タイトル未定2026/01/04 18:49
繁華街は、すっかり夜になっていた。
学校帰りの若菜は、独りとぼとぼ歩いていた。
誰かに背後から肩を叩かれ、短い声を上げ若菜は恐る恐る振り向いた。
そこには、会社帰りの馬場とちはるがいた。
ちはるが、若菜に声をかけた。
「スイ、久しぶり!」
「馬場さん!ちはるさん!」
「なぁに、しょぼくれて歩いてるの。スイらしくないぞ!」
ちはるのぶっきらぼうだが、優しい言葉に、若菜の目から涙が溢れた。
若菜は目の前にいた馬場の胸の中に飛び込み、声を上げて泣いた。
「えっ、俺?」
驚いた馬場はちはるに向かって声を上げ、ちはるは馬場に言った。
「あんたスイに、何かしたの?」
「なんも、してねぇよ!」
近くのファミレスに行き、若菜もやっと落ち着いた。
料理をオーダーした後、早速ちはるが聞いてきた。
「で、どうしたの?」
「マスターの側にいるシロちゃんに、ずっと嫉妬していた。そんな自分が嫌い。そんな自分だから赤井さん、私から離れるよね。赤井さんを傷つけた自分は、もっと嫌い」
「ふ〜ん。そう言うことかぁ。で、どうしたいの?」
若菜が黙っていると、それまで口を閉ざしていた馬場が突然切り出した。
「その一、全心全力でマスターを追う!その二、赤井とよりを戻す!その三……」
そこで馬場は止まってしまい、ちはるは馬場を急かした。
「で、その三は、なんなの?」
「あきらめましょう……マスターのことは」
しんみり言う馬場の言い方に、思わず若菜は吹き出し、馬場とちはるは顔を見合わせホッとした表情をした。
タイミングよくオーダーした料理が運ばれ、三人は食べだした。
食べ終わる頃、若菜がちはるに聞いてきた。
「ちはるさんは、マスターのことをどう思っているんですか?」
「痛いとこつくわね。好きは、好きよ。でも、もうどうにもならないじゃない。だからね、アタシはマスターに変な虫が付かないように排除するの」
「友光、やっとそう言う考え方ができるようになったか!」
「馬場、うるさいよ!」
目の前で馬場とちはるが言い合うのを、若菜はそっと見つめていた。
ホント、二人ってお似合いだなぁ。そのことに、気がついていないのも二人らしい。
そんな思いで何気にメニューを広げた若菜は、声を上げた。
「あっ、このバナナサンドのパンケーキ、美味しそう!」
「おっ、本当だ!食べようぜ!」
「馬場も食べるの?」
「俺、甘いの大好きスィーツ王子」
「どこが!」
馬場は注文のタブレットを、引き寄せた。
ファミレスを出て、馬場とちはると別れた若菜はいつもの元気を取り戻していた。
しかし家に近づくにつれ、若菜の表情は恐怖に変わった。
誰かに、つけられている!誰?
若菜はスピードを上げて歩き出し、家が見えた頃には、全力で走っていた。
家に入った若菜は、すっかり全身びしょ濡れになっていた。
こんな風に誰かにつけられたのは、これが初めてではない。
短大に入学してからだった。
以来若菜は、恐怖を一人で抱え込んでいた。




