筆師の前書き
ははっ、ユフォン・ホイコントロだ。
皆さんお久しぶりだね。
まずは前書きを本編がここまで進んだところで書いていることを許してほしい。中書きではないのかというお叱りは甘んじて受けよう。
しかしこの『碧き舞い花Ⅱ』と銘打った物語は、僕の異空処女作『碧き舞い花』とは明らかに違うものなのだ。
その一つとして書いている状況がある。
『碧き舞い花』は彼女が仇討ちを終えたところで、僕が彼女から聞いた話を脚色を加えつつ描いた物語だった。
では今作は?
今作は現在進行形で執筆している。
現在進行形と言っても、僕が執筆しながら日常生活を送っているわけではない。時間があるときに、そこまでの出来事を物語にして記録しているという状況だ。
だから僕はこの前書きを記している現在、この先の展開を知らない。僕が知っているのはセラたちが僕を救い出し、トラセークァスに戻ったところまでだ。湯上りにさらっと書き上げ、これから新たな衣装を身にまとったセラに会って、抱擁を交わしてからヒュエリ・ティーの元へ行くつもりだ。
というのは半分真実だが、半分は嘘だ。
なぜかといえば、この物語が異空中に出版されるときには当然完成しているからだ。
つまりは最後まで知った状態の未来の僕が、最初から見直して、物語を物語たらしめるように手直しをしてくれているのだ。
これを記している現在は、大きな改変をしない気でいるけど、この先なにがあるかはわからない。もしかしたら僕の知らない事情によって、大きな変更が加わっているかもしれない。その理由を未来の僕は記すかもしれないし、記さないかもしれないけど、それもまた一つの物語として楽しんでもらえたら嬉しい。
さて、そろそろ続きを読みたいところだろう?
でも少し待ってもらうよ。
大丈夫、時間は取らせない。一文だけだ。『碧き舞い花』と『碧き舞い花Ⅱ』の違いをもう一つだけ。
彼女の物語は終わり、僕らの物語になった。
『舞い花と共に歩みし筆師 ユフォン・ホイコントロ』




