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少年と天使  作者: narrow
15/31

続き 2

     ◆

 とりあえず、間食をなくすことにした。

 よって、スズキのいるコンビニに行く機会もないまま、一週間くらいはがんばれた。

 その間も、がんばってるねー、とか、えらいね、とかいいながらも、周りの女の子たちはちょこちょこお菓子をすすめてくる。

 だんだん空腹に耐えられなくなり、少しづつそれに手をつけてしまうようになっていた。

 やっぱり、お菓子はやめられないかも。

 ダイエットするって、言ったのになあ。

 スズキの笑顔を思うと、なんとなくうしろめたい。

 罪悪感・・・。

 こんなの、よくないよね。

 またくじけそう、と思ってから、彼の言葉を思い出した。

 僕がきみを助ける、彼はそう言った。

 なら、頼ってもいいハズ。

 りあんは、スズキのいるコンビニへ向かった。

 「スズキさーん、叱ってくださぁい・・・。」

 誘惑に負けてお菓子をつまんでしまった事を白状すると、スズキは怒るでもなく言った。

 「そんなにガマンしちゃダメだよー、あはは。モデルになろうってワケじゃないでしょ?極端すぎ。」

 「え・・・?」

 「僕、助けるって言ったでしょ?みんなからダイエットの事いろいろ聞いて、僕なりに分析したんだけどさ。がんばりすぎると、途中でザセツしちゃうんだって。だからね・・・」

 間食は、全くしないのでなく、減らすこと。

 油モノを控えるのはいいけど、全く抜くとかえって体によくない上に、余計コッテリしたものが欲しくなるので、それもほどほどにすること。

 なるべく体をうごかす、夕飯を軽めにしてみること・・・などなど。

 「すごい・・・超くわしい・・・」

 「ふふーん、すごいでしょ?仕事の時間もけずってガンバっちゃった!」

 胸を張るスズキだが、自分りあんのためとはいえこれはツッコまねばなるまい。

 「ダメくない?それ・・・」

 「そう?」

 何がダメなの、といった表情を返されると、これ以上追求もできなかった。

 「それにしてもー・・・、エラいね。ちゃんと頑張ってたんだ?」

 この前のように、兄の表情でスズキがりあんの頭をなでた。

 「でも、結局ガマンできなかったし・・・」

 落ち込むりあん。

 「ガンバりすぎたから、ガマンが続かなくなっちゃっただけ。きみは、エラいよ。そんなにガンバらなくても大丈夫、だから、あきらめないで。ね?」

 頑張らなくていい、と言われると少しラクになり、明日からも続けていける気がした。

 不安になったら、いつでも話をきくから。

 そう言って、スズキは笑った。

 本当のお兄ちゃんみたいに。

 時々スズキにはげましてもらいながら、りあんのささやかな努力は続いた。

 一ヶ月もすると、1kgほど体重が減った。

 「ねえ、もしかしてやせた?」

 約束どおり、スズキは気づいた。

 「え、わかる?!」

 「だって、なんだか嬉しそうだから。」

 それこそ嬉しそうに笑うスズキ。

 気づいてもらえると思うと、少しやりがいが出てきた。

 もっとヤセちゃおうかな、と思うりあん。

 ジュースやコーラばかり飲んでいたのを、ハーブティーにかえてみたり、ヒマな時間で少し散歩をしたり、ヤセるための行動が、なんだか楽しい。

 楽しいと思うと、続くものだ。

 3kgも落ちると、なんとなく見た目が変わってきた気がした。

 自分に自信がついてくる感じがする。

 「あれ、お化粧してるの?」

 試してみたほんの少しだけのメイクにも、スズキはすぐに気づいてくれた。

 少し驚いた彼は、すぐに笑顔にかわると、似合うよ、と、ほめてくれた。

 ダイエットは順調、友達に教わって、メイクも少しづつ上達していった。

 そうやって、半年もすると8kgほどやせた。

 「ヤセたら、目もおっきくなったんだよ?」

 りあんは、いつものコンビニでフルーツミックスティーを買う。

 「てゆーかさあ。」

 バーコードを機械で読み取り、レジのキーを押しながらスズキが答える。

 「変わりすぎ。ヘアスタイルからメイクから・・・すっかり可愛くなったから言わせてもらうけど、これ以上はヤセなくてもいんじゃない?それにメイクなんかも必要ないからやめなさい。」

 優しいお兄ちゃんは、説教兄貴に変身した。

 「だって、まだデブだもん!」

 ふう、とスズキがタメイキをつく。

 確かに彼女はまだまだ太っているが、それでもずいぶん変われたと、彼は思っていたから。

 「だいじょぶだって。さっさと告白してスッキリしちゃいなよ。」

 相手がどんな男か知らないが、こんなにガンバった彼女がフラれるとは思えない。

 いいや、そんな事になったら自分がその相手に一言いってやる。

 お兄さんはおせっかいだった。

 「ダメ!10kgやせて可愛くなってからって、決めたから。」

 フラれたからといって、すぐに忘れることもできず、ずっと、鴨井への想いを抱いたまま、彼女は頑張ってきた。

 すこしずつ体重がおちてくると、もう一度告白してみようかという考えが出てきた。

 見た目が変わってきて、希望がわいたのだ。

 告白のための目標として、元の体重から10kg減らすことに決めた。

 スズキはじゅうぶん可愛いというが、今はまだまだ太って見えるから、ダイエットをやめるわけにはいかない。

 今の時点ではまだ、“可愛いデブ”なのである。

(続)

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