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8/18

8月1日

 

 学校が夏休みに入り、レイはライムと会う約束をしていて家に向かう途中、雨に降られてしまった。せっかく新しい服にバッグにとお洒落をしてきたというのにこのままでは化粧も崩れてしまう。

 バス停を待つ停留所の小屋に入り少しだけ雨宿りをしようと外の様子を伺いながらライムに遅れる旨のメッセージを送る。


「……んん」


「……兄さん……っん」


 停留所の小屋に先客がいた事に今気付いた。しかもレイが居るというのに全く気にせずにイチャついている。

 何だか気まずいので別の場所で雨宿りをしようとその場を後にしようと外に向かおうとした。

 すると何故か鉛のように身体が動かなくなった。


「……ふふふ」


 不気味な笑い声がすぐ後ろから聞こえた後、レイの意識はそこで途切れてしまった。


 ―――


「レイ、遅いな…」


「どこ行ったのかな……?」


 各々が休日を満喫していた所、ライ厶からレイと連絡がつかないとメッセージが来たので心配になった倭達は皆でレイを探すことになった。


 レイが雨宿りをすると言っていたバスの停留所付近に行くも姿はなく、電話を掛けるが留守番電話になるだけだった。

 一応何かあったら不安なのでラヴィッチとナイチにも同行してもらっている。


「……予想は的中だな」


「レイっち!!」


 ナイチが何かを察した先にレイの姿があった。しかし、彼女は見知らぬ男性に担がれている。意識がないのか微動だにしない。

 傍には別の女性もいて、倭達の姿を見て自慢気にほくそ笑んだ。


「はじめまして。あー、そっちのお二人さんは私達のこと知ってると思うけど」


「……え、てことは、アリーシャ隊なの……?あーくん、ナイチ君……」


「……琴吹 明日香(ことぶき あすか)と、その兄の琴吹 響(ことぶき きょう)


「アリーシャ隊の一員だよ…」


「気安く呼ばないでちょうだい。私の名前を呼ぶのは兄さんだけでいいのよ」


 ナイチが紹介するように名前を呼んだ、明日香という人は隣の響という人物の妹のようだ。

 ベージュの腰まである長髪にセーラー服。見覚えのある制服の為、恐らく彼女は中学生だと判断することが出来た。

 そしてその隣の男性は明日香と同じ髪色で耳が隠れる位の髪の長さで妹より背はかなり高いが大人しそうで弱々しい印象である。彼も中学生なのだろうか。下は制服のズボンにブラウスしか羽織っていない為そこまで分析は出来なかった。

