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8,幼女、認める

当初はネタのない真面目な小説の予定だったのに、気付いたら毎話ネタだらけ…………どうしてこうなった。

 太陽の光を遮断し、気温を落とした洞窟内。

 生命線となる光源のランプは、淡く儚げに灯っているだけで、照らし尽くすことができないその中は、入り口から吹き込んでくる、じめじめとした湿った空気のみが外との繋がりを感じさせる。

 そこに、大きな熱源が四つ。

 一つは、金の短い髪を僅かに揺らしながら、ツヴァイハンダーを肩に担ぎ上げ、余裕の表情でニヤニヤとした笑みを浮かべる四対の黒羽をもつ男。

 一つは、肩まである赤髪を靡かせながら、前傾姿勢で槍を構え、真剣な表情で口を結んでいる魔術師の服を着た少女。

 一つは、腰ほどまである黒髪を撫で降ろしながら、直立で杖を振りかぶるように構え、緊張した表情で頬に一粒の汗を流す、猫耳尻尾をつけた幼女。



 その三つが対峙する熱源はたった一つ。

 されどその熱量は三つのどれよりも熱く、全身から蒸気を発し、落ち込んだ洞窟内の温度を上昇させる。

 大地にずっしりとした二本の足を踏み降ろし、肌は槍の少女の髪色と同色の赤を貼り付ける。

 口からはみ出す獰猛な二本の牙は、人間など軽く噛み千切るだろう。

 一本角を天へと突き出し、自身の体積のほとんどを占めるその筋肉が織り成す豪腕を、威圧感を周囲に振りまきながら構えている。



『オーガ』

 凶暴で残忍、人を襲い人を食う。

 よく描かれているのは女性を繁殖のために巣へと持ち帰り、死するまで子を永遠に孕ませ続ける。

 なお、地球の伝承では彼らは弱くて臆病とされている。



「グォォォォォォォォォォォォオ!」

「フンッ…………このオレが見守ってやろう。遺憾なく己の武を舞うといい」



 こえぇぇぇぇぇぇぇぇえ!

 名も知らぬ厨二!

 カッコつけてないで戦えよ!

 てかデカい……ブレンダさんよりはるかにデカい……!!



「任せて! リリイちゃん! 援護お願いね! 『ブリッツ』!」



 パンッ! という音と共にライアは割れた風船のように姿を消し、オーガの元へ一直線に正面から弾け飛ぶ。

 ライアがもつ雷槍エレクトロンは、静電気が一斉に発生しているかの如くバチバチと電流をけたたましく纏っている。

 厨二に心の中でツッコミを入れている暇はない、俺も一拍遅れて風を切る。

 作戦も決めてないし合図もないが、ライアは援護を求めていた。

 ならば狙いはライアの初撃に続く第二撃目。

 右から回り込んでの背面!

 ライアがその槍の穂先をオーガに届かせる直前に、俺は一陣の風になりながらバットを構えるように杖を握る。



「喰らいなさい! ハァッ!」

「グガァァァァァァァァ!」



 ライアの『ブリッツ』がオーガに突き刺さるが、ダメだ! 腕に刺さっているが防がれた!

 なら、俺の追撃で!

 右へ回った俺は風を切る方向を変えオーガの背面へと移る。

 打撃の狙いは後頭部。

 でもこのままじゃ身長差で届かない、なら!

 ダンッ! 片足に力を集中し、俺は大地から足を放し空中へと舞い上がる。

 腕に力を込め、渾身の一撃を!



「やぁぁぁぁぁぁあ!」

「ガアァァァァ!!!!」



 命中したのに効いてない!

 なんで!? どうして!!

 オーガが腕を引き、拳を握る。

 正拳突きみたいな構えだ。

 狙いは……僕だ!

 マズい! 避けられない!

 防御……防御だ!



「リリイちゃん! ハアァァ!」



 ライアが俺の窮地を覆そうと槍をオーガの腹へと突き込む。

 オーガは全く動じていない、そのまま筋肉を膨張させ俺へと拳を振り抜いた。



「ガァッグガァァァァァァァァ!」

「リリイちゃん!」

「ぐっ! うぅ…………う?」



 ブォン! 凄まじい威力を内に秘めたその拳は、風を断ち切るような音で、オーガの気合いを入れた咆哮と並んで俺に届いた。

 腕をクロスさせ、せめて致命傷は避けないと……と、俺は思って防御してたのだが……。



「痛くない………」

「リリイちゃん……?」



 え、なにこれ。

 そして、唖然としてるといつの間にか……



「「「「グガァァァァァァァァ!」」」」



 オーガが増えていた。



「は……? え……?」

「なっ! いつの間に!」

「フム…………潮時だな」



 ライアと二人して唖然からもはや呆気になっていると、厨二が何かさえずった。



「あとはこのオレに任せるといい」

「「「「グォォォォォォォォォォォォオ!」」」」



 オーガの群れに向かって厨二が歩き出す。

 なんでそんなに自信満々なんだお前は。

 厨二は身長より長く太い200マイルほどのツヴァイハンダーをカチャカチャと鳴らし、歩きながらスッと短剣を抜くみたいに軽く己の剣を抜きはなった。

 刃身は漆黒で、黒好きだねなどとは思えないほどその暗い輝きは怪しく、けれども美しい。

 さらに、厨二はその端正に整った顔に付随する口から囁くように言葉を出し始めた。



「太古よりいずる英霊よ、耳を傾け、オレの叫びを聞け。

 オレは世界の調和を導く者!

 時空を切り裂き、羅列を削ぎ落とし、悪を敷き詰める!

 真理と倫理を紡ぎたいのならば、オレに力を貸せ!

 オレの求めに答えるならば、理を変え意を示せ!

 『ブレイジングレイ』!

 後には何も残らない……フッ」



 厨二が『魔法名』を口にした瞬間、物理法則を無視して天から光の槍が降り注いだ。

 次々と降ってくる光の槍、薄暗かった洞窟は白一色となり、オーガたちは叫び声や断末魔をあげる暇もなく蒸発し、言葉通り後には何も残らなかった。



「…………すごい」

「フッ…………当然だ。このオレの神々しぃ姿に見惚れたか火焔姫よ」

「あの……」

「む…………? どうした、黒薔薇猫よ」



 ライアさんやライアさんや、確かにすごいよ。

 うん、これはすごい。

 こいつが力に夢見る厨二ではなく、力がある厨二なのは認めよう。

 だけどね、だけどね………。



「あの…………剣と詠唱必要ないですよね…………?」

「……………………グゥッ! はるか昔に漆黒龍に負わされた傷が疼くッ! グゥッ!?……………ハァ…………ハァ…………話は終わりだ、帰還するぞ」



 あれは、『ソーサラー』が使う魔法なんだよライアさんや。


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