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いつかお嬢様になりたい系ダンジョン配信者が本物のお嬢様になるまで【コミカライズ2巻 2026/04/28発売!】  作者: 鬼影スパナ


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13/82

現実世界にて


「ふにゃあああーーーーー!!!」


 カロナは――もとい、カロナの中の人、篠原(しのはら)沙夜(さや)は悶えていた。

 だがここはVR空間ではない。粗末な平べったいオフトンと薄い壁は音を吸収してくれず、お隣さんからドンッと壁を叩かれ「ひゃいっ、スミマセンッ!」と静かになった。……悶えるならVR空間に限る。


「はぁ……はぁ……それにしても、まさかミカド様の配信をミラーしてしまうとは……」


 思い返してもとんでもない失態だ。……あれ、やっぱりアーカイブ消した方が良いんだろうか。該当部分を削るとか? どうやるんだろう。わからない。できれば見返したくない……見るのがつらい……そっと閉じた。明日調べて消そう。


 ぐぅぅ、とお腹が鳴った。羞恥に悶えていても腹は減る。沙耶は常食している食パン(8枚切り98円)を齧ることにした。

 2枚をトーストにして、「いただきます」と小さく手を合わせて食べる。ジャムもバターもつけずに。

 中はふかふか、表面が小麦色に焼けている。齧りつくとサクッと焼き立てトーストの心地よい噛み応えと、ほんのりとした甘みある味わいが口の中に広がった。安物のパンでも、トーストしたてなら立派に美味しいのだ。 


「食パンのコスパのよさよ……1食2枚として1食25円……おいし」


 お嬢様とは程遠いコメントをしながら、水道水をコップに入れて飲む。水分補給は大事だ。最新のVR機器『コクーンベッド』を使うとVR内で食事を食べたときにちゃんと栄養補給とかしてくれるらしいが、沙耶の中古ヘッドセットにはそんな機能なんてあるはずがない。

 まぁ『コクーンベッド』はほぼ医療用。この安アパート一棟よりも高い。5万円の秘書AIを2体買うのにひーこら言っている沙耶には関係ない話だった。


「ふー……」


 腹が膨れて少し落ち着いた。

 アーカイブ、明日といわず今すぐ消すべきだろう。特定されようものなら炎上不可避であるし。いや、でもミカドお姉様から私へのコメントとか惜しいからそこだけ自分用に切り抜きして、いやいやそれこそお姉様のアーカイブから切り抜きでいい。自分の反応は不要だし……と、そこまで考えて、そういえば非公開設定というものがあることを沙耶は思い出した。


「非公開にしておけば、じっくり時間をとって対応できるよね。よし!」


 ちゃちゃっとVRヘッドセットを被り、BCDの配信アーカイブ管理画面を開く。没入せずに沙耶のまま、MRモードで操作だ。


「非表示……これかな? よし! セット完了!」


 先ほどの配信を非表示設定にして、沙耶はホッと一息つく。これで今日はぐっすり眠れる……と。沙耶はVRヘッドセットを脱いで、歯を磨いて、ベッドに横になった。そしてそのまま、すやぁと寝息を立て始めた。

 よほど疲れていて、よほど安心したのだろう。とてもスムーズな睡眠導入だった。



 だがここで沙耶は一つ勘違いをしていた。


 非表示設定は、ランキングやおすすめに表示されなくなる機能であり、URLで直接見に行かないと見れない、といった使い方をするためのもの。

 ……非公開設定とはまた別物なのである。


 そして、零細個人B-Casterであるカロナとは異なり、ミカドのチャンネル登録者数は400万超え。その中には当然「おっ、ミラーしてたの誰だよ」と特定に走る者もいて、カロナはあっさり見つかっていた。非表示にする前に。


 特定されたアーカイブはURLを引用する形でSNSにアップされた。ミカド様にご注意いただいたうっかり配信者として。


 それを見た中には「ちょっと切り抜いてみるかw」と思うものが居た。非表示設定にはなっていたが、動画の許諾設定は通常のアーカイブと同じで。察しのいい者は「あー。非公開設定にしたつもりで間違えたやつか」と理解しつつ、でも切り抜いた。


 切り抜き動画は、元アーカイブのURL付きで切り抜き動画がアップされていた。「ミカレイドなうっかり配信者w」として。


 カロナが本気でうっかりさんで、単純にミカドのファンであったのが幸いした。悪意を持って切り抜こうにも、どこをとってもただのミカドのファンで。

 そんなわけで無難に仕上がった切り抜き動画を見たミカレイド達は、「あー。わかるー」と同類を微笑ましく受け入れたのである。



 その結果――


「ふぁあ、良く寝た。さーて、今日はどうしようかな……あ、アーカイブどうにかしないと。えーっとその前にメールチェック……ん? おお、スパチャ解禁されてる。寝てる間に200人いったのか……」


 沙耶は、チャンネル登録者数200人になる瞬間を見逃した事を残念に思いつつ、寝起きの頭で登録者数を確認する。


 ――そこには、1025という数字が書いてあった。


 思わず膀胱から尊厳が吹き出しそうになったのはここだけの秘密である。





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膀胱から尊厳が漏れ出るお嬢サマ……推せる……
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