 二人に共通しているのは左の目の下にある泣きぼくろと、恐怖を覚えそうな位の真っ黒な瞳。

 大袈裟に言っているわけではないが、瞳にハイライトが一切無いのだ。


 しかしこうして姿を現したということは、戦闘が始まるということだ。響という人に肩から担がれているレイを取り戻す為にも武力行使で戦わなければならない。


「血を抜かれてしまう前にレイ先輩を取り返そう…ライムちゃん!」


「あぁ……!」


 二人が戦闘服に変身したが、それを見て響はそういえばとぼんやり何かを思い出して倭達に話しかける。


「この人は返すよ、もう用ないし…。血なら抜いてサラン様に届けて来たからね」


「ッ!?!?」


 一同が驚愕した。もうそこまで手が回っていたとは思っていなかったからだ。最悪の展開になってしまった。


「あとはそこの二人の女を殺せばいいだけね」


 明日香が上機嫌に響に微笑み、響は躊躇いもなくレイをこちら側に投げ飛ばした。


「レイ嬢……!!」


 鎖椰苛が受け止めようとするも重みで一緒に倒れ込んだ。とりあえず避難させようと倭と茜と鎖椰苛はレイを離れた場所に連れて行きベンチがあったのでそこに横たわらせた。


「クロ達は後ろでレイを頼む……!」


 ライ厶と緑が戦闘態勢に入る。その後ろでラヴィッチとナイチも自分の武器を構えた。


「所であの二人はどんな戦い方をするの……?」


「……それが、僕達みたいに鍛錬している所を一度も見たことがないんだ」


「何の武器を使うのかも知らないが、気をつけろ」


 レイをあのような状態にさせられる程の力の持ち主なのは間違いない。人数的にはこちらの方が有利だがどうなるか油断ができない。


「さて……どう相手しようかしらね兄さん」


「んー、そうだなぁ……あれ、やろう?あす……」


 僅かな小さな声で話しながら二人は頷き合っていた。

 そして何故か突然…キスを交わしだした。

 その謎の行動に拍子抜けしてしまい引いてしまっているライ厶達。


「おいおい……何やってんだアイツら……」


 鎖椰苛が代弁して言うが二人は気にせず唇を触れ合わせるだけのキスをし続けている。

 明日香さんが意味深に微笑むとその直後に真上から柵のような物が倭達含め一人一人を取り囲むように落下してきた。


「なっ……!?」


 全く動くことが出来ず、倭も抜け出そうと力いっぱい柵を握ってこじ開けようとするがビクともしない。

 ラヴィッチ達も各々の武器で柵を壊そうとするがやはり頑丈な柵はビクともしなかった。


「クソ……!!卑怯だぞ……!」


「何が卑怯なのよ、ぶっ殺すんだからどんな事をしてもいいでしょナイチ君」


 明日香が柵に囚われているナイチの目の前に立つ。ナイチが咄嗟に己の武器を構えるが明日香は制服のスカートのポケットから短刀を取り出し銃弾が放たれるギリギリのタイミングで彼の手目掛けてそれを突き刺し銃を弾き飛ばした。ナイチの手の甲は切れて血が滴っていた。


「あ……レイさん……封じ込めるの忘れてた」


 響が倭のすぐ目の前に野放しに横たわっているレイを見やる。


「!……レイちゃん……っ!!!起きて……!!!」


 とてつもなく嫌な予感がして、彼女を起こそうと叫ぶが声は届かない。手を伸ばせばすぐに触れられる距離にいるのに、柵が邪魔をする。


「琴吹明日香なりに殺ってもいいよ」


 響が明日香に指示をし、軽やかな足取りでレイに近付く。短刀を握りしめながら。


「やめろ……!!!」


「レイっち起きて!!!早く逃げて!!!」


 皆の声を無視して明日香はレイの上に跨って座る。それでもやはりレイは目覚ることなく瞼は閉じられたままだ。


「そういえばラヴィッチ君の時もこの人ずっと気絶してたわね」


 短刀を不気味な程艶めかしくチラつかせ、貴女の悲鳴を聞かせてくれるかしらと低い声で囁くと刃をレイの腹部に突き刺した。


「っあぁあ、ゔ……ァァあああ……ッ!!!!」


「レイ……ッ!!!!」


「ふふっ、いい悲鳴……もっと聞かせて……ッ!!」


「ぃやぁあああ、ああぁあ……ッ!!!!」


 短刀を刺しながらグリグリと抉るように捩じ込ませレイの腹部から止めどなく血が溢れる。グシャグシャというグロテスクな音に気持ち悪くなり倭はその場にへたり込んでしまった。


