続き
数週間が過ぎ、そんなささいな罪悪感も消えたころ。
授業が終わり、放課後になった。
たっぷり寝た俺が、今日はどこへ行こうか迷っていると友人が声をかけてくる。
「八敷−、俺ゲーム買うから一緒いかねえ?」
「おっけ。こないだ出たやつ安くなってねーかな?」
帰り道にある中古ゲームショップ。
店内は広めで、ハードもソフトも置いてあり、品数も多く、攻略本などもそろっていてなかなか便利。
古本もおいているので、金持ちではない俺たちは、通うほどではなくとも、それなりによく行く。
友人と話しながら、それぞれゲームを品定めする。
あっちは目的のものがあったようで、一緒にレジへ。
カウンターに見慣れた顔。
「スズキじゃん!」
「やぁ、アキヤ」
昨日も会ったような顔でスズキはそこにいた。
お前どうしてたんだよ!そんな表情の俺たちにスズキは続けてこう言った。
「参ったよ、あの店長ホモでねー・・・」
そっちかよ!
自分のせいかと、少しでも気にしたのがばかばかしくなった俺は、思い切り笑った。
だけど、怖くて、いや気持ち悪くて、それ以上詳しいことは聞けなかった。
コンビニのカッコいい店員は、ゲーム屋のカッコいい店員になった。ただし、テスト用のゲーム機でしょっちゅう遊んでいてあまり働いていない。が、人懐こく親切で、ゲームの攻略なんかをていねいに教えたりするのでここでも人気者だ。店員の中でも、その人懐こさからやはり好かれているようで、サボりぎみでも多めにみてもらっているらしい。ただ、最近女の客が増えてきて、だんだん居づらくなってるのはちょっと迷惑だ。
「なースズキ、お前が来たせいでこの店居づらくなったんだけど。お前ってかなり疫病神じゃん?」
皮肉をこめて俺は指摘してやった。
スズキはちょっと泣きそうな顔で
「えぇえ〜?」
情けない声を出した。
俺は笑ってやった。
だけど、もしスズキが人間以外のなにかだとしたら、それは疫病神なんかじゃなく、天使ってやつなんじゃないかなぁ。
そんな気がする。
見た目といい、あの人懐こく親切な性格といい、なんとなくそんな存在を思い起こさせる。
キモい考えなんだけど、ちょっとそう思った。
調子にのるから、絶対スズキには言わないけどな。
今日もヤツは、無垢としかいいようのない笑顔を俺達にむける。
「ねぇねぇアキヤ、これちょっと食べてみてよ!」
「いや朝鮮人参味のガムとか俺ゼッテー食わねぇから!」
天使のようなあの男は、味覚だけ、すこぶる悪魔的だと思う・・・。