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『「勘弁してください(結婚してください)」 ~殺されるかと思ったら、一生お菓子を焼くことになりました~』  作者: 沼口ちるの


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第25話 神の忘れ形見、白き蝙蝠「シロ」

神界からの帰還。 僕たちが再びガルシオン火山の麓に立った時、全員の顔には疲労と、それ以上の決意が滲んでいた。


シルイドはもういない。神様も消えかけている。 僕たちが戦う相手は、ただの魔人じゃなくて「世界のバグ」そのものだ。


「……湿っぽいな、お前ら!」


沈黙を破ったのはヴォルグだった。 彼は熱した鉄板のような岩をバン!と叩いた。


「相手が神だろうがバグだろうが関係ねぇ! 俺たちは最強だ。そうだろ!?」 「……珍しく、この筋肉ダルマに同意しますわ。嘆いていても、失われた風は戻りません」


ミゼリアが氷の槍を地面に突き立てる。 ネクロラも、分厚い古文書をバサッと閉じた。


「我輩の計算では、勝率は五分五分まで持ち直した。……あとは実行あるのみだ」


みんな、強い。 前世で一度負けた記憶を持つ僕とリディア様、アンナは、彼らの前向きな姿勢に救われた気がした。


「……そうだな。我々は進むしかない」


リディア様が顔を上げた、その時だった。


ピカーッ!


頭上の空が、一瞬だけ強く輝いた。 神界への扉が完全に閉じる直前。その隙間から、小さな光の塊が降ってきたのだ。


「わっ!?」


それは真っ直ぐ、僕の腕の中へと飛び込んできた。 フワフワとした感触。 僕が恐る恐る腕の中を覗き込むと、そこにいたのは――


「……きゅ?」


真っ白な、蝙蝠こうもりだった。 大きさは握りこぶしほど。全身が新雪のように白く、小さな翼は透き通るように輝いている。 目は宝石のような金色で、弱々しく僕を見上げていた。


「なんだ、この生き物は? 魔界の蝙蝠とは種類が違うようだが」


リディア様がのぞき込む。 ネクロラが眼鏡を光らせて解析を始めた。


「……信じられん。この生物は、純粋な『神気』の塊だ。肉体を持ったエネルギー体……と言ったほうが近い」


僕には直感でわかった。 これは、あの消えかけの神様が、最後の力を振り絞って創り出した「シルイドの代わり」なのだ。 風の属性と、神の加護を持った、小さな調停者。


「きゅぅ……きゅぅ……」


白い蝙蝠は、とても弱っていた。 生まれたばかりで、エネルギーが枯渇しているようだ。 神様本体が弱っているから、この子も力が出せないんだろう。


「……お腹、すいてるの?」


僕はリュックから、とっておきの『メレンゲクッキー』を取り出した。 卵白と砂糖で作った、雲のように軽いお菓子。これなら負担なくエネルギーになるはずだ。


僕はメレンゲを小さく砕いて、蝙蝠の口元へ運んだ。


「ほら、お食べ。甘くて美味しいよ」


ぱくっ。


小さな口が、メレンゲを咥えた。 サク、シュワッ。 口の中で瞬時に溶ける甘露。


「――――きゅ!」


蝙蝠の金色の目が輝いた。 全身の白い毛並みが、ボッと音を立てるように発光する。 すごい勢いで残りのメレンゲを平らげると、蝙蝠は元気よく僕の肩に飛び乗った。


「きゅい! きゅい!」


どうやら、気に入ってくれたみたいだ。 僕の頬にスリスリと体を擦り付けてくる。可愛い。 シルイド君みたいな軽薄さはないけど、この愛嬌は強力な武器だ。


「ふん、愛らしいではないか。……名は『エターナル・ウィンド・サーバント(悠久の風の僕)』としよう」 「えー、可愛くないわよリディアお姉様。『ふわふわ天使ちゃん』がいいわ」 「きゅー(どっちもやだー)」


蝙蝠は首を振って拒否した。 そして、僕の顔をじっと見て「きゅっ」と鳴いた。


「え、僕が決めるの? ……うーん、白いから『シロ』でどう?」


「きゅい!(それだ!)」


蝙蝠――シロは嬉しそうに翼をパタパタさせた。


「……安直すぎるだろう、ヒイロ」 「でも、本人が気に入ってるみたいだし……」


こうして、神様の忘れ形見にして、魔王軍(仮)の新たなマスコット、『シロ』が仲間に加わった。 今はまだ小さなマスコットだけど、僕には感じる。 この子の体内に秘められた、とてつもない可能性を。


(……この子が、次の時代の希望になるかもしれない)


そんな予感を抱きつつ、僕はシロの頭を撫でた。


「よし、全員揃ったな」


リディア様が、最強の布陣を見渡して宣言する。


「これより我々は、世界を食らう害虫駆除に向かう。……準備はいいな?」


「「「「応!!(承知!)(きゅい!)」」」」


目指すはナンジャモンの現在地。 最強の魔王、最強の聖女、規格外の四天王たち、神の使い、そして異界のパティシエ。 史上最高のドリームチームが、ついに最終決戦へと動き出した。

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