「さぁ、僕は緑ちゃんから殺そうかな」


 明日香に気を取られていたが気づかぬうちに響は緑の傍にいた。彼は今の所武器も何も持っていないがどのように戦うのだろうか。

 緑は焦りながら魔法を唱える為の本を開き、パラパラとめくっていく。

 柵の隙間から響が腕を入れて緑の手首を思い切り掴みあげる。その拍子に本が手から滑り落ち、適当なページを開きながら彼女の足元に落下した。


 するとその本が光りだし、辺り一面にユリの花が咲き誇った。思わず綺麗と口に出しかけるがライ厶の焦燥した声でハッと我に返る。


「その術は……まずい!!!」


 この術の内容を知っているのか駄目だと叫んだライ厶は次にラヴィッチとナイチの名前を呼んだ。


「お前達はクロとゆうと鎖椰を守れ!!!」


「えぇ!?この状態でどうやって!ていうか何が起こるの!?」


「とりあえずなんとかしろ!!!」


「よく分からんがどうとでもなれ……!!」


 そうこうしている内に周りが真っ白になり花びらが宙を舞い何も見えなくなった。倭達を縛っていた柵がピシッとヒビ割れる音がして崩れて行った。

 そしてズシャズシャと切り裂かれる音と共に琴吹兄妹の叫び声が聞こえた。


「うわぁああぁああ……ッ!!!!」


「ぃやぁああああぁあ……ッ!!!!」


 何が起こっているのかは視界が明るく真っ白になっているせいで見ることが出来ない。倭は不安で怯えていると誰かが自分を庇うように抱き締めている事に気付いた。

 この爽やかな香りは…ラヴィッチだ。


 次第に視界が穏やかになっていき状況を確認することが可能になり、倭はラヴィッチに抱き締められていたことを改めて再確認した。

 といっても片腕で倭を抱き、もう片方の腕で剣を盾にするように背中に掲げていただけなのだが。


「在原ちゃん……」


「怪我はないね?」


 どうやら緑の発動してしまった術は敵仲間関係なく切り刻んでしまう物のようでラヴィッチが倭を守ってくれたようだ。しかし無傷では守りきれなかったみたいで彼の身体は複数の切り傷を負っていた。

 彼は真っ先に自分を助けてくれた。何も出来なくて申し訳ないが、とても嬉しかった。


 他の人は大丈夫だったのかすぐに確認する。

 茜と鎖椰苛は、ナイチに守られていたようだ。だけど彼は先程武器を弾き飛ばされていた為、丸腰の素手だけで二人を庇ったからか当然身体はボロボロの血塗れ状態だった。


「な、ナイチはん大丈夫なん!?」


「……くっ……、余計な心配を、するな……」


「ナイチ……守ってくれて…助かった……」


 彼が守らなかったら茜と鎖椰苛は、もっと酷い状態になっていたと思うと身体が震えた。

 それは、倭自身も同じだ。ラヴィッチが守ってくれなければ確実に死んでいた。二人に感謝しなければならない。


「……そういえばレイちゃんは!?」


 野放しになっているレイはどうなったのか。緑に聞くとライ厶の方を指さした。

 そこにはレイをお姫様抱っこのように抱きかかえているライ厶が立っていた。

 とても絵になる光景だが彼女はかなり汗だくになっている。


「我がレイをこちらに転移させる術をかけたから無事だ」


「ライ、術が使えたのか」


「ふ、まぁ一応魔術師だから使えないことはないが……あまり得意ではなくてな」


「だからそんな汗だくなんや」


 どうやら武術の方が得意みたいで普段魔術を使うことはほぼ無かったようだ。それはいつも見ているからわかってはいたが。だから緑の術が発動された時一人で守りきれる自信が無かったからラヴィッチ達に助け舟を求めたのか。


「……兄さん」


「!?」


 かなりの傷と大量出血でてっきりもう倒されて死んでいたと思っていたが琴吹兄妹は生きていた。完全に勝った雰囲気になっていたので全員が二人の様子を見た。

 二人は血が混じった涙を流しながら見つめ合い何かを話している。


「兄さん…血の味しかしないわ……」


「そうだね……自分の血の味……美味しくない……」


「兄さんの血なら……いくらでも啜れるわ……交換しましょ?」


「うん……」


 そんな気味の悪いやり取りをしながら性懲りも無く再び唇を交わしだした。


「んな!?またやんのかてめぇら!!」


 ―――


「彼ら、よくやったわね。とりあえず一人、血を届けに来てくれたし」


 サラン様がモニターに映る琴吹兄妹の戦う姿を眺めながら嬉しそうに()に話す。彼女にお褒めいただける等羨ましいことこの上なく、悔しいが彼らに嫉妬してしまいつい悪態をつく。矛先を変えて。


「えぇ、よくやりますよ。ナイチ・コーストらとは大違いです」


「そういうこと言わないのっ」


 仲間が二人も出ていったというのにサラン様は相変わらず能天気だ。

 私自身、サラン様以外は誰も仲間だとは思ったことはないが。


「サラン様~!」


 振り返るとハーモニー(機械人形)がこの場の雰囲気にそぐわない程の腑抜けた高い声でサラン様を呼び、()()()()()


