1:Zero Point
碧き舞い花Ⅱ、はじめます!
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光りに満ちた大地と空。
煌々と輝くその場所に、ただ一つの息。
荒く、粗く、悲しみと怒りそして優しさが混在したそれは、白髪を汗と血と土で汚した男の口から漏れていた。
男の瞳から黒が引き、真っ青になった。
その青が俯くと、男は零す。
「必ず、取り戻してみせる……! みんな、待っていてくれ」
虚空にその声が消え入る。
すると、男は怪我だらけの身体には似合わない力強い唸り声をあげる。まるで身体中に縄が巻かれていて、それから解き放たれんばかりに全身に力を込めて。
消えたばかりの黒が瞳に揺蕩い、身体からは黒きヴェールが狂い出でる。
光に満ちていた世界が薄暗く覆われたかと思うと、男は黒と共にその場から姿を消した。
その光景を離れたいたところで悲し気に見つめる女がいた。
「ヴェィル兄さん……」
彼女、フェルの白髪が暗い世界の微風に揺れる。
原初の一族である想造の民と、彼らと袂を分けた神々の戦いは、想造の民に白髪の双子だけを残す結果となった。
神々は辛くも勝利を納めたが、彼らが望んだものを手に入れることはできなかった。
それでいて太古の地に愛された男の怒りを買ってしまい、ヴェィルが封じられるその時まで続いた神狩りにより、数多の神とその世界が葬られる羽目になってしまった。
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