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少年と天使  作者: narrow
11/31

続き 2

     ◆

 「はよーッス、庭月さん!」

 翌朝、アキヤは何もなかったかのように、ガンバって、庭月に声をかけてみる。

 少し驚いたような顔の庭月に、やはり無かった事にはならないのか、と、あわてた。

 「あ、あー、昨日、何か、ごめ」

 言い終わらないうちに、意外なことに彼女のほうから言葉をかぶせてきた。

 「八敷君、ちょっと聞いて欲しいんだけど。」

 八敷が気にしていないのなら、彼女としても責める気はなかったから。

 若干ガッカリさせられはしたが、それだけで、自分たちの関係が昨日以前と何も変わっていないなら、問題はないのだ。

 だとしたら、そんなことよりも気になることがある。

 自分よりもスズキを知っていそうな彼に、相談したいことが。

 信じてもらえないかもしれないけど、と彼女が切り出した話は、確かにちょっと信じがたかった。

 校舎の屋上からとびおりかけたとき、スズキに似た姿の幻を見たのだという。

 彼女は家に着いてから、思い出したのだ。

 なぜ、彼の顔に見覚えがあったのか、どこでそれを見たのか、を。

 ただ、庭月自身も、気のせいだと言われると思っていたし、あのときの自分は多分どうかしていたから、錯覚でそんなものを見たのかも知れない。

 それでも八敷阿輝矢には、彼にだけは話してみたかった。

 彼女が見たものを、彼が幻と笑い飛ばしてくれれば、それで忘れてしまえる気がしたから。

 見ているとなんとなく安心できる、彼のあの笑顔で、非現実的な記憶をぬぐいさってほしかった、なのに。

 「あぁ・・・それ、本当にアイツかも。」

 アキヤは、冗談を言っているふうでもなく、そう言った。

 「ぇ・・・」

 あっけにとられる庭月に、アキヤは説明するように一方的に話し続ける。

 「アイツさ、なんか、ユーレイとか見えるみたいでさ。実は、あん時庭月さんの様子がオカシイ、とかって言い出したのアイツで。庭月さんが俺の知り合いだ、ってことは知ってたみたいでさ。なんかよくないモノがまとわりついてるって。だから、なんとなく俺、庭月さんのことカンサツしてたワケなんだけど、とにかく、アイツも心配してて。だから、そんなときに見たんなら、無関係じゃないかもよ?ソレ。なんつの、チョージョー(超常)現象?」

 彼女の話と同じくらい信じがたいことを、彼は普通に話していた。

 「そんな、テレビの2時間スペシャルみたいな・・・」

 「でも、そうなんだよ。不思議なヤツなんだ、アイツ。」

 理解できない現象にであった、不可解な心境を何とかしたくて話したのに、よけいに頭が混乱するような話をきかされてしまった。

 ユーレイ?

 超常現象?

 そんな、ばかな。

 違う、やっぱり私が見たのは、きっとただの幻。

 そう考えて庭月が落ち着こうとした時、アキヤは、笑った。

 「だから、俺、庭月さんの言うこと、ぜんぜん信じられるし。」

 やっぱり、なんだか見ると安心できてしまうその笑顔。

 彼が信じるというのなら、それが真実なのかもしれない。

 信じられないようなコトは、本当にあるのかも。

 でも、だとしたら。

 「ねえ八敷くん、スズキさんって、何なんだろう?」

 超能力者とか、占い師、霊能者。

 そんな言葉がうかぶ。

 きょとんとした顔をした後、またアキヤは笑った。

 「何って、ニンゲンだろ、ははっ。ヒデェなあ庭月さん。」

 「そっ・・・ぉゆぅ意味じゃないー、もう!ぁはっ!」

 彼女も笑った。

 謎は謎のままだったが、今はそれで、いいような気がした。

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