表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『「勘弁してください(結婚してください)」 ~殺されるかと思ったら、一生お菓子を焼くことになりました~』  作者: 沼口ちるの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/33

第4話 最強(最凶)タッグ、爆誕

「……美味しい」 「……であろう?」


魔王城のダイニング。 瓦礫の山になりかけたその場所は、今は奇妙な静寂に包まれていた。


テーブルを挟んで向かい合うのは、魔王リディアと聖女アンナ。 二人の前には、僕が死に物狂いで作った『季節のフルーツ特盛りパフェ(魔界Ver.)』が置かれている。 そして、二つの器はすでに空っぽだった。


(た、助かった……のか?)


僕はキッチンの隅で、震えながら様子を窺っていた。 さっきまで「殺す」「潰す」と言い合っていた二人が、パフェを一口食べた瞬間に動きを止めたのだ。


アンナがナプキンで口元を拭いながら、真剣な眼差しでリディアを見る。


「認めます、魔王さん。貴女、意外と話がわかる人ですね」 「ふん。貴様の方こそ、その食いっぷり……タダモノではないな」


二人の間に、謎の友情(?)が芽生え始めていた。 リディア様がワイングラス(中身はグレープジュース)を揺らす。


「どうだ、聖女。この城の居心地は」 「悪くないですね。特に、いつでもヒイロくんの焼きたてが食べられる環境は、控えめに言って天国です」 「だろう? だが、私一人では管理しきれんこともある。……ヒイロはすぐ、隙を見て逃げようとするからな」


ギクリ。 リディア様の視線が、隠れていた僕に突き刺さる。 アンナもゆっくりと首を巡らせ、ハイライトの消えた瞳で僕をロックオンした。


「逃げる? ヒイロくんが? ……そんなの、許しませんよ?」 「そこでだ、聖女。貴様、この城に住め」 「はい?」


僕とアンナの声が重なった。 リディア様は不敵に笑う。


「私と貴様で、ヒイロを共同管理するのだ。私が公務で忙しい時は、貴様がヒイロを監視しろ。逆に貴様が祈祷(睡眠)している間は、私が見ていてやる」 「なるほど……。つまり、24時間体制でヒイロくんを独占できる、と?」 「その通りだ。それに、二人いれば『新作スイーツ』のアイデア出しも捗るというもの」


アンナの顔が輝いた。 まるで、生き別れの姉妹に出会ったかのような感動的な表情で、リディア様の手を握る。


「素晴らしい提案です、お姉様・・・!」 「フッ、わかっているではないか、妹よ(・・・)」


ガシィッ!! 固い握手が交わされた。 世界最強の魔力と、世界最高峰の聖なる力が、今ここで『食欲』という一点において融合してしまったのだ。


「ま、待って! その同盟、僕の意思は!?」


僕が慌てて声を上げると、二人は同時に振り返った。 その息はぴったり。表情も完全にシンクロしている。


「「ヒイロは黙ってて(黙っていろ)。次、ホットケーキ焼いて」」


「…………はい」


完了した。 人類と魔族の歴史的和解が、こんな下らない理由で成立してしまった。


こうして。 魔王城には『最強タッグ』が誕生した。 魔王の権力で最高級の食材を集め、聖女の力で(鮮度保持などの)環境を整える。 そして、その全てを使って僕にお菓子を作らせる。


「ヒイロ、明日はスフレだ。失敗は許さんぞ」 「ヒイロくん、私はプリンがいいな。バケツサイズでね♡」


左右から迫りくる美女(猛獣)。 逃げ場なんてどこにもない。 僕の異世界スローライフは、二人の最強ヒロインによる『甘くて過酷な監禁ライフ』へと進化してしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