タイトル未定2026/01/04 18:58
夜の繁華街をマスターは、酔いつぶれたちはるを背負って歩いていた。
「誰が、恥ずかしがり屋なんですか?」
「なんのこと?」
「友光さんが、言ったんですよ」
「えっ、そんなこと言った?」
すっかり忘れているちはるに、マスターは笑った。
ちはるはマスターの背中に頬を乗せ、甘えるように言った。
「ねぇ、マスター」
「はい」
「マスターは、わかっている?」
「何がですか?」
「マスターの何気ない笑顔や優しい言葉が、女性達を傷つけていることに」
「傷……つけていますか?」
「自覚なく、やっているんだ。一番たちが悪い」
「すみません」
「どれだけの女性が、マスターに惚れているのか、マスター気がついている?」
「さぁ……」
「本当に、気がついていないの?それともフリをしているだけなの?」
ちはるの問いに、マスターは何も言わなかった。
「マスター」
「ん?」
「こうして歩いていたら、私たち恋人同士に見られるかな」
「親子には、見られませんよ」
「もぉ!」
マスターとちはるは、声を上げて笑った。
「こんなに声を上げて笑うマスター初めて」
「ボクだって、笑いますよ」
一緒に声を上げて笑いあったことが、ちはるには嬉しかった。
マスターとちはるは、地下鉄のホームにいた。
ホームは、客がまばらだった。
ちはるは、マスターの背中から降りていた。
マスターは心配そうな顔をして、ちはるに言った。
「大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫」
どうして、そんな顔をして言うのよ。
マスターは社交辞令のつもりだろうけど、そんな顔で「大丈夫ですか?」なんて聞かれたら、皆マスターに惚れてしまうでしょ!
マスターは、何もわかっていない。
そこが、マスターらしいんだけど。
「どうか、しましたか?」
もう、やめて!そんな甘い顔で聞かれたら、みんな誤解をするでしょ。
ちはるは、マスターの胸の中に飛び込み、マスターの胸に顔を埋めて言った。
「マスターありがとう。大好き!」
突然胸の中に飛び込んできたちはるを受け止めるべきか、突き放すべきか、マスターは途方に暮れていた。




