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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第零章 舞い戻る碧き花
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11:帰還

 黄金と『記憶の羅針盤』が大きく揺れた。

 人が突然目の前に現れれば誰でもそうなるのだろうが、ネルフォーネにとってはそれだけに留まらない。

 サファイアが久しぶりに親友の姿を映した。『記憶の羅針盤』も主の碧き花を反射して、喜ぶ。

「セラ!?」

「……ぁ、っう……ケホケホ……ネル。久しぶり、で、いいよね?」

「もちろんですわ! セラ(・・)はずっとここには来ていなかったですものっ!……て」

 セラに抱きつこうとして、ネルは動きを止める。登場して早々顔色が優れない友を心配そうに覗き込む。

「大丈夫なの?」

「うん……問題ないよ。すぐよくなる。羅針盤なしで知ってる場所に跳ぶとこうなる。ふふっ、知らなかった?」

「……し、知らなかったですけど、それよりもあなたが来たことに驚いてますわ! もう、終わっ……いえ、もしかしてわたしのせい、なのね?」

 次第に戻っていく調子の中、セラはさすがだと思った。彼女の頭の回転の速さは、自身がシァンに過去に見聞きしたことを共有させてしまったことで、セラが課せられたものを果たせなかったのだろと、答えを導いたのだ。

 しかし、セラは首を横に振る。ユフォンの時と同じだと。

「ううん、気にしないで。最終判断はわたしがしたことだから」

「そうだ、ジルェアスはこれからゼィロスさんたちに怒られに行くんだ。つっても、やっぱりネルフォーネ、お前がシァンに教えたのが一番の原因だぞ」

 セラに少し遅れてキノセたちがトラセークァスに現れた。

「なんですの、キノセ! セラがいいって言ったら、いいに決まってますわ! あなたよりセラの言葉の方が強いのよ、ふんっ」

 悪態をついたキノセから顔を背けるネル。セラはそれを見て楽しくなって笑う。

「ほんと、二人は仲悪いね」

「当然ですわ」

「当たり前だ」

「ははっ、戻って来たって気がするよ」声を揃えた二人に、ユフォンも笑った。「一週間ちょっとの僕より、でしょ。セラは」

「うん、そうだね。戻って来た」

 テムが首を横に振る。「いや、まだだよ、二人とも」

 いがみ合うネルとキノセを横目にし、二人がテムに視線を向けると彼は続ける。

「二人とも師匠に会いに行かないとだよ。セラ姉ちゃんはゼィロスさんにちゃんと説明しなきゃだし、ユフォン兄ちゃんはヒュエリさんを安心させてあげないと。まあヒュエリさんは戻って来たってなっても、騒ぎそうだけど」

 テムに頷き、セラはユフォンと視線を合わせる。

「行先は別々だね」

「そうだね、ヒュエリさんもそうだけど、君も急いだほうがいいだろうし」

 ユフォンはセラにちょっと待っててと言って、ネルの方へ向かう。

 セラの耳はしっかりと二人の会話が届く。

「ネル、温泉を借りるよ。身体もきれいにしたし、回復もしたいからね」

「ええ、いいわよ」

「あと、セラに新しい服を。少し早いけど、セラがセラとして戻って来た時のために用意してたやつを」

「もちろんですわ!」

 新しい服。

 セラは自身を見回す。

 えんじ色のマント。中にはさらし。ネルからもらった没頭の護り石のペンダントも、マントの中だった。そして右耳の耳飾りを隠すよう、顔の半分を覆った髪型。今は右側に傾けているが、元は左側にあったフォルセスの柄。

 セブルスとしての姿。

 これを脱ぎ去った時、自分は本当にセラに戻るのだと、どこはかとなく感慨深かった。正規の帰還ではないが、もう隠れ蓑としてのセブルスには二度とならないのだろうという予感があった。

 未完のまま終わった修行。

 ユフォンを助けに行く前は、一からのやり直しか、無に帰すのかの疑問が浮かんだが、今はどちらでもない気がしている。

 新しくはじまるのだと。

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