続き 5
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「スズキさん、あんた、カンケーないこと考えてるだろ。」
「え?いや?ぁは、反省してるよ?あはは」
不自然な返しは、認めているのとほとんど変わらない。
「何考えてたんだ?人が真剣に怒ってるときに。一体何考えてたんだ、言ってみろ!」
「なんでもない、なんでもないよー!」
必死で隠そうとするのを見て、アキヤも興味をしめす。
「何だよ、エロい事か?」
アキヤの軽ーい一言で、堀の表情は一段と恐ろしいものに変わった。
「何だとぉ?」
「ちがっ違うよ、ただ、幸せだなって・・・」
これ以上怒らせたくなくて、つい本当の事を白状した。
その結果。
意表をつかれた顔で一瞬凍りついた後、堀は叫んだ。
「フザケルナー!」
そうして、より一層激しいお説教が始まるのだった。
うらめしそうな目で自分を見るアキヤに、スズキは表情だけで、ゴメンねと伝えた。
アキヤは、タメイキをつくと、目を閉じ、お説教に耐える構えを見せた。
蒼子は、堀の説教よりも、そんな二人を観察することに気をとられていた。
その間も堀は、めちゃくちゃに怒っている。
たしかに怒るよね、とスズキも思う。
説教されて幸せなんて、相手をバカにしているとしか思えないだろう。
でも、本当のこと。
スズキはあらためて、この日常をいとおしく思う。
今は怒られてたって、堀くんはいつも、怒るだけ怒ると、ちゃんと許してくれる。
いつものこと、いつもどおり。
いつもの通り、みんながいて、
いつもの通り、堀くんが怒ってて、
いつもの通り、僕はアキヤのそばにいる。
すごく、ふつうのことだ。
でも、それが幸せ。
この前まで、僕はキューピッドになりたい、そう思っていた。
誰かが誰かをスキになるって、すごくステキなことだし、僕自身、届かない想いのつらさを知っているから。
実らない恋の悲劇を、知っているから。
でも、その考えは変わった。
スキってキモチだけじゃない。
みんなのいる、この日常が大切なんだ。
幸せだって思える日々も、誰かを愛せる心も、全部ぜんぶ守ってあげたい。
それは、身の程知らずな願いかもしれない。
だって、僕は弱い。
アキヤが来てくれなかったら、あの日、僕はきっとこの世界から消えてしまったことだろう。
でも、僕には今がある。
きっと、明日もある。
だから、その願いに向かって歩き出せる。
それがどんなに遠くても、本当は叶わないとしても、近づいて、手を伸ばして、いつか届くと信じることができる。
それは、きみたちがいてくれるから。
僕は、がんばり続ける。
僕にとって、大切なものがある限り。
守りたいと思える、日常がある限り。
大切なひとたちが、みんながいる限り。
完読おつかれさまでしたっ!
&
ありがとうございました!
&
クサくてすんません(笑)
恥ずかしがりのカッコつけが書いてます…。
次は使い魔日記の続編、居候日記が始まります。
普通にスズキも出てきます…。
よかったら読んでやって下さい。




