前世に恋して現世に愛して
美琴は神野に恋をしました。
たとえ前世が兄妹であっても、それは変わらないのです。
多刀江学園―生徒会。
この学園の生徒会は少し変わっていて、男女各一名の生徒会長だけで成り立っている。
…付け加えるならば、書記なんていう名前も持つ事が許されない記録係が一人存在いる位だ。
その記録係が私。天野美琴。
恋した相手が龍崎神野。
相手がまずかった…。
だって、神野は現在の生徒会長なんだもの!
姫川優子会長に顔向け出来ないよ!!
でも、好きになっちゃったんだもん。
この想い、貫いて良いよね?
「お前、どこかで―」
「え、えっ!?」
落とした生徒手帳に書かれた、私の直筆の記名。
それと写真。そしてぶつかって転んだ私の旋毛。
それらを見比べて、神野は閃いた。
「お前、書記やらねぇ?」
「しょ、しょきなんて、この学園には無いのではっ」
「っあー、面倒くさいな。記録係だよ。お前、字が綺麗だし」
「!っはい…でも、私なんかで良いのでしょうか?優子会長がお許しになるかどうか…」
「お前馬鹿か?俺が良いって言ったら、それで良いんだよ。優子には俺から伝えておく。じゃあな」
要件だけ言い終えると、神野は早足で行ってしまった。
「…私に務まるのかな?」
確かに書道で入賞したりすることは何度か経験している。
でも、字が上手い人なんて沢山いるし私より上手にまとめられる人はいるはず。それなのに、どうして神野会長は…私なんかを選んでくれたんだろう?たった一度しか見ていない私の字を見ただけで―何か分かってくれたのかな?