・7・目的決定
目が覚めた。
なんか怪獣と戦って勝った気がする。久しぶりに見たにしてはいい夢だったと思う。いつも通りならキッチンでママがトーストを焼いてくれてると思う。父さんはダイニングでコーヒー飲みながら新聞読んでるはずだ。
わかってたよ。わかってたけれど。目を開けた。当然目の前に広がっていたのは最悪の光景。すぐ前に頭に風穴が空いたワニの怪物。しかもハエだの小型の魔物だのがたかってる。僕の服はホコリまみれで、真っ白になってる。まさに最悪、地獄そのものだ。いつもの暮らしに戻れるわけない、よね。
こんな所さっさと離れるに限る。バッグの中身は無事みたいだから、早くどこかで着替えたい。あと、一度状況を整理したい。あまりにも情報量が多すぎて理解が追いついていない。なによりこんな汚いところは一刻も早く離れたい。さっさと方角を割り出して進もう。途中に川ぐらいあると思う。そこで身体を洗おう。さっきの光のことにはなるべく触れたくない。
暫く歩いて、小川に出た。かなりきれいだ。早速岩陰にバックをと服を置いて、水に飛び込む。5日ぶりの水浴はありえないくらい気持ちがいい。思わず心から神に祈りそうになったけれど、やめた。初めての本気のお祈りが水の気持ちよさについてだなんて、三文コメディ小説のネタにもなりやしない。
流れていく水を見ると、シラミらしきものがたくさん流れてる。やっぱり相当汚れてたみたいだ。こんな格好で自分の家のソファーに座ってたと思うと、吐き気がする。今後どこに行くかは決めていないけれど、単独での放浪は、やめたほうが良さそうだ。風呂に一日も入れない生活なんてつらすぎる。
風呂に毎日入れる環境ってなると、ある程度文明レベルが高くないと無理だ。終末世界の人類はごく一部を除いて、石器時代まで後退するのがセオリーだから、そのごく一部を見つけないといけない。人間以外の勢力なら確実にいる。みんなが死んだ日に見た連中は絶対にそうだ。問題はそういう連中に僕をどうやって売り込むか、だけど・・。
「・・・・・」
いつの間にか川の中で棒立ちになって考えてた。慌てて川から上がる。そのまま急いで服を着て、また歩き始めた。さっきまで来ていた服は上着だけ洗って、ほかは捨てておいた。どうせ暫く風呂には入れないんだから、二、三着服が減ったところでどうってことないだろう。今はとにかくポーツマスに早く着きたい。パブロフも僕がポーツマスに行くつもりだったのは知ってるはずだ。