10月20日
倭の部屋にていつものメンバーでくつろぐ休日。
部屋には女子勢の他に、ラヴィッチにナイチに響にタルク、ハーモニーもいる。
こうして見ると本当に仲間が増えたなとしみじみ思う。
ふと倭の目線がラヴィッチに向けられているのを茜は横目で確認した。
そんな倭はどこかよそよそしく、口数も少なくいつもの彼女らしくない。
(これはまさか……ついにやまピー、気が付いたな)
自分の気持ちに。
確信して茜はニヤリと笑った。
―――
夜。時間は二十時を過ぎた所か。皆はそれぞれ自宅に帰り、倭の部屋にはラヴィッチしかいなくなった。
ちなみにタルクやハーモニーも響の家に泊まっているらしい。
きっと賑やかだと思うがラヴィッチはそちらに行かなくて良いのだろうか。
元々最初は響達も敵側にいたから、寝床がなくて倭の家に居候することにしていたのだから今なら彼らの所に行ってもいいと思うのだが。
「やま、どうしたの?」
「っんぇ!?な、なんでもないよ!」
「…?」
ボーッと考え込んでいるとラヴィッチが倭の顔を近くで覗き込んできた。思わずびっくりして大きな声を出してしまった。
ラヴィッチがここに居る限り、自分は彼を意識してしまう。
ソファでテレビを見ている姿を後ろから見て、不意にかっこいいなと思ってしまった。
いや、もうずっと思っている。
初めは可愛い男の子だと思っていたのに。
戦闘で剣技を振る舞う姿、自分を一番に守ってくれる姿を見て倭は…。
「……」
いつだったか、ラヴィッチの話をしていた時のレイの言葉を思い出した。
―在原くんの事、好きじゃないの?―
(…好き、かぁ)
胸に手を当ててみると心臓が早く脈打っていた。
こんな気持ちになるのは初めてだ。ラヴィッチの事を考えると胸が苦しくなる。
(私は……在原ちゃんが好きなんだ)
この気持ちにやっと恋という名前を付けることができた。
ラヴィッチは、彼女とか居るのだろうかと疑問に思う。アリーシャ隊の中でとか。だがもしそうなら戦闘している時の行動で気が付くだろう。恐らく居ないはずだ。
ラヴィッチに自分の気持ちを伝えてスッキリしたい。
願わくば……付き合いたい。
「ねぇ、やま。今日、なんだか上の空だったけど何かあった?」
「……在原ちゃんの、こと……考えてて」
「僕の?」
「あー、ごめんね!変なこと言って……」
キョトンとした様子のラヴィッチに今こそ伝えるべきだと思い、隣に座り彼の目を真っ直ぐに見る。
震える手を膝の上に置いて上手くごまかした。
「私……在原ちゃんの事が好き」
「……!」
やはり彼は驚いた顔をしていた。
そんなに私が告白した事が意外だっただろうかと少し不安になる。
ラヴィッチは、ありがとうと一言だけ言うとそこから黙り込んでしまった。
「……やまの気持ちは嬉しいんだけど、僕、そういうのよく分からないんだ。アリーシャ隊の事で頭がいっぱいで考えた事も無かったよ」
「……」
「今は君の気持ちに答えることは出来ない。でも僕は…やまを最優先で守る。今までも一番に守ってきたつもりなんだけどさ。君の事は仲間として好きだから」
その言葉を聞いて、私は振られたんだと判断した。
だけど自分の素直な気持ちを彼に伝えることが出来て今はスッキリしている。恋は実らなかったが。
「……ねぇ、在原ちゃん。もし全てが終わったら…在原ちゃんは帰っちゃうの?」
「……わからない」
ふと気になった事を尋ねるが、首を横に振られるだけだった。
全て終わったら彼らはどう過ごして行くのだろうか。
ラヴィッチも、それこそここに住む理由も無くなるし、どうなってしまうのだろう。
「やま…近々またアリーシャ隊の一人と闘うことになるんだけど」
アリーシャ隊にまだメンバーがいたようだ。
一体いつまで闘って辛い思いをしなければならないのか。