「ついに持ってきてくれたのね」


「はい~!大量保存できるようにこちらの大きな容器に血を……あっ!」


 機械人形は小柄な自分より少し小さめのガラスの容器に血液を入れてそれを両腕で抱えながらこちらへ持ってきたが、バランスを崩して転倒しその容器は無造作に床に放り投げられ音を立てて大破した。


 ―――


 琴吹兄妹は先程よりも深いキスをしている。場所も弁えず愛を深め合っている二人を傍から見て一同はドン引きしていた。

 頭から流れ出た血を指で拭ってそれを互いの唇に擦り付け舐め合っている。狂っている、と率直に思った。


 すると突然身体が動かなくなってしまった。今更気付いたが、あの二人がキスをすると何か術が発動するらしい。先程柵が落ちてきたように今度は身体の動きを封じる術のようだ。


「あんまり…体力無いんだけどな……僕」


 気だるげにそう呟いた響は明日香から離れると片腕に術を灯し炎のように燃え上がらせライ厶と緑に向かって殴りかかるように飛び付いた。


「っぐぅ……!!」


「きゃぁあ……っ!」


 予想外の瞬発力に防御出来なかった二人は無防備に攻撃をそのまま食らってしまう。緑の術をもろに食らってフラフラのはずなのにあんなに速く動けるとは驚きだ。


「あー、軽く当たっただけかぁ」


「……軽く、だと……」


「その状態じゃ次当たったら死んじゃうかもね」


 身体が動けないこの状況で今の攻撃を受けたら…。

 それも彼は軽く当たっただけかと言った。今のでさえライ厶達の腹部から血を溢れさせているというのに次に当てられたら生死に関わってくる。


 だがそれは琴吹兄妹も同じだ。

 頭からはとめどなく血が流れ、制服も所々破け皮膚が切れて血を溢れさせている。現に明日香は限界が近いのかふらついていて動きが鈍い。文字通り血の気がない。


「にぃ、さん……」


 明日香はぎゅっと後ろから響を抱き締めると、弱々しく言葉を紡ぐ。


「私の…代わりに、生きて」


「あす……?」


 そう言って響を思い切り突き飛ばした直後、明日香の背後から飛んできた()()()が大きく爆発しその攻撃をもろに受け、力なく倒れた。


 明日香の背後には、出血している腹部を押さえながら苦しそうに微笑むレイがいた。


「レイちゃん!!」


「わ、たくしの……存在を…忘れ、ないでほしい、わ……」


「レイ……!生きてて良かった……」


 いつの間にか身体が動けるようになっていたのでレイに近寄りお互いを労りあった。いつから目覚めていたのかは分からないが攻撃するタイミングを見計らっていたのだろう。


「あす…!!!」


 響が大きな声で叫び、仰向けに倒れている明日香の元に駆け付け抱き上げた。見るに堪えない程の損傷で明日香は喋るのも辛いのか途切れ途切れで会話をする。


「どうして僕なんか庇ったの……」


「そん、なの……にぃ、さんを…愛し、てるから……に……決まってる、じゃない……。…兄さんの、ためなら……死んでも、かわま、ない……わ……」


「だったら……僕だって一緒に死にたいよ……!!」


 よく見れば明日香の瞳に僅かながらハイライトがあることに気付いた。人間味があるように見えて、先程まで狂ったような発言や行動ばかりだったのに今では普通の女の子にしか見えない。


