12/33
第12話 ごちそうさまでした(BAD END)
ガブッ。
音がした。 僕の体が、腰のあたりで両断される音だった。
「――ぁ、」
痛みは一瞬遅れてやってきた。 熱い。痛い。 視界がぐるりと回り、僕は自分の下半身がナンジャモンの口の中に吸い込まれていくのを見た。
「……んぐ。……ん。……甘い」
ナンジャモンが咀嚼する。 僕の足だったものが、すり潰される音。 骨が砕け、肉が裂ける音が、頭蓋骨に直接響く。
「……これだ。……これが、食いたかった」
ナンジャモンが恍惚とした声を上げる。 僕は上半身だけで床に転がり、薄れゆく意識の中でリディア様の方を見た。
彼女はまだ息があった。 血まみれの顔を上げて、涙を流しながら、音のない声で叫んでいた。
『ヒイロ――ッ!!』
ごめんなさい。 ごめんなさい、リディア様。 ごめんなさい、アンナちゃん。 僕がもっと強ければ。 僕がただの「お菓子作りが好きなだけの凡人」じゃなければ。
「……おかわり」
巨大な影が、僕の視界を覆う。 最後に映ったのは、ナンジャモンの無限に広がる暗黒の喉の奥だった。
あぁ。 もしも、もう一度やり直せるなら。 次は、お菓子だけじゃなくて……君たちを守れる「力」も焼きたい。
パクン。
世界が、閉じた。




