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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第四章 黄昏の散花
174/387

171:あるべき場所

 ~〇~〇~〇~

「調子はどうですか、『紅蓮騎士』」

「……」

「少々手荒な処置と箍を外した影響で頭が余計に混乱しているかもしれませんが、あなたの役目、するべきことはわかっていますか?」

「セラを探す…‥」

「そうです」

「けど、足りない」

「ん?」

「俺の剣……スヴァニがいる」

「ハヤブサの名の一振りですか。確か今はさすらい義団の団長が振るっているとか」

「さすらい義団……わかった。セラを探すのは、それからだ」

 紅い花を散らして、実験台から消えた『紅蓮騎士』。クェトはやれやれとばかりに肩を竦めた。そして、わきにある影光盤が光ったことに猫の瞳を向ける。

「おや。あなたが帰ってくる前に、全てが済んでいるかもしれませんね」

 ~〇~〇~〇~



「あなたには帰巣本能をつけてあったので、いずれはここに来るだろうと思っていましたよ、ムェイ」

 アレスとセラの前に現れた、髑髏を被った紳士然とした男。アレスは夢中になって読みふけった物語の中にその男がいたことに思い至る。

「あんた、クェト・トゥトゥ・スか?」

 アレスの問いかけに、男はステッキで床を鳴らしながらゆったりと歩きながら答える。

「ご名答。そんなあなたは偽の『碧き舞い花』として処刑人を気取ってらっしゃった、アレス・アージェントとお見受けしますが?」

「別に処刑人なんて気取っちゃいないよ、おれは。ただ、セラ様の名を汚す奴が許せなかっただけだ」

「よもや、そこにいる機脳生命体を本物だとは思っていないでしょうね?」

「セラはセラで本物のおれの友達だ。ちょうどいいや、あんたセラが何者か知ってるみたいだ」

 アレスは剣をクェトに向かって構えた。

「教えてもらおうか」

 ぴたりと足を止めるクェト。猫の眼がアレスを見て、それからセラを見て独り言ちる。

「なるほど、記憶領域に障害が出ているんですね。連絡も途絶えるわけです。……とすれば、ただ連れて帰っても譲渡に抵抗が生まれる可能性がある。まずは現状を確認するのが先決ですかね」

「なにごちゃごちゃ言ってんだよ。教えるのか、教えないのか。二つに一つだ」

「いいでしょう、聞き出してみなさい」

 静かに告げたクェトの袖からシュルシュルと包帯がうねり出てきた。

「へぇ、あんた自分で戦うのかい? 言っとくけど、拒絶の護り石なんて意味無いぜ。俺は侵略の護り石を持ってるし、セラは石の虚を突ける」

「その説明こそ、僕には無意味ですがね」

 包帯が勢いよくアレスとセラに伸びる。

「いくぞ、セラ!」

「ぁ……うん」

 今まで黙っていたセラは、ここで返事こそしたがどこか乗る気じゃなかった。剣で包帯を弾くと、アレスはそんなセラに叫ぶ。

「どうした? 自分のこと知れるチャンスだろ」

 セラが包帯を避けてから眉を寄せて応える。

「うん……でも、あの人、髑髏博士がわたしのことを知ってるってことは、『夜霧』が関わってるってことでしょ。わたしは……知らない方がいいのかもしれない…………」

「なるほど」クェトが攻撃の手を止めて零す。「『碧き舞い花』の正義まで身に着けてしまったというわけですね。それではいくらあの方に馴染む肉体と力があったとしても、やはり抵抗されてしまう。未完成というより、失敗作。かといって最初からやり直す時間はないでしょう。こちらも強引に必要のない部分を落とすしかないようですね」

 無数の包帯がクェトの裾から飛び出した。

「帰りますよ、ムェイ。あなたにはいるべき場所がある」

「勝手に話を進めてんじゃねえよ!」

 アレスはセラの前に躍り出て構える。

「おれたちの行き先はおれたちが決める! セラがいるべき場所はおれの隣だ!」

「アレス……」

「セラ、お前が知りたくなくなったら、おれはそれでいいと思う。だから、今はこいつをぶっ倒そう。ここにはみんなもいるんだ」

「うん、わたたちが護らないとね!」

 セラがアレスの横に並んで、剣を構えた。フォルセスを模した、おそろいの剣が髑髏博士に向かう。

「さすがはセラだ! いくぞ!」

「おやおや。真っ向勝負は専門外なのですがね」

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