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10月30日

 

「ここは……」


「アリーシャ隊の館の大広間だ」


 ラヴィッチ達に連れられサランがいる館へと足を運ぶ。

 薄暗くぼんやりと照明がついているだけの館内をまるで旅行者のようにキョロキョロ見てしまう。


 ナイチ曰くここは大広間だそうで、入口から真っ直ぐ進んだところに広い大きな階段がありその上に玉座のような立派な椅子が置かれていた。


 ここでラヴィッチ達は暮らしていた。亡くなった人たちも皆。

 きっと全員が暮らしていた時はもっと明るい館内だったとは思うが、どんな生活をしていたのか今となっては知る由もない。


「暗い……」


「ここで最後の戦いが始まるのね」


「あぁ、油断するなよ皆」


 緑達が緊迫した空気の中、息を飲む。

 倭含め茜や鎖椰苛は、ハーモニーに見守られながら皆の後方で控えている。

 どこからサランが来るのか、静かすぎて居ないのではないかと錯覚してしまいそうだ。


「いらっしゃい、私の敵(みんな)


「!?!?」


 階段を登った先の頂上がパッと明るくなった。急に眩しくなり目を細める。


「……あの人が……」


「サラン……」


「サラン様……」


 椅子の前ですらりと立っている女性。

 透き通るような金色の髪の毛をツインテールでさらりと上品に伸ばしている。

 服装は胸の谷間が強調され肩や腹部があらわになり、下もミニスカートでモデルのような長い脚を見せつけていて、かなり存在感がある格好をしていた。


 そして皆が話していた通り、顔の上半分を仮面で隠していた。


「……ふふ」


 見た目だけでは全く年齢が分からない。だが自分より上だろうと確信はしていた。

 サランは微笑みながら倭達を上から見下ろしている。

 何ともオーラが凄いのだ。圧倒されてしまいそうで足が竦む。


「アンタがボスやな!おばさん!あと服エロいで!」


「そうよ、私がボスよ」


 茜がこの場に似つかわしくない声音とテンションでズバッと失礼な事を口走るがサランは全く気にならないのか余裕の笑みを浮かべている。

 しかし段々彼女の口がへの字に曲がっていきその場にしゃがみこんでしまった。


「…………おばさんって…………やっぱりちょっと凹むわ……」


 落ち込みながら床に指でくるくる何かを書いていた。

 本題に入るべくレイが一歩前に出て話し出した。


「サラン……今ここで降伏することはできないのかしら?」


「……一対十三……これってどこのヤンキードラマって感じよね」


 そう物思いにふけると今度はラヴィッチや響らアリーシャ隊の方を見てご丁寧にお辞儀をした。


「アリーシャ隊のみんな、私に従ってくれてありがとう」


「……降りるんすか?」


 タルクが聞いた直後に足元から大きな地鳴りが起こりバランスを崩しかけてしまう。


「ううん。私はどうしても目的を果たしたい……!!!だから行くわよ……!!!」


 サランはいつの間にか武器の長いステッキを持ち、上に掲げるとその先端から魔力のようなものがゴオオオと音を立てながら出現し肥大する。


「……やらせっかよ!!!」


 鎖椰苛が咄嗟に自分のナイフをサランに向けて投げつけた。命中率がいいのか真っ直ぐにサランの顔面目掛け飛んでいき、当たったかと思ったが…。


「目が見えてないと思ったら大間違いよ?」


「っな……」


 サランは指だけで飛んできたナイフを挟めるようにキャッチしブラブラと揺らしていた。ステッキは持ったままで。

 そしてそのナイフをこちらに向けて投げ返す。


「ついでに食らいなさい」


 ステッキを下に振りかざすと強大な魔力が倭達を押しつぶすかのように落下してきた。


「倭ちゃん達……危ない……!!」


「みどりん……!」