ラヴィッチは気難しそうに口を噤んだ後、言いづらそうに話す。
「…その戦いに、やまは来て欲しくないんだ」
「……え?どう、して」
「君が来れば、君が君でなくなるかもしれない。僕は正直そんな姿を見たくない」
ラヴィッチが言っている意味が分からなかった。
それは、最終決戦も近付いているから悲惨な戦闘になってしまうからという意味なのか。
コークさんの時のように自分も狙われてしまう危険があるからなのか。
「でもやまはきっと揺るがないと思っているから敢えて聞くよ。やまはここまで言っても戦える?」
「私は力になれないかもしれないけど…ここまで来れたんだからみんなと頑張りたい!私の全てが変わってもいい。サランを必ず止めるためにも戦うよ、私なりに」
「…ふふ…そう言うと思ってた」
目をしっかりと見ながら意思を伝えると、呆れたような、でもどこか安心したような表情でラヴィッチは笑った。
みんながいるならきっと大丈夫。
ここまで来たのだから。
―――
ラヴィッチが皆を集め、広い草原で次なるアリーシャ隊を待ち伏せる。
「皆、準備はいいな」
「えぇ、大丈夫よ」
「いつでも行けるよ!」
ライ厶が声をかけ、レイも緑も変身を済ませいつでも準備万端の状態になっている。
ナイチも銃を構えて、響も肩を回しながらストレッチをしている。
ラヴィッチも剣をぎゅっと握り、タルクも刀を担ぎながら真剣な表情だ。
ハーモニーはいつでも回復に駆けつけれるように一同の後ろで控えている。
一応一般人の茜も鎖椰苛もナイフを片手に正当防衛できるように準備している。
「ふ……」
「……!?」
「貴様……!?」
倭達の横から静かに歩いてきた人物に驚き警戒した。
ラヴィッチが倭を守ろうと腕を真横に伸ばす。
そこにいた人物は……爆死したはずのコークだった。
「コーク様っ!」
「ちょ、ハーモニー待て……!」
ハーモニーが躊躇いなくコークに近付き再会のハグをしようと腕を大きく広げた。
「機械人形、生きていたのか」
「おめぇもだよコーク」
抱き締められる前にそっとハーモニーの肩に手を添えてやんわりと阻止するコークにタルクが突っ込む。
「もしかして次の敵はまたお前か?」
「私は…サラン様を止める為に努める」
「つまりこっち側ってことなんだね」
どうやらコークも味方についてくれるようだ。正直心強い。
しかしそんな彼は先程から不自然に目元を手のひらで隠すようにしながら会話をしている。
「あの……コークさん、何故目を隠しているのかしら」
「……気にするな」
思えば彼は包帯を目に巻き付けていたのを思い出す。なんたかた見られまいと手で隠しているのでレイがストレートに問い詰めた。
だけど触れてほしくないのか依然として答えてはくれないし手も退けてくれない。
「いいから見せろよ」
「……!!」
鎖椰苛に呆気なく腕を掴まれ退かせられてしまったコークは目をギュッと瞑っていたがゆっくりと開けた。
目が合った相手を目線だけで射る事が出来そうな鋭いつり目、だけども色は明るい黄色でハイライトは一切無いという特徴的な目をしていた。
「イケメンやないかーーーーい!!!!」
「……私は人間に目を見られるのが嫌なんだ」
「いや貴方も人間じゃないの」
「ふ、人工知能と人間のハーフみたいなものだ。お前らと一緒にするな」
コークは目を見られることを諦めたのか隠さずに普通に会話しだす。
そういえば前に、彼の体内には人工知能が搭載されているという話を聞かされていた。
「というか……どうしてコークさんがここに?」
緑が首を傾げて尋ねる。コークはあの時自分のコードが爆発して戦死したはずだ。
跡形もなく燃え尽きたはずの彼が何故無傷でここに存在しているのだろうか。
コークは、肩を竦めて片目を閉じながら分からない、と言ったポーズをとる。
