォロー、ではないよな」

「もちろんです、変な空気になってますけど、ブレグ隊長は汚くないです。もう、ヒュエリさん、変なこと言わないでくださいよ、まったく」

「ええぇ! だって、さっきユフォンくんがわたしに言ったんじゃないですかぁ!」

「それはヒュエリさんが泣いて抱きつくからで」

「なんですか? わたしの涙は絶対ブレグ隊長よりきれいですよ、師匠に向かって失礼ですね、ユフォンくん」

「……改めて、久しぶり。セラちゃん」

 言い合いをする二人を迂回し、ブレグがらしくなくおずおずとセラに手を差し出した。

「お久しぶりです」セラは彼と握手を交わす。「ハグ、しますか?」

「いや、やめておこう」

「ほんと、気にしないでくださいね。ヒュエリさんがはしゃいでるだけなんで」

「ああ、もうなんとなくわかったから、大丈夫だよ。ありがとう。それでさっそくなんだが、参加するのかな?」

「参加?」

「大会だ。なんだ、まだ話してなかったのか、ユフォンくん」

「あ、はい」ユフォンがヒュエリからブレグへと視線を変える。「ちょうど話そうとしたところでブレグさんが来たので。これからです」

「そうか、なら俺から話そう」

 ブレグが頷きセラに向き直ると、セラは先に口を開く。

「もしかして、魔導・闘技トーナメントをやるんですか?」

「そう、その通り。ホワッグマーラ復興記念大会だ」

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