 緑が、倭と茜と鎖椰苛とハーモニーを守るために術を唱えてバリアを張って守ってくれた。

 他の皆もそれぞれの武器や術で身を守っていたがやはり強力な魔力だからか完全には防ぎきれていなかった。


 序盤からこんな強い魔力を披露されては後が怖い。

 どうすればと考えているとレイがサランにあら?と声をかけた。


「サラン、貴女の後ろにゴキブリが……」


「ッ!?!?ゴキブリだけは嫌なのよぉおおおおおお!!!!!」


 そう言って背後の壁をカサカサ歩いていたゴキブリに向かって魔術を唱えて爆発させてしまった。

 そして隙が出来た所でレイがカードを投げて同じように爆発を起こし炎を舞い上がらせた。


()()()()に引っかかったな…!大の虫嫌いだと聞いていたから効果は抜群だ……なぁ!!!」


「っぐぁ……!!!」


 即座にライ厶が階段の先にいるサランの元まで飛ぶと、思い切り回し蹴りをして倭達と同じ地に突き落とす。

 二人の連携プレーは相変わらず流石だ。


「鈍臭い年増だと思ったらタダじゃおかないわよ!!!」


 サランはライ厶に蹴られた腰をさすりながら立ち上がるとステッキで一度地面を突っついた。


「っく……三回目……!!?っぐぅ……!!」


 するとライ厶の足元から蔦が伸び素早く身体を締め付けて動きを封じた。

 ライムはやたらと敵に縛られる事が多い。

 さすがに本人も自覚しているのか縛られながら、またかと舌打ちしていた。

 そのまま宙に浮かび縛られたまま地面に思い切り叩きつけられてしまう。


「……僕達も、覚悟を決めないと……」


「……っ」


 あれだけ前夜の時は必ず止めると意気込んでいたが、やはり本人目の前にしてしまうと怖気付いてしまうのだろう。

 それはそうだ。サランは自分達を育ててくれた親代わりの存在なのだから。

 ナイチは銃口をサランに向けて構える。

 しかし気持ちが瞑想しているのか手が震えてしまっている事に気付いた。


「……ぃた……っ!」


 覚悟を決め、トリガーを引くと銃弾はサランの右上腕を掠めた。銃弾が当たっても痛い!だけで済む辺りやはり強い。


「ナイチ、立派になったわね」


「……えぇ、俺は貴女を止めるためにトリガーを引きます……!!!」


 ナイチが銃を連射し、銃弾を四方八方に舞い上がらせてサランに向かって集中攻撃した。


「悪いけどそのまんま返すわよ!」


「……!」


 しかしサランはそれをステッキ一本だけで薙ぎ払うと全てナイチの元に勢いよく戻ってきてしまった。

 ナイチは間一髪の所で飛んで避けたが戻ってきた銃弾は壁を貫き穴を開けていた。


「……えぇい!!!」


「肉弾戦ね、響」


 次に響がサランを拳で殴り付けた。それは当たらずサランに腕を掴まれてしまい、どうしようと一人で焦っていた響だったが次の瞬間思い切り頭突きをした。

 サランが頭上にヒヨコをぴよぴよと浮かばせている隙に響は腕に術をかけもう一度サランを殴りダメージを与えた。


「明日香を亡くしたのに……一丁前に強くなったのね。嬉しいわ……!」


「あすのためにも僕は貴女を止めるよ…!」


「そう…!止めてみせなさい!」


 そう言ってステッキから魔力で作られたまるで火の玉のようなものが数個浮かび上がり響に向かって飛んでいく。


「おらぁあッ!!!」


「!」


 それを響の目前でタルクが刀を振り打ち消し、シュウウウと音を立て煙となって消滅した。


「タルク、勝負よ。かかって来なさい」


 サランはステッキを刀のように持ち替えるとそれが刃のように鋭利な形に変形した。


「刀勝負ッスね……相手になりますよ……!!!」


 カキンと互いの刃を交じらせ二人が力いっぱいに武器を振る。タルクが一生懸命サランに攻撃を与えようとするが彼の攻撃パターンを熟知しているのか全てステッキでガードされてしまう。