「さてな、恐らくアイツが関係しているんじゃないか?」
倭達がいる場所の奥の方を見るように言うと、その方向からガサガサと草を踏みながら歩いてくる足音がした。
「……え……」
その姿を見て倭は言葉を失ってしまった。不意にラヴィッチが罰が悪そうに顔を俯かせる。
倭と同じ髪型に真っ白な髪色、サラシにブラウスにミニスカートといった軽装。
「……白妬」
この状況で口にしたくない名前を呟く。冷や汗が急に止まらない。脈もかなり速くなり動悸がする。
「倭ちゃんの……妹さんが……」
「う、そだろ……」
緑達も驚いた声を各々上げる。彼女達にも白妬の事は軽く紹介したことがあったので皆同様に信じられないといった表情をしている。
ラヴィッチが倭をここに来させたくなかった理由をようやく理解した。きっとナイチ達も倭の妹がアリーシャ隊に居ることは知っていたが、ラヴィッチに口止めされていたのだろう。
「倭!!どうした?ビビって言葉も出ないか?」
「……っ!!」
白妬が家では聞いたことがないような生き生きとした覇気のある声で倭を煽る。
(……そうだよ!ビビってるよそりゃあ!)
足が震えているのが自分でもわかる。
白妬に抱いていた疑問が全てここで合致してしまったのが苦しくて辛い。
学校に行かず仕事をしている、というのはアリーシャ隊に居たという意味だったのだ。
だけど白妬を止められるのは姉である自分だけだ。
ここで怯んでしまっては先日ラヴィッチに意思表示した意味がなくなる。
倭は白妬に背を向けて、ライ厶達の方を見る。
その表情は真剣で、迷いは無かった。
「ライちゃん、レイちゃん、みどりん、変身解いていいよ。他のみんなも下がっててほしい。白妬の姉の私に……任せて欲しいの」
大丈夫、覚悟は出来ている。
「クロ……!それは……」
「倭!これ使え!」
「……!タルクちゃん」
ライ厶の声を制止し、タルクが倭に自分の武器の刀を投げて渡してくれた。
ありがとうとしっかり握ると、白妬に向き直った。
「はっ……姉、か」
白妬は片手にナイフを握り、余裕の表情で倭を見下す。
それはそうだ。倭は魔法も使えない一般人なのだから。
倭と白妬の距離は五メートル位だろうか。お互い見つめ合ったままだったが最初に動いたのは倭だった。
「うぅ……小さいナイフのくせに~……ッ!!!!」
「ぐほっ!!」
刀を両手で自分の目の前に持つと、そのまま白妬に突撃した。
白妬はさすがに想定外の攻撃の仕方だったからか完全に油断して刀が思い切り首元にぶつかり痛そうに間抜けな声を上げた。
「いや…刀の使い方間違ってるし……!!!!」
「っきゃ……!!」
怒った白妬が反撃で倭にナイフを切りつける。避けられる程の身体能力ではないのでまともに食らい、胸元から血が溢れる。
「うわーーーん痛いよ痛いよーー!!!!!このこのーーー!!!」
泣き喚きながら刀をブンブン振り回し白妬に殴り付けた。隙だらけの攻撃の為避けられたり腕でガードされたりなかなか当たることは無い。
ふと至近距離で見た白妬の瞳がいつもと違う事に刀で殴りながら気がついた。まるでコークのように一切ハイライトが無い、感情が見えない瞳。
「ふん、貴様一人で勝ち目などない……!!!」
「っぐぅ……!!!」
思い切り顔面パンチを食らってしまった。思わず涙が出たけれどまだ行ける。一心不乱に刀を振り続けた。
「……所で倭ちゃん、体力かなり保っている気がするんだけど……」
後方で緑が倭を心配しながら気になる事を口にした。
それもそのはず、倭は白妬に切り付けられ血を流しても普通に動けているのだ。
「あ、それは私が魔術で多少の痛みにも堪えられるように施しました~」
「さすがハーモニー♪」
「ですがあくまでも多少、なので限界は来るはずです〜……」
痛みを鈍く感じさせる魔術を事前にハーモニーがこっそり倭にかけてくれていたようだ。
