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・3・再会

 「イアン?君なの?」

 

 部屋に入るといきなり声が聞こえてきた。


「どうしたの?イアン・ユーバンク=クラーク、僕のご主人。どうして何も言わないの?」


 クローゼットの中からその声は響いてる。家のは誰も居ないはず。誰かが侵入したのか?


「おーい。あれ、イアンじゃないの?」


 武器はどこだ?あった。金属バットだ。それを握ってクローゼットの扉に手をかける。


「あ、やっぱりイアンだ。ねえ、僕だよ。」


全く聞き覚えがない。バッドを振り上げ、クローゼットの扉を思い切り開けた。


「わー、待って待って。僕だって。君のペット!!」

 

其処には見覚えのあるリスがいた。


「パブロフ?!?!?!?!」


 僕はこの数時間でたくさんの異常事態を経験した。完全なる闇、発狂する人々、誰も居ない街。けど、目の前のこれが一番の異常事態だと思う。だってペットのリスが僕の言葉を理解してしゃべっているんだ。いや、たしかにオーソドックスな不思議体験かもしれない。けど冷静に考えてみてほしい。リスが人間と会話する異常さを。誰も居ない街より、集団発狂より、ずっとありえない話だと思う。


「で、説明してくれるの?パブロフ?」

「驚いてた割に割とすぐ順応したね、イアン」

「軽口は良い。大体、太陽の暴走で生物は地表に住めなかったはずだよ。なんで生きてるの?」

「わかんない。けど、人間以外はみんな生き残ってるよ。逃げ遅れた人間が焼け死ぬ隣で水浴びしてる鳥もみたことあったっけな。」

 

 そんなことがある訳がない。それじゃまるで人間だけを狙い打ち、そう、まるでノアの方舟じゃないか。

そんな事が自然現象で起こるわけがない。


「冗談はよせって。今は真面目な話の途中なんだ。時と場をわきまえて冗談言ってくれる?」

「冗談じゃないって。実際僕は生きてるじゃない」


 そういえば地上に残った人間は居たのか?政府は全員シェルターに入ったって言ってたけど。

「ねぇ、そもそも地上に残った人間っていたの?政府は全国民が入れるだけのシェルターを作ったって宣伝してたけど」

「ああ、なんかよくわかんないけど、スラムの方とか、あと刑務所に居た人たちはずっと地上に居たよ。全員死んだけど」


なるほど。”全国民”だから国籍がなければ計算に入らないってことか。刑務所の方は死刑囚でも放置したのかな?


「そゆことね。けど、動物にも太陽の暴走は感じ取れたんだね?」

「いや別に?わかんなかったと思うよ」


 は?今まで太陽が暴走して人類が大量に死んだって話ししてたんだよね?なんでここでわかんなかったと思うってゆう発言がでるの?


「え?なんで?わかんなかったの?スラムの人らが死んだ理由わかってなかったの?」


パブロフが首を傾げた。いや、首を傾げたいのはこっちの方だって。話がこんがらがって何がなんだかわかんないんだから。


「いや、僕はイアンたちが話てるの聞いてたからなんとなく察しついたよ?けど別に太陽の見た目はそんな変わらなかったし、動物は基本太陽直接見ないしね。殆どは何が起こったのかわかってないと思うよ。」


 ああ。そうゆうことか。つまり動物にはそもそも太陽に異常が出てるってことさえ悟らせない。つまり完全に人間だけがターゲットだったってことだ。自然現象の線はこれで消えた。つまり誰かがわざとこんな異変を起こしたんだ。


「ちがう。そうだ。そういうことなんだ。」

「なにが?まさか人間だけ死ぬ謎が解けたとかそういう話?」

「そのとおり!これはノアの方舟なんだ」

「え?何言ってんの?あ、聖書にのってるお話は知ってるよ?けど今の状況と全くリンクしないんだけど。」

 

 わからないのも無理はない。聖書を深く学んでいなければこんな事思いつかないだろう。


「神か誰かが人類に激怒して、滅ぼそうとしたんだよ。だから動物は死ななかったんだ」

 パブロフにため息をつかれた。なんでだ?

「じゃあイアンがノアなんだね。あとノアの方舟は動物も死んでるよ」

「地下が地表で、地表が方舟なんだよ。人間を地下シェルターに避難させることで動物達と隔離したんだ。」

「いや、考えすぎだと思うけど・・・」

「てことは僕の役目は・・子供を増やすことか?」

「イアン、僕の話聞いて」

「それには異性が絶対に必要だ、探さないと」

「イアン」

「レディに合会うときにむさ苦しい見た目してちゃダメだよな。」

「わかった。もう良い」

「痛っ!!」


頬が痛い。ぶたれた。パブロフに。親友に。何で?怒らせるようなことはしてないのに。


「何するんだよ。僕は今重要な考えを・・」

「わかったよ。わかった。君はとても重要人だ。偉人だ。。でもそんなにすごいなら僕はいらないでしょ。」


え?いま、もう僕はいらないって言った?え、なに絶交ってこと?まさかそんなわけない、よね?


「いや、何を言ってるの?パブロフ。ジョークならもっとわかりやすく言ってくれないと・・」

 

 そう言っても、期待してたいつもの笑顔は帰ってこなかった。僕の方を見もしなかった。

 

「君はもう昔のイアンじゃないんだね。もう思慮深くて博識なイアンは居ないよ。其処にいるのはただの異常者だ。イアンじゃない」

 

 そう言ってパブロフは窓から飛び降りた。



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