「だったら僕も……加勢するよ……!どうせ剣だしね……!!」


「ラヴィ、やるようになったわね……!」


 ラヴィッチがタルクの刀より大きな剣でサランを斬る。

 さすがにガードした時の重みが違うのか一瞬怯むとタルクがその隙に後ろから斬りつけた。

 カウンターでサランが振り返りタルクに向かって鋭いステッキで薙ぎ払うがバク転をしながら避けていた。


「サラン様、よそ見厳禁ですよ……はぁあっ!!!」


「きゃあぁっ……ッ!!!」


 タルクに気を取られた隙を逃さずにラヴィッチが剣に術を憑依させ思い切り斬る。それは見事命中しサランの腹部を切り裂いた。


「私も……行かせてもらいます……サラン様!!」


「白妬……!」


 白妬が複数のナイフをサランに向けて投げ飛ばすとそれが真上でサランを取り囲むように宙で止まり、一気に落下し突き刺さる。


「相変わらず容赦ないわね……!」


 それでもサランは怯むことなく白妬に術を飛ばして反撃していた。


「…………」


 そして彼らが戦う様子を一人離れた所で立ち尽くしながら見ている人物がいた。

 コークだ。彼は倭達の仲間になると言っていたがやはり最愛の相手だからか躊躇って動けない状態になっている。あの戦闘の時とは大違いの態度だ。


「サラン…様……」


「いいのよコーク!!!」


「っ!!」


 不意にサランに名前を叫ばれ、動揺しているのが分かった。サランもコークと戦うことを覚悟しているようだ。


「コーク、辛いのは僕達だって同じだよ……!!」


「戦わないと……サラン様を助けられねぇんだぞ!!!」


 響とタルクが戦いながらコークに向かって説得しようと叫んだ。

 しかし彼は武器である鞭を握り締めたまま震えていた。


「止める気がないのなら貴様一人で帰れ」


「……っ!!」


 いつの間にか近くにいたナイチがコークの頬を思い切り叩いた。

 反動でコークの身体がよろめく。


「……よく分からんが揉めてるなら我らがサランを止めるぞ」


 ライ厶が気を遣うように言い放つと、サランに華麗な武術をお見舞する。

 それを横目で見ながらナイチは先越されるぞと呆れた表情をして戦闘に戻って行った。


「あー、ごめんね?ナイチがビンタなんてして。でも今回ばかりは彼に同感かな!君は来てくれるって信じてるよ!」


 ラヴィッチもコークを気遣うように言うとすぐにサランの方へ出戻り剣を振る舞う。


「コーク……サラン様を連れて帰るのが私達の目的だ。貴様にも協力してもらわなければ敵わない。必ず来いよ」


 白妬がコークの両肩を掴み、言い聞かせるようにそう伝えるとナイフを持って皆の元へ走って行った。


「……お前ら」


 叩かれた頬を押さえながらコークは一人呟く。動かないあたり、どうやらまだ葛藤しているようだった。


「行くわよ……っ!!」


 サランがステッキを光らせるとそこから水が細く滝のような勢いで流れ出た。


「……!」


 それはラヴィッチに向かって襲いかかってきたが軽快なステップで免れる。


「おっと!」


「え……?弾くんじゃねぇのかよぉおおおごふぉおああ!!!」


 しかしその後ろにいたタルクは、まさかラヴィッチが避けるとは思ってなかったようで不意をつかれて水流に飲まれてしまった。


「ごめんごめんっと!」


 ラヴィッチが適当に謝るとサランに剣を振り下ろした。しかしステッキで防御されてしまうがサランの両手が塞がったのを好機にラヴィッチはブーツの底で彼女の腹を擦る様に蹴り上げた。