道理で白妬にナイフで切られても普通に動けるわけだと倭は一人納得した。
「……えぇい!!!」
「……く……っ!」
それなら多少無理をしても良さそうだと白妬に攻撃を食らっても怯まずに刀で斬り付けてみた。
白妬も白妬で倭に斬られてもあまり怯まずに反撃をしてくる。
そうやって戦い続けていると後ろのライ厶から声がかかった。
「…!クロ、おい!鼻血出ているぞ!」
「……へ?」
指で鼻を拭ってみると確かに鮮血が付着していた。
無我夢中で刀を振り回していたからか全く気が付かなかった。
「ついに来たか……黒花白妬の本領が」
コークが何かを察するように呟く。
すると突然雲行きが怪しくなり雨が降ってきた。
「……らぁッ!!!」
「きゃあぁああっ……!!!」
まだ本気を出していない事に焦りを感じた隙に倭は再び切られてしまう。
倭の身体は既にボロボロで服は破けて切り傷や刺し傷だらけだ。
これでも立っていられるのはハーモニーの魔法のお陰だ。
しかしふと異変に気付く。
(さっきから血の臭いがしない……)
これだけ沢山の部位から血を流しているというのに全く血の独特な臭いがしないのは変だ。雨のせいだろうか。
先程の鼻血もそうである。鼻から垂れる感触で気が付くはずなのにライ厶に言われて初めて気が付いたのは不自然すぎる。
「…ふ、異変に気が付いたようだな。貴様は私に五感を奪われている」
「……え?」
「そうね……それなら、さっきの鼻血にも気が付かないのも納得するわ……」
白妬のあの感情のない瞳は、相手の五感を奪う技を発動させていた特殊効果のようだ。あの瞳に変わってから倭の身体に不自然な異変が起きている。
「っははは!醜いな!黒花倭!!私に五感を奪われているとはな!!!」
「……白妬は……私の、妹でしょ……。さっきからその上から目線やめてよ……!!!」
妹の癖に自分の事をフルネーム呼びして見下してくる姿に苛立ちを覚え反発した。
白妬は、妹?と復唱すると怖いくらい顔を歪ませて笑いだした。
「はははは……ッ!!!そうだよな……知らないよな……!!!」
「な、なにが……?」
「教えてやろう。私は貴様をコピーして造られた。貴様の妹として住み着いてそこの魔術師らの動向を探っていた。今日という日が来るまで長かったな、いつからだっただろうか。……貴様が小学生位の時からだったな」
「え……ちょっと待って、だって私……白妬が生まれる時から一緒に……」
「よく聞け。貴様らの記憶は術式を使って都合よく書き換えてやったんだよ」
饒舌に真実をベラベラと明かされて情報量が多すぎて頭がついて行かない。
アリーシャ隊の作戦のために”黒花白妬”を作り上げ、ライ厶達の動向を追うために記憶を弄り倭の妹になりすましていた。言ってしまえば新手のスパイのようなものだ。
「だから私は貴様の妹でもなんでもないんだよ」
「……」
「まだ立ち向かうと言うのか。感覚も嗅覚もない貴様に私が倒せるとでも――」
「思ってるよ」
倭は白妬が握っていたナイフを一瞬の隙で奪うと思い切り彼女の腹部に突き刺した。
「白妬は……妹だから」
「な、にを言って……私はさっきから……ッ!!?」
白妬の話を聞かずに今度は刀で投げやりに斬りつける。白妬が自分に刺さったナイフを勢いよく抜き、倭に突き返す。だが構わずこちらも刀を振り斬る。
「……やま、まさか……。ねぇ、ナイチ」
「あぁ、アイツは感覚と嗅覚を失っている事を利用して戦い続けている」
「んじゃ、あいつ感覚は無いとはいえ身体は……」
「……かなり損傷している」
「そんな……っ、このままじゃ……」
「私が回復しに行きたいですが…すぐ近くでやらないと出来ないので……倭様がこちらに下がって下されば……」
辛うじて聞こえるラヴィッチ達の会話。ナイチの言う通り、倭は感覚を失っている事を好機に体力が尽きるまで攻撃し続けている。
