STORIES 058: 紡ぎ出される愛情
STORIES 058
都心部からは少し離れた見知らぬ土地。
その日は初めて訪れた場所で屋外作業をしていた。
住宅地に残る、昔からの農地。
代変わりのたびに規模を縮小し続けて…
やがてみんな、住居や駐車場になってしまうのだろう。
仕事を終えた僕は、帰り支度を始める。
不用品を整理しながら、工具や荷物を車に積み込む。
すぐ横の小さな通りは往来が少なくはなく…
時おり、自転車や車が通り過ぎてゆく。
「ねぇ、お空の星には、木星とか金星とか、
そういうのがあるの、知ってる?」
ふと手を止めた僕は、その声がしたほうを振り返る。
自転車の後ろに幼い子を乗せて走り去る、若い母親らしき姿が一瞬だけ見えた。
これからどんな話が始まるのだろう。
僕はその続きを聞いてみたかった。
きっと素敵なお母さんだね。
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恋は熱病のように
たちまちわたしを捕らえ
熱にうかされ心を焼かれ
立ち上がることさえ困難な
狂おしい気怠さに苛まれる痛み
愛は手のひらのように
迷うわたしの手をひき
不安に押し潰されそうで
立ち止まろうとする幼な子を
ただ優しく振り返るあなた
夜は死神のように
ゆっくりとわたしに近づき
遠い記憶に埋もれて足をとられ
背後から囁かれる呪いの言葉で
大切なものを失ってゆく漆黒
朝は抱擁のように
優しくわたしを包み込み
繰り返す悪夢に胸を傷め
朝日を待ち焦がれる迷い猫を
心配ないよと抱き寄せるあなた