「っぐ……めちゃくちゃ痛いと思ったら……やるわねラヴィ」


 よく見るとラヴィッチのブーツの底に鋭い刃が歯車のように備え付けられていた。道理で蹴っただけで切り傷が出来ている訳だ。

 そんな恐ろしい武器を靴の底に装備しているとは驚きである。


「でも、まだまだよ……!!」


「うわぁぁぁっ!!!」


 サランがステッキを握ると再び建物を揺らしながら地鳴りを起こし倭達含め全体に炎弾が降り注ぐ。

 緑が倭や茜、鎖椰苛をずっとバリアを張って守ってくれているが、威力が桁違いなのか脂汗をかいていた。バリアにもヒビが入って今にも割れそうだ。


 そこで倭はある事を思い出し白妬に声をかけた。


「白妬、私と戦った時の五感を奪うやつ……サランにも効く?」


「……!やってみる価値はあるな」


 白妬はそう頷いてサランの目の前に立つと瞳の色を変えた。倭はあれにやられて徐々に五感を失って行った。

 サランにも効けばこちらが優勢になるのだが、と考えている間に何故か白妬の口の端から血が溢れた。


「残念。私には効かないわ」


「……ッ!?」


「白妬!!!」


 その直後にザシュッという痛々しい音がし、白妬は胸元や腹部から大量の血を溢れさせうつ伏せに倒れてしまった。

 白妬は何が起こったのか訳が分からないといった表情をしている。


「白妬様~!今すぐ回復しますね~!」


 すぐさまハーモニーが駆けつけてくれ寝たままの白妬に手をかざして治療魔法をかける。


「白妬さんのあの攻撃が効かないってことは……レイ先輩」


「えぇ、わかってるわ。()()ね」


 恐らく白妬の変化した瞳と目が合わない限り五感を奪う対象にはならないようだ。一か八かで行けるかと試みたがやはりあの仮面を挟んでいると効果は無いみたいで厄介だ。


 レイが一枚のカードを投げるとそれは弧を描きサランの仮面目がけて飛んでいき綺麗に傷を付けた。

 しかし完全に傷が入った訳ではなく剥がれることは無かった。


「んもおおおお!!!全員まとめて行くわよ……!!」


「……っ!?なんやこれ!!」


 傷を入れられた事に腹を立てたサランは両手を広げると、視界が突然真っ暗になり身動きが取れなくなった。

 するとズシャアアッという何かに切り刻まれるような音が聞こえてライ厶達の叫び声が木霊した。


「だめ……持たない……っきゃあぁああっ!!!」


「ぃやあぁああぁあッ!!!」


 緑が暗闇の中でもバリアを作ってくれていたようだがついに限界が来たようでガラスのように割れる音がして破壊された。

 サランの攻撃をバリアが消えたことにより倭達一般人も食らってしまい、あまりの激痛にリーダーとしての強さを実感した。

 倭は堪えきれず片膝をついて傷を押さえた。

 パッと辺りが明るくなったが全員がその場に倒れていた。


「ふふ……これで魔術師三人の血を集めれば……」


「……っ、サラン……お前の、目的は……なんだ……」


 上機嫌でこちらに近付いてくるサランにライ厶が苦しそうに問いかける。身体が動かないのを分かっているからか案外すんなりと理由を口にしてくれた。


「私は小さい頃から周りに可愛い可愛い言われて育ったわ。自分の顔の綺麗さが自慢だった。でもある時、私は顔に消えない傷を負った。それは……私の父に付けられたのよ。魔術に失敗して、父の姿を目の前で見ていただけの何の罪もない私に取り返しのつかない傷を負わせたのよ」


 サランは自分の容姿に絶対的自信を持っていたようだ。

 非常に羨ましい事だが、だからこそプライドが高く顔に傷が付けられた事にこれ以上ない程の怒りを覚えたらしい。


「だけどすぐに両親は私の元から居なくなったの。きっと逃げたのよ、私がこうして仮面を付けて閉じこもってしまったから……」


「……それと、魔術師の血を…集めるのは何が関係ある、のかしら……」


「……復讐よ。強い魔術師の血を集めて私に絶対服従の人材を作り上げる。そして両親を探し出してこの手で殺す……」


 サランの目的をようやく聞くことが出来たがやはり賛同は出来ない内容だった。自分の顔を傷付けられた事を許せないのは分かるが、復讐となると話は別だ。


「ん?ちょいまち……ライっち達は父親がいない魔術師だから狙われてたやん……?それは何か関係あったんか?」


 茜に指摘されて思い出す。ライ厶も緑もレイも偶然にも父親が居ない。

 確か父親が居ない魔術師の血は珍しいとラヴィッチが当初口にしていた。


「……あー、それはぶっちゃけなにも関係ないわ。強い魔術師を探していたら貴女達が上がってきて、調べたら本当に偶然父親がいない共通点があったってだけ。そうやって言うと面白くなるかなって」


「面白いって……」


 父親が居ない事をバラされて、以前緑は泣いて激怒していた。それを面白いからという理由でピックアップして血を集めるようにアリーシャ隊に命令していたとはとても許し難い。