身体の方は傷だらけだが白妬を止められるなら構わない。回復なんて待っていられない。
「はっ……なかなか賢い戦い方をするな、倭」
「……」
「倭……ちゃん?」
「まさか……倭様……もう耳が……」
目の前の白妬が何かを喋っているが全く聴こえない。ついに聴覚も失ってしまったみたいだ。構わずに拳で殴るが弱々しい。
「……黒花白妬……一般人相手にもう良いんじゃないか…。何故だ、何故お前は……こんな弱者と対等にぶつかり合っている……?」
コークも何かを話していた。だが当然倭には何を言っているのかはわからない。
その時、視界が徐々に真っ暗になって何も見えなくなってしまった。
「やまピー!!もうやめい……!!見てられへん……!!」
「クロ……!!!もう充分だ……!!!」
(私は……ここで終わり?お姉ちゃんは妹を止められなかったの……?)
膝から崩れ落ちる。何も見えない、何も聴こえない、何も感じない。
すると突然、親戚の枯那とその友達の榛彌との会話がフラッシュバックした。
『枯那お姉ちゃん、榛彌お姉ちゃん、悪い人をやっつけるにはどうしたらいいの?』
『と、唐突な質問ね……』
我ながらぶっ飛んだ問いかけだと思う。
だけど真剣で、倭は一般人の自分でも何か出来ることはないか周りに相談していたのだ。
とはいえ魔術師だのなんだのと話しても信じてはくれないと思うのでざっくりした内容で事情を話した。
『やっぱ殴ろう♪』
『どかーん!ってね』
『やっぱりそうしないとダメ……だよね』
枯那と榛彌は笑顔で即答で答えてくれた。
話し合いで済むわけにはやはり行かないのだ。殺し合いをしなければならない、とても怖かった。
『倭ちゃん、戦いに遠慮なんていらないの。だって悪いことしてる人なんでしょ?』
『う……うん』
榛彌が落ち着いて優しくアドバイスをしてくれる。物凄く説得力があるその言葉に、彼女達も昔何かあったのではと思ってしまった。
『んー、まぁでも人にもよるよね。倭たんの倒したい悪いヤツがどんな人なのかはわかんないけど、例えばね?榛彌が実は超ヤバイ敵でしたってなったとするよ?』
『ちょ、なんか嫌な例えね』
『あたしはきっと榛彌を殺さない』
さっきまでお茶らけた態度の枯那だったが、そこはキッパリと真剣に言った。
どうして、と返す。
『榛彌はあたしの大切な人だから。どんなに酷いことをしても最終的には許すかな、殴るかもしんないけど』
『まぁ、全く知らない人だったら当然ボコボコにするしね』
大切な人だから許す。倭にとってサランという人物は全く知らない人だ。
しかしもしその下についているアリーシャ隊に、私の知っている人がいたら、許せるだろうか。
『とにかく、ぶっつけ本番!自分のやったこと後悔しちゃダメだよ倭たん』
『後…悔』
『ヤバくなったら、うおあぁー!って突然だよ♪』
後悔等していない。実際に自分の大切な人が敵だった。
絶対に白妬は生かして帰ってきてもらうんだ。
「姉として……教えて……あげるんだ……」
身体に力を込める。枯那のアドバイス通り、倭は叫んだ。
「うぉあぁぁぁぁぁああッ!!!」
すると倭の身体が眩い光を放ち、辺り一面が明るくなった。
皆が驚いた様子でこちらを振り返っている。
どうやら倭が戦闘不能になってから戦っていたようだ。
「この光……伊吹と戦った時に見たクロと同じ……」
立ち上がり白妬を真っ直ぐに見る。身体は大丈夫みたいだ。目もしっかり見えるし耳も聴こえる。感覚もある。
ついでに臭いもわかる。
(白妬、私は貴女を殺さない……。お姉ちゃんが一発だけ叱ってあげる)
握った刀にこれ以上無いほどのパワーが込められていく。
これが自分の力なのだろうか。凄くみなぎってくる。
(これなら……行ける……!!!)
