【サイドストーリー】機密文書(前編)
皆様にとって、面白い小説になれば幸いです。
よろしくお願いします。
「この文書が世に出れば、
数十万単位の人間から恨まれるのだろうな。」
我が国(日本)の総理大臣が、タメ息をついている。
「もし、我々が、ダンジョンの転移と言う利権を放棄していれば、
我が国(日本)から、1万人前後の人間が消える事はなかった訳ですからね。
恨まれて当然です。」
「だよな……」
総理は、タメ息をつきながら、アタシの言葉に頷く。
「ですが、その……
彼達の犠牲のお陰で、我が国の領土にも、ダンジョンが転移してきました。
失礼ですが、総理は、ダンジョンに眠っている遺物や、マナを含んだ空気が、我が国(日本)に取って、どれ程の経済効果を生むのか、分かっていらっしゃいますよね?
そんでもって、その利権を得る為には、1万人前後の国民を、アーカイブ ワールドに差し出さなければならなかったのです。
だから、国益を守る為に仕方がなかった。
私は1人の日本国民として、総理のご英断に対して、尊敬の念を持っておりますよ。」
「そう言って貰えると、少しは気が楽になるよ。」
総理は、そう言いながら、タメ息をつかれる。
「それに、この極秘文書が、一般公開されるのは、100年以上も先になる予定です。
でっ。失礼ですが、その時、総理は、既に、お亡くなりになってる筈です。
ですから、何も問題が無いかと思いますがね。」
「はぁ……それも理解しているつもりだ。
たく……君には……罪悪感と言うものがないのかね。」
総理がタメ息をつきながら、私を見ている。
「ダンジョンが転移した国は、我が国を含めて、9カ国しかありません。
これは、この世界を裏で取り仕切っておられる、神仏の代理人を名乗る集団。情報管理局の保守派の連中の意向でもあります。
我々は、彼等の信頼を得る努力を怠らなかった。
だからこそ、莫大な国益を確保する事が出来ました。
寧ろ、その努力を惜しむ事こそ罪であり、国民に対して、罪悪感を覚えるべき行動かと思いますけどね。」
「流石に、その言い分には無理があるだろ。
万単位の人間を生け贄に捧げたようなものだぞ。」
総理が、私をジト目で見る。
「生け贄?
彼達は、アーカイブ ワールドに召還されましたが……虐殺される運命だとは聞いてません。
それに、情報管理局の保守派の連中が言うには、
異世界に転移する事で、特別な力を得る者も居るらしいではありませんか。
でっ。その中にはきっと、この世界に居続けた未来よりも、幸せな未来を掴み取る者も居る筈です。
そんでもって、そう言う方々はきっと……我々の決断を英断だと言って感謝してくれると思いますよ。」
「かもな。
だが……情報管理者の革新派の連中は、今回の事に反対しているのだろ?
そのせいで、あの世界では、本格的な大戦になりそうだと聞いてるぞ。
そんな不安定な世界に召還されて、喜ぶ者などいないだろう。」
総理が呆れた顔で、私を見ている。
「どうですかね……
我が国は平和ボケの集団。なんて言う方も確かに居らしゃいますが……
皆が皆、平和を愛する者でな無いと思いますよ。
特別な力を得たチートの中には、
人殺しや、モンスター殺しを嬉々として行いながら、俺TUEEE ライフや、俺sugeee ライフを満喫される方も居らっしゃるのではないですかね。」
「それは、それで、あの世界の一般人の方々に罪悪感を覚えてしまうな。」
総理が、苦笑いしながら、ボソッと呟いた。
「そんな無駄な事に思いを馳せる必要も時間もありません。
いくら、情報管理局の保守派から、
ダンジョンに眠っている遺物の使い方や、大量のマナを吸う事で覚醒した者達への教育。それに……
ダンジョンの攻略のノウハウ等、必要な情報を得られるとはいえ、ダンジョンを運営するのは我々です。
しかも、情報管理者の革新派の連中は、
我が国の万単位の国民とトレードしたダンジョンを封鎖するべきだ。と、ほざいています。
彼達の内政干渉への対策も急務なのです。
失礼ですが……総理は、今の状況をきっちりと理解しておりますか?」
「はぁ……官僚様は良いよな。裏で物事を決めるだけで、矢面に立つ必要が無いからな。」
総理が、ジト目で、私を見ている。
「政治家様の秘書様よりかは、まっしでしょ。
我々の尻拭いをさせる事もございますが……
