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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第三章 碧花爛漫
145/387

143:青筋

「冷静にいこうぜ、ルファ」

「……っち」

 エァンダはトラセードでルファの懐に入り込んだ。

 苛立ちを感じていただろうルファはそれでも反応を遅らせることはなかった。

「それは知ってるよ」

 タェシェが受け止められた。次にどちらがどう動くのか、高い次元での読み合いは膠着状態を招く。そんな中、エァンダが口を開く。

「どうしてポチューティクを?」

「あん?」

「『虎の目』といったら暗殺だろ? 大虐殺なんてらしくない。それも相手は戦士じゃなく研究者」

「そういう依頼だったんでな」

「依頼? ゼィロスへの当てつけじゃなかったのか」

「それもないことはないぜ。利害の一致で引き受けた」

「その依頼主はどうしてゼィロスのお友達たちを標的に?」

「知るかよ。俺がやったのは殺しだけだ。理由なんか聞かねえし、そのあとのこともあいつらがしたいようにしただけだろ」

 怒りを感じる物言いだった。

「研究所の大火事は自分じゃないって?」

「碧い光を放つ渡界人の姿があったって、新聞屋に情報を売ったのもな。仕事してやったってのに、これだぜ。……まあこれに関しては、受け取ったやつが『虎の目』じゃなく『碧き舞い花』の方だと思ってくれたのが幸いだったがな。俺が関わってないとわかればお前が追ってくる可能性が低くなる。『碧き舞い花』を追ってやって来る連盟の戦士やゼィロスならすぐ殺せるが、お前は危ないからな」

「警戒してくれてたんじゃん。チビだのガキだの言ってるくせに」

「認めてはいるさ、一筋縄では殺せない相手だってな」

「殺せる前提ってことね」

「あたりめぇだろっ!」

「それ、間違ってると思うけど」

「ほざけ、ガキが」

 エァンダはそれ以上言葉を続けることなく、ルファを見つめた。その首を含むごく僅かな空間を一気に拡大させながら。

「んっ?」

 なにかを感じ取ったか、目を瞠ったルファが大きく屈んでエァンダの視界から消えた。トラセードの切断は不発に終わった。

 エァンダは足を狙う敵の剣を跳躍して躱す。「よく避けれたなっ」

「お前こそ、避けられるのか?」宙に浮いた彼に、ルファが追撃を繰り出す。

「ナパスがナパスにする質問か、それ」

 群青を爪の剣が裂き上げる。その光景をルファの背後から見たエァンダ。しかし間髪入れずに彼の目前はマラカイトで満ちた。

 エァンダの視界の端に白刃の切っ先が迫っていた。

「ナパードの基本だろ、体勢の不変はよぉ!」

 ぐぢょ……。

 エァンダのこめかみを虎の爪が貫いた。途端、エァンダの身体がボロボロと群青の屑になって崩れ消えた。

「「分化は知らなかったか?」」

 二人のエァンダがルファの首を二本のタェシェで挟撃する。黒きはさみが首を撥ねた。

「蜃気楼だ。空気を制御するとそういうこともできる。ここまではお前には教えてないだろ?」

 エァンダは分化体を消して、声のした方へ視線を向ける。

「そうだな。でももう覚えた」

「なに?……っん゛……なん、だとぉ……‥‥!?」黒き刃がルファの心臓を背後から貫いた。「バケ、モノめっ……」

 ルファが身体に力を込めると、剣を握る手に青筋が浮かんだ。



 エァンダはルファから離れた場所に立っていた。

 状況を把握しきれないまま、エァンダはルファを睨んだ。「……なにをした」

 確実に戦いの決着を見たはずだった。それなのに目の前の男は無傷のまま。一瞥したタェシェにも血はついていなかった。まるでこれは――。

「なんの因果だろうな。学者のゼィロスじゃなく戦士の俺が発見しちまうなんて」

 ルファ大げさに肩を竦めて見せた。

「時を遡る方法を」

「!?」

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