「は、今更その状態で何が出来るって―――ッ!?」
瞬速で白妬に近付いた。驚いた彼女の腹部には既に刀が突き刺さり貫通している。
「一回だけ、叱ったよ」
優しく笑って、突き刺した刀を思い切り抜いた。
白妬はガクンと膝から崩れ落ちてその場に倒れてしまう。
「……刺された、からか……それとも……長年…騙し続けてきた、罪悪感なのか……痛い……く、るしい……」
「白妬……」
すぐに抱き起こし白妬の頬に触れる。指に彼女の血がついてしまったが今はどうでもいい。
「私は…貴様に、酷い事をしてきた……だが、それも今日で……終わりだ」
「どうしてそんなこと言うの……私は白妬に戻ってきて欲しいから……一人で戦ったんだよ……っ」
もう戦う力はないようだ。このまま息絶えて死ぬなんて絶対に嫌だ。
白妬は、涙を流す倭を見て怪訝そうな顔をして問いかけてくる。
「何故貴様は…私が貴様の妹ではないと知らされても尚……ぶつかってきた……?」
その質問にはぁ、と息を吐きわかってないなぁと呆れる。確かに妹ではないと知らされてかなりショックを受けた。人の記憶を改竄していた事も許せることでは無い。
「白妬が赤の他人だと言っても……私の妹は、白妬以外居ないから」
そう言って強く抱き締めた。
どんな事情があれ、私の妹は貴女以外居ないのだ。
「ねぇ、さん……っ、う、うぅ……っ」
白妬が初めて倭を姉さんと呼んでくれた。倭の背中に手を回して皺が付くほど強く服を握りしめられ泣いていた。
その後ハーモニーとレイに白妬の回復を頼んで、倭はライ厶達に良くやったと褒められ勝利を喜びあっていた。
ちなみに倭のボロボロだった身体は、覚醒して復活したおかげか無傷に戻っていた。
「黒花白妬」
「……コークか…」
「お前が私を生かしたんだな」
コークが尋ねると白妬は、あぁと頷く。爆死までしたのに完全復活させられる術を使える白妬が凄いと思った。
何故だとコークは更に聞く。話を聞くとどうやらその術は一度しか使えない禁忌とされるものらしい。
「…………貴様に好意を……っごほん!いや、貴様はサラン様の側近にいた人物だからな。彼女を止めるために役に立つのではないかと思って生き返したんだ」
「……だったらお前も姉の為に生きろ」
コークが倭を一瞥してすぐに白妬に視線を戻す。
白妬はどこか嬉しそうに、分かっていると呟き頷いた。
―――
「みんな行っちゃったかぁ」
仲良さそうに笑い合う彼らの姿を画面で見てため息をついた。期待していた白妬までもがあっち側にいってしまったので私に味方は誰も居なくなった。
広くなった部屋を一望する。数ヶ月前まで賑やかだったのにと寂しく思う。
「むしろ、私のワガママな目的の為にここまで従ってきてくれてありがとう、よね」
一人になってしまったが、私は目的の為に殺らなければならない。窓から外を見上げ、涙が出そうになるのをぐっと堪えある人物の名前を口にする。
「……お母様」
この物語は基本倭視点です!誰視点か分からなくなったらすみません。
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