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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第三章 碧花爛漫
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128:一週間後

「俺が言うのもなんだけど」アスロンはテムに向けて言う。「生き返るからと言って簡単に殺していいかって言われれば、そうじゃない。洗脳されてるとは言え、知り合いを殺す人間はそういない、だから結果的にこっちから戦闘を仕掛けるにしたらやり辛い。だからゴンヮドたちも手をこまねいて、ここまでなにもせずに地下で暮らしてるわけだ」

「ああそうさ」ゴンヮドが苦々しく頷く。「教祖と幹部だけを狙おうにも、信者となった民が壁となり手を出せない」

 ノヅギンとイソラの一件ののち、テムたちは『反旗の町』の戦士でもあるノヅギンを連れてゴンヮドの小屋に戻った。その道すがらゴンヮドがいくつかの小屋に寄って、そこにいる男たちに声をかけたことで、小屋は少々むさ苦しい。その中でアスロンとテム主導の元で、今後の活動について話し合っているという次第だった。

 ちなみにルピがその男臭さを敬遠し、今ルピとイソラは地下の町の様子を、アビットに案内してもらいながら見て回っている。

「だから君たちが来る前に考えたのは、俺が教祖と幹部を秘密裏に葬るって作戦。そうすれば、鍛えていても戦闘経験の少ない彼が戦う必要はほとんどないからな」

「まあそうですね。俺たちが加わったからと言ってその方向性は変える必要はないと思います。動くのは俺たちとアスロンさんだけの方が危険は少ないですから」

「いや、そうじゃないんだテム。彼らも協力したいって、動かずにはいれないんだよ。テコでもその考えは変えない気らしい」

 アスロンの言葉に集まった男たちは一斉に同意の意思を示した。代表してノヅギンが口を開く。

「ここは俺たちの世界だ、全部人任せってのは悪いだろ。だからなにかしら協力はさせてもらう」

「ってことだから、彼らの協力も作戦に入れ込まないといけない。そこで俺が提案したのは、揺動だ。さすがに一度教祖か幹部の誰かが影から殺されれば警戒されるから、その警戒を乱す要因として必要なときに参加してもらうって。どうかな? まあ、俺一人じゃなくなったから少し内容は変わってくるだろうけど」

「なるほど」テムは少し思案してから頷く。「危険は伴いますけど、想いは無下にできないですもんね。わかりました」

 男たちが手を叩いたり、拳を握ったり、互いに背を叩き合ったりとそれぞれがテムの承諾に反応を示した。そんな彼らを静めるように声を張ってテムは言う。

「ですが、みなさん。約束してください。なによりも自分の身の安全を最優先するって」

 おう、と男たちが答えるとアスロンが話を進める。

「じゃあ、暗殺作戦を詰めていこう。目標は四人。そして俺たち実行者も四人。だから、同時刻一斉暗殺をしようと思う」

 アスロンの言葉に、小屋の中に緊張が走った。

「実行は一週間後。次の礼拝の儀を狙う」



 それからの毎日、テムとアスロンは作戦を細かく、そしていくつものパターンを組み上げていく。


「礼拝の儀は一週間に一度行なわれるんだ。俺が調べたのは三回分だけだけど、その毎回、教祖と幹部がそれぞれ別の場所で信者に拝まれてる」

「わかれてくれてるから都合がいいってわけですね」


「あの店のお婆さん、身体能力も常人を超えてたし、殺気にも敏感になってるようでした。それは信者に共通することなんですか?」

「すごいな、良い観察眼を持ってるねテム。そうだな、あれは死なないのと同じで信者の特徴だ」


「信者にも階級みたいなものがあって、教祖、幹部三人、碧いフードをつけてる信者ときて、残りは他の住民。礼拝の儀に参加するのはフードまでだ」

「この世界の住民より位が高いところにいるのか、コクスーリャとナギュラは」

「エスレもね」


「一体なにが目的なんだ、あの教祖は。どうしてセラ姉ちゃんを騙るだろう」

「そうだなぁ、いくら調べ回ってもあの女はずっとセラのままだ。ゴンヮドも最初からあの姿だったと言ってた」

「終戦して間もない頃に来ているならもう二年は経ってる。セラ姉ちゃんが姿を消すのと時期が被るかどうか微妙なところですね。もしかしたらそれよりも早いかも。その頃には『碧き舞い花』の名前は当然広まってるから、それでここに来る前に幹部をまず引き込んだとか」

「考えてもこればっかりは答えが出るわけじゃない。もし情報を聞き出したいなら教祖だけは捕縛することにしよう」


「洗脳をどうやってやるかは、なんとなくわかってます。心の傷とかトラウマとか、気持ちの後ろめたい部分につけ込んでくる」

「イソラに触られてなかったら危なかったって言ってたな。洗脳される前なら、正気に戻せるということか?」

「どうだろう。俺の経験でしかないですから」

「教祖たちを片付けても、洗脳が解けなきゃ。結局みんな地下暮らしのままだ。やっぱり教祖は殺さずにその辺も聞き出すべきだな」



 そんな中ルピの報告により、『反旗の町』に食糧をはじめとした物資の支援がはじまっていた。

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