「とりあえず確実に仕留めたいから、最後に行くわよ……!!!」


 サランが先程と同じ魔術を発動した。途端に目の前が暗くなり地響きが鳴る。

 まずい。誰も動けない状態でやられては魔術師だけでなく全員が瀕死になってしまう。


「今度こそやべぇぞ……!!」


「くそ……身体が動けば……ッ」


 皆が必死に抵抗する。緑のバリアも破壊されてしまったし防御するものがない。


「このままじゃ私達――」


 焦燥していると突然何かを弾くような音がし、それと同時に暗闇が引いた。

 その音は、()()()()()()()()だった。


「……目を覚ましてください…………サラン様」


「……コー、ク……」


 間一髪の所でコークがサランに鞭を振ってくれたお陰で命を救われた。彼はやはり覚悟を決めて来てくれた。

 表情は相変わらず淀んでいるが、目はしっかりと自分の意思を持った色をしていた。


 そしてサランに鞭を当てたことにより仮面が割れ、彼女の足元に音を立てて落ちた。


「あれが……サランの素顔……」


 彼女の右瞼から頬にかけて縦に三日月のような傷が大きく入っていた。

 しかしその傷が付いていても女性らしい大人びた顔つきに思わず綺麗と口にしてしまった。

 最愛のコークについに攻撃されたことに少し動揺の表情を見せ、一瞬泣きそうに瞳を潤ませていたがすぐに微笑んだ。


「そういえば……コークの目を見るの初めてね」


「!!」


 そう笑ってサランが言うとコークは咄嗟に顔を下に向け俯いた。どうして隠すのとサランが優しく聞く。


「……私は、貴女を裏切りました……顔を見られる資格もない……」


「いいのよ……ちゃんと見せて」


 サランはコークの頬に手を添えて顔を上げさせる。

 お互い見つめ合って照れ臭そうにはにかんでいた。

 それを白妬が羨ましそうな顔で眺めていたが今はそれ所ではない。


「貴女はとても綺麗です、サラン様…」


「ありが――」


 サランがありがとうとお礼を言おうとした所で館内が揺れだし壁が崩れ物が落ちて崩壊し始めた。

 このままここに居ては命がない。

 タルクと響がサランに呼びかける。


「帰ろーぜ!!サラン様!!」


「やり直そう……?みんなで……!」


「……私は、残るわ」


 サランは静かにそう答えた。何となくそう答えると思っていたが必死に皆が説得する。


「何故ですか!早くしないとこの館は……!!!」


「私には生きる価値なんてない……!今更更生したって、私のせいで死んでいった仲間に申し訳が立たないのよ……!!貴方達にも酷いことをしたし……!!」


 サランは自分がした事で皆を巻き込んでしまったのを申し訳なく思い戻れないと言っていた。

 確かに亡くなってしまったアリーシャ隊の人達もいるし、ラヴィッチ達だって瀕死になるまで戦わされた。

 やってきたことは決して許される事ではないが、まだ間に合う。


「私達はサラン様を連れ戻す為に来たんです……!帰りましょう!!」


「嫌よ……!!もう無理よ……!!」


 白妬も説得を試みるが取り乱して聞いてはくれない。

 そうこうしている内にも建物が崩壊を進めている。早くしなければ本当に瓦礫に巻き込まれてしまう。


「お願いです、サラン様。私達と共に同じ場所に帰りましょう」


「コーク……みんなも、もういいのよ……早く逃げて……っ!!!」


 埒が明かない。強引にでも取り押さえて連れていくべきなのか。必死に試行錯誤していると予想外の人物がサランの前に出た。


「あたしに任せて」


「……みど、りん?」


「あたしが、サランを説得させるから」


 その後ろ姿は、いつものほんわかとした彼女には見えずどうしてか別人に見えてしまった。

 説得すると言うがどんなにコーク達が声をかけても聞いてくれないのに絶対に叶わないと思った。


「やだ……っ、やだよみどりん……!」


「絶対帰ってくるから、早く行って!」


「……帰ってこいよ、緑!!」


「絶対やで、みーたん……!やまピー行くで……!」


「みどりぃいいいいん……っ!!!!!」


 鎖椰苛達に連れられ出入口まで走らされ強制的に館の外へと脱出してしまった。

 その直後に物凄い轟音を鳴り響かせながら建物は完全に崩壊した。



次で最終話です!評価よろしくお願いいたします!

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