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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第三章 碧花爛漫
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139:師匠のいる場所

 石像をへし折り、テムは吹き飛ぶ。

 コクスーリャの闘牛は強烈だった。何度か地面に身体を打ち付け、ようやく止まったのは高台の脇にあった岩の中だった。

 闘気を放ち岩を砕いて出る。そしてお返しとばかりに、天牛を飛ばす。

「天牛!」

「ふっ」

 一直線に走る闘気の弾丸。それを蹴りで迎えるコクスーリャ。軽くあしらわれ逸れた力は、石畳や石像を砕く。純粋に同じ技を比べなくてもわかる力の差が嫌でもわかってしまう。

「まったく羨ましいな、超学習。弟子の俺より使いこなしてる。ユールといい最近こんな相手ばっかだ」

「夢見の民を倒せたから俺にも勝てるって言いたいなら、考えが足りないんじゃないか、テム」

「そんなこと言ってないだろ。ただ、師匠はなかなか手合わせしてくれないからな。こういう機会は大事にしたい」

「学ぶことに長い時間をかけない俺にとっては、思いもよらないな、その考えは」

「そうだろうな」テムはその場で拳を突き出す。再びの天牛だ。「もう一回っ!」

 コクスーリャも鏡映しが如く、拳を突き出す。「天牛!」

 空気を裂く闘気の弾丸が二人の中間でぶつかり、歪み弾けた。次の瞬間、二人は駿馬でその場に駆け込むと、拳を交えた。闘気がジグザグと二人の周囲に散らばる。

「っつ……」

 テムは拳に痛みを覚えて身を退く。だがそれをコクスーリャが許さない。テムの襟を掴んで引き寄せると、鳩尾に膝を入れた。それも闘牛だ。

「っか……っぁは……」

 背中まで突き抜ける痛みに呼吸がままならなくなる。コクスーリャがそこに休息を与えてくれるわけもなく、離さずに持ったままのテムの襟元をぐっと引いた。横っ面が剛拳が歪む。雲塊織の衣服が盛大に破れ、テムは上半身を露わに、コクスーリャから大きく殴り飛ばされた。

 乱回転する景色をどうにかして止め、テムは地面を滑り止まる。そして帯に止められ残った服の残骸を脱ぎ捨てる。びりびりと痛む頬。口の中が鉄の味に染まる。溜まった血を吐き出す折り、胸の傷跡が目に入る。それから腰の天涙に視線を移す。

 短く、強く息を吐く。そしてコクスーリャを見つめる。

「なあ、コクスーリャ。師匠はさ、まだ俺たちに見せてない闘技があったりするのか?」

「あるね。ただ、俺がここで見せることはない。そこまでしなくても、君には勝てる」

「言ってくれるなぁ、盗んだくせに」

「学ぶということはそういうことさ。それに俺が盗んだのは闘気の技術。闘技はケン・セイ直々に俺に見せてくれたんだから、盗んでいないというのが正しいところだ」

「弟子にもそれくらいしてくれればな」

「弟子だからしないんだろ。成長を楽しんでる」

「成長か。俺は真っ向勝負で楽しませたいんだけど…‥そうだ、師匠が認めてるコクスーリャを倒せれば、手合わせしてくれるかな」

「どこから俺に勝てる自信が湧いてくるんだ? もちろん可能性がないとは言わないけど、力の差を測れない君じゃないだろう、テム?」

「そうだな、勝てるかどうかはわかんない。でも、師匠を楽しませるためには、どのみち追ってるだけじゃ駄目なんだ」

 テムは天涙を抜く。

「まずは試してみるさ。()の技でどこまでコクスーリャ(師匠のいるところ)に近づくことができるのかを」

 濡れたような刃が昼下がりの太陽を照り返す。

「全部を見せてないのは師匠だけじゃない。見せてやるよ、シグラ流剣術」

「なるほど、同じ土俵で勝てないなら別の場所でってことだな。シグラ流剣術か、確かにそれは俺たちも知らないな」

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