基本、貴方達、政治家様に尊敬の念を持って接しておりますよ。」
「人聞きの悪い事を言うな。
確かに、 一部、そう言う輩も居るには居るが……
十把一絡げにされたんでは、たまったものじゃない。」
総理が、不機嫌な顔をしながら、私を見ている。
「ハイハイ。
そう言う事にしときましょうか。」
私は、そう言いながら、◯チャンネルのオカルト板のような内容の機密文書を、再度、見直す事にした。
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【1ページ目】 太古の世界。
太陽系外縁天体にある、かつては、太陽系のもう1つの恒星だった、元褐色矮星のガス惑星のネメシスを公転する準惑星から、アヌンナキと言う、知的生命体が生まれた。
そして、ネメシスが、元褐色矮星からガス惑星になった時に当時、地球型の生物が住めるような環境だった、火星や金星に移り住み、新たな文明を築いた。
しかし、その文明は、長くは続かなかった。
ネメシスが、元褐色矮星からガス惑星になった影響で、 太陽系の星々の重力圏に微妙なズレが生じ、
それが原因で、火星から大気が失われ、金星の大気は温室効果が暴走し、
その結果、2つの星は、現在の地球とはかけはなれた環境になってしまった。
その為、アヌンナキ達は、
火山活動をしていて、地下に海や大地がある、冥王星等の太陽系外縁天体にある準惑星や、土星や木星等、太陽系内の衛星の地下に移り住んだり、
衛星サイズの宇宙船。惑星ニビルを作り上げ、惑星ニビルに移り住み、自分達の住める星を探す事にした。
そして、惑星ニビルを動かす為の燃料を作る為に、
当時、地球型の生物が住めるような環境で無かった地球に、飛来して、当時の地球の大金の主成分だった、二酸化炭素を大量に収集していった。
そんな中、アヌンナキの中から、
ガス惑星に成り果てた、ネメシスの代わりに、木星を褐色矮星に変えようと言う壮大な計画を立て、その計画を実行に移そうと考える者達が出てきた。
彼達は、木星を褐色矮星にする事で、
太陽系。及び、太陽系外縁天体の中から、地球型の生物が住めるような環境を持つ星が、再び生まれると考えたのだ。
だが、このプロジェクトを、観察者と呼ばれる、宇宙の秩序を保つ者達が認めなかった。
その理由は、アヌンナキが、二酸化炭素を収集する為に、地球に飛来した時に、意図せずに、地球に残していってしまった微生物が、当時の地球の過酷な環境に適応し、命を繋ぎ止めていたからだ。
観察者達は、褐色矮星化した木星のせいで、地球の環境が、更に変わり、絶滅してしまう事を恐れたのだ。
その後、地球は、観察者達が守った微生物が生み出した酸素が原因で、大金の成分を大きく変えていった。
そして、何時しか、地球は……
多種多様な生物が暮らす惑星へと変貌を遂げる事となった。
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【2ページ目】
今から50万年、アヌンナキは、地球に戻って来た。
理由は、壊れかけた惑星ニビルを修復するのに、大量の金が必要になったからだ。
地球に戻って来た、アヌンナキは驚いた。
何故ならば、地球は、自分達が住めるような星では無いと認識していたからだ。
彼等は、安心して生活が出来る、地球に移住するか否かを迷ったが……
最終的に、惑星ニビルに住み続ける事を選択し、惑星ニビルを直す為に、せっせと金を堀り続けた。
しかし、その重労働に耐えかねて、約38万年前に、原始的労働者を得る為に、ルル・アメル プロジェクトと言うプロジェクトをスタートさせた。
このプロジェクトは、地球の生命に、自分達の遺伝子を組み込み、金を堀る労働者にすると言う物だった。
このプロジェクトは、8万年と言う月日を費やし、約30万年前に完遂された。
ルル・アメル プロジェクトを完成させた事で、アヌンナキの金の採掘スピードは、大幅に上がった。
そして、必要な量の金を採掘し終えた、アヌンナキの多くは、惑星ニビルへと、戻って行ったのだったのだが……
また、金が必要になった時に備えて、一部の者が、原始的労働者を管理する為に、地球に残る事になった。
でっ。この原始的労働者を管理する為の組織が、情報管理局であり、
原始的労働者の生き残りが、我々、人類と言う事になる。