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碧き舞い花Ⅱ  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳:御島 いる
第三章 碧花爛漫
108/387

106:二人の弟子

 〇~〇~〇~〇

 とある日、エァンダとフェースはルファのナパードで、活ける火山世界ゴォル・デュオンへと連れてこられた。

 エァンダは滴る汗を拳で拭う。「暑い……」

 その隣で同じように汗をだらだらと流すフェースが苛立たし気に言う。「こんなところでなにをする気、ルファさん」

「浸透式呼吸を教える」というルファ本人は汗がにじむ程度で、暑さにも、噴き出す炎の熱にも平然としていた。

「しんとうしき……」

「呼吸……?」

 朦朧とする二人の子どもを前にルファは説明をはじめる。

「自然に身体を委ね、その自然に馴染むための呼吸法だ。イメージはな」ルファは自分の頬を軽く叩く。「肌で呼吸する感じだ。やってみろ」

「……」

 じとっとルファを見返すフェース。

「……ぁぁ」

 そして、エァンダはついにふらり、ふらりと倒れた。



 目を覚ましたエァンダは、自分がベッドの上にいることに気づく。ルファの家だ。

 もぞもぞと身体を動かしていると、家の外から話し声が聞こえてきた。

「影名だが『輝ける影』に決まった」

「『輝ける影』か、なかなか的を射てるな。で、どれだけやれるようになった?」

「気を抜けば俺たちでも敵わないかもしれないぞ。レオの血はビズの血になったと言っても過言じゃない」

「ほぉ、そりゃすごいね。俺も負けてらんないな」

「どうなんだ、そのお前のところの二人は?」

「ちょうど今日、環境への適応を教えてやろうと思ってゴォル・デュオンに行ってきたんだが、まあさすがにチビの方にはまだ早かった。今俺のベッドで休んでる。ちっとばかし才能を過信したな」

「ビズを超える可能性を見たってやつか」

「ああ。んで、その才能を着火剤にもう一人の向上心を燃やしてるから、きっと二人ともいい戦士になる」

「燃えてるのが向上心ならいいが、そっちの子、フェースといったか? ちゃんと見ててやれよ? 一人を育てるのだって苦労するんだ。片方に肩入れすれば向上心は嫉妬に変わるぞ?」

「大丈夫だ、フェースは賢い。安っぽい感情になんて振り回されないさ。なにより、俺たちだって一人の先生に二人の教え子だったろ、そして成功してる」

「メィズァ先生だからこそだろ」

「俺じゃ失敗するって言いたいのか?」そのルファの声には明らかに怒気が籠っていた。

「そうじゃない。師のやり方を全部真似する必要はないということだ」

「俺が二つも才能を見つけたことが悔しいのか? 嫉妬してるのはお前だな、ゼィロス」

「そんなことはない。俺は自分が育てた才能に自信を持ってる。その数にはこだわらないさ」

「そうかいそうかい、さすがは優等生のお兄ちゃんだ、徳が高い」

「ルファ、そう気を荒立てるな。俺は兄弟子として助言をしただけだ。言い争う気はない。ただ、今の助言を頭に置いておいてくれればそれでいい」

「場所をとるだけのオブジェなんていらねぇよ。自慢の弟子と仲良くやってろ」

「おい、ルファ……」

 扉が閉まる大きな音がして、ゼィロスの声がくぐもった。

 気の立った足音がエァンダに近づいてくる。彼はそっと、身体を起こしてルファを迎えた。

「おおなんだ、チビ公。起きてたか。いや、もしかして起こしたか?」

「今、大きな音がして、起きた」

「ああ、悪かったな。で、どうだ、具合は? 悪くないか?」

 エァンダは身体を見回す素振りを見せる。「うん、普通」

「そっか、よかった。今日のことも謝る。さすがにいきなり過酷だった」

「大丈夫だよ、ルファさん。明日にはできるよ」

「ほおチビ公、言うなっ。じゃあ明日も行ってみるか?」

「うん」



 翌日、ゴォル・デュオンには汗ばむことすらないエァンダの姿があった。

「まじかよ、俺以上じゃねえか、チビ公のくせに」

 ルファは悪態を吐きながらも喜びを全面に押し出していた。そして共に来ていたフェースは汗だくの顔を顰めていた。

 〇~〇~〇~〇

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