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「バカなの」
彼女が小さく呟く。
僕はハハハと小さく笑い、目を瞑る。
「バカなんだよ」
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三月九日。
僕は死んだ。心理的に死んだ。
生きていないも同然だった。
今更何を憎めばいいか見当つかなかった。
一枚の紙に番号がなかった。
ただそれだけ。
それだけで人の人生は一年分総じて変化をなし、人生をも変化を遂げる。
三月九日。
僕は大学受験に失敗。地方の名高い国立医。
無理だろ、と思ってる奴に成し遂げられることなんか無い。
当たり前だが、見失いかけてた現実の秩序。
「努、死ぬなよ」
僕を孤りで育てた父が死んだ僕に言った。
「、、、」
僕は返す言葉もなくただただ茶碗を掻きこむ。卵かけご飯。最後の晩餐。卵かけご飯。
アイロニーに笑ってしまいそうになった。
「死ぬなよ」
「わかってるよ」
面倒臭い。
箸を置いて僕は鞄を取る。
「行ってきます」
「、、、お、おう」
面倒な父を置いてドアの取手を掴んだ。
ガチャ
外は夕方の暖かさを帯びていた。