「ダメよ……兄さんは、私の……分、まで……生きて」


「…でも……っ!!!」


「もう……お兄ちゃん……でしょ?わたし、だけの……」


「……!!」


 明日香がそう説得するように言うと、響がハッとし瞳にハイライトが灯され我に返った。大粒の涙は流れ続けているが、吹っ切れたようで腕で拭いながら静かに笑っていた。


「あす……僕、頑張るよ……お兄ちゃんだからね」


 そう言うと明日香は目を閉じ動かなくなった。響はゆっくりとこちらを振り返った。

 一瞬再び戦いが始まるのではと身体を強ばらせたがその心配はないと確信する。


「僕達…負けを認めるよ……サラン様を、止めるのに……協力する……あすの、ために……っ、僕に出来る、事……なら、なんでも……するから…」


 号泣しながら倭達に向かって降伏する響につられて涙が出てしまった。明日香の言葉は響いたようだ。

 とりあえず響も仲間になってくれるというので受け入れて歓迎した。


「所で響君達ってどうしてアリーシャ隊に入ったの?」


 お互いの怪我の手当てを終えて帰路につこうとした所で疑問に思ったことを尋ねてみた。


「僕達の両親は亡くなっていて、ずっとあすと二人で暮らしていたんだけど、ある日突然家にサラン様が現れて…居場所を与えてあげるから私に協力してって言われたんだっけ」


 幼い二人が暮らし続けるのは苦しくなる一方だから、住処を提供する代わりに自分の目的の為に協力を求めたという事のようだ。術も、元から能力があった訳ではなくてサランが魔術で覚えさせたらしい。


「まぁとりあえず、サランを何とかやっつけて、明日香っちを安心させなあかんでっ!きょん!」


「きょん……?」


 茜が明るく響に謎のアダ名を付けながら笑いかける。

 また一人、とはいえ一人は戦死してしまったが仲間が増えた事は非常に心強い。

 歩いていると響だけ違う道に行こうとしていたので鎖椰苛が引き止めた。


「あ?お前どこ行くんだよ」


「え?僕の家こっちだから……」


「あ、そっか、アリーシャ隊の住処に住んでただけで家はあるんだもんね。というかナイチ君ってどこに住んでるの?」


「なっ!?誰も適当な家の屋根の上で寝てるなんて言ってないぞ!?」


「……自爆してるわよ?」


 思えば確かにラヴィッチは倭の家で暮らしているがナイチの所在は分からなかった。というか何も言ってくれれば何かしら場所を提供出来たというのに、母親なら難なく許可するだろうと倭は思う。


「ごめんナイチ……それは悲しすぎるよ」


「同情などいらぬ!ラヴィッチ!」


「あ!そうだ!ナイチ君、僕の家においでよ」


「き、貴様!!そ、そういうのは高校生に……いや、成人してから言うんだな!!!」


 響がそう言ってニコニコ微笑むと何故かナイチが顔を赤くし一人で慌てふためいている。今の発言でわかったが響もどうやら中学生のようだ。


「?……よく分かんないけど、あすが居なくなったから寂しくて……ナイチ君がいてくれると助かるんだけど」


「そ、そういうことか……ならばいいぞ」


「ありがとう!」


 今日はそれぞれ解散して、身体を休めることに専念した。


 ―――


 大破したガラスの容器から血が飛び散り、私やサラン様の顔や服に付着した。


「あああ、あの……すみませ……」


 機械人形はそのまま倒れ込み、この世が終わったかのような絶望の表情をしているが構わず私は奴に近付いて怒りで腹部を思い切り蹴り上げた。


「出来損ないの機械人形が!!心から謝れ……!!」


「きゃぁ……っ!も、申し訳……ございません……!」


 私はこの機械人形が嫌いだ。()()()()()()()()()()()()()看護ロボットなのだがドン臭く、馴れ馴れしくサラン様に近付くのが気に食わない。

 そしてせっかく琴吹兄妹が入手した魔術師の血も、奴の手際の悪さでぱあだ。考えれば考える程腹立たしくなり圧をかけるように腹部を踏み付ける。


「やめなさい、()()()


「…っ、ですが……!」


「…貴方は次、行けるわね?」


「……!」


 ここで私に次を任せることになるとは、サラン様も相当焦っているという事だ。私を頼りにしている事が嬉しくて自然とニヤリと笑みを浮かべながら彼女の前で跪いて頭を下げる。


「任せて下さい。愛するサラン様の為ならば」


「……ありがとう、頼むわよ」


 サラン様は顔の上半分が仮面で見えない。しかしその謎めいた美しさに惹かれ魅力され傍に付かせてもらっている。

 自分の()()()()()()()()にそっと手を当てた。

 サラン様を絶対に喜ばせてみせる。そう心で誓って部屋を後にした。



響が仲間になった!


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