表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

赤い絵具

作者: 安住恭太

赤い絵具


少し長い話ですが聞いてください。

A子は同じ中学から同じ高校に進んだ唯一の友達で、自然と仲良くなりました。A子がどうしてもと言うので、一緒に美術部にも入りました。親友だったんだと思います。

A子は控えめな性格でしたが、絵のことになると周りが見えなくなってしまうタイプの子でした。そんな性格のせいか、彼女は次第にクラスの子達にいじめられるようになってしまいました。

当時のA子は私というたった一人の親友と、狂ったように絵を描くことだけを支えに生きているように見えました。

そんな生活が一年ほど続いたでしょうか、私は急きょ、父の出張で転校することになってしまいました。A子のことが心配でしたが、当時の私にはどうすることもできませんでした。

その後のクラスの事は全く知る機会がなく、私はA子のことは忘れてしまっていました。

それがこのあいだ、10年ぶりに同窓会を開くというので、久しぶりにA子に会えるかもと思いながら参加しました。しかし、会場にA子の姿は見られません。友人と他愛のない話をしながら(私は知らなかったのですが、当時の私は随分モテていたらしいです笑)機会を見てA子のことを尋ねてみると、A子は私が転校して数か月後に自殺していたのだと聞かされました。衝撃でした。遺言には「赤い絵具が欲しい。」とだけ書かれていたそうです。確かに、A子は高校に入ってから、正確にいえばいじめが始まるようになってから、暖色を全く使わない不気味な絵を何枚も何枚も必死に描き続けていたのです。

あまりにショックだったので、私は同窓会を抜け出して家に帰ることにしました。すると今度は、妻が嬉しいショックと一緒に家で待っていました。私と妻との間に子供が出来たのです。A子のことなど一瞬忘れてしまうほどに、嬉しかった。しかし、次の妻の言葉に私はゾッとしてしまいました。

「この子の名前はA子にしようと思うの。」

妻とは大学時代に知り合ったので、もちろんA子のことなど全く知らないはずなのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