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10月13日

 

「あのぅ……私達…迷子になっちゃいました……」


 悲しげな声を出してとある人物に後ろから声をかける。

 その人は自分達を心配して手を繋いでくれたがその隙を狙って術を唱えて呆気なく意識を失わせた。


 ドサッと倒れ込み完全に眠ったのを確認してソーラにほほ笑みかける。


()()()の身体を貸してね♪」


 二人で手を繋ぎ、倒れた()()()の身体にとある術をかけ、全く同じ姿の人物を作り上げた。


「クローン完成~♪あの人達を私達の所に集合させてね~♪」


 ―――


「さぁみんな夕飯よ♪」


 倭の母親が夕飯を作ってくれたので、倭、ラヴィッチと、珍しく妹の白妬(しろと)と食卓を囲んだ。

 ラヴィッチとこうして一緒にご飯を食べるのも日常化してきたなと感じる。

 初めは何だか妙に意識して会話もぎこちなかったというのに。


「白ちゃんもいっぱい食べてね!お仕事終わったばっかだもんね!」


「……あぁ」


 白妬は学校には行かず、仕事をして生活している。無愛想な性格で口数も多くないのであまり会話はしない。

 仕事内容も一切教えてくれないのだ。


 当の本人は、夕飯に出たトンカツが美味しかったからかニヤリと笑って白米をかき込んでいた。


「今日の白妬、機嫌良さそうだね」


「…そうだね」


 白妬に直接言うと機嫌が悪くなりそうなのでラヴィッチにこしょこしょ話をして伝えてみた。

 ラヴィッチには少し前に白妬を紹介したことがあるが、やはり話しかけるなオーラが伝わるのか自己紹介の後は会話をすることは無かったのだ。


 ―――


「緑、明日出かけない?」


「え……うん、いいけど」


 緑は母親に明日外出しようと誘われ、特に予定もないのでいいよと頷いた。

 どこに行くのと聞くと、お散歩でもしに行こうよとほんわかした笑顔で返された。


 そんな親の姿を見て、一つだけ疑問を抱く。


(……お母さん、いつも喋ると訛りが出るのに今日は出ていない……)


 ―――


「ライム」


「!」


 ライムは、母親と食卓を囲んでいると、名前を呼ばれたので食べながら目線だけ母上に向ける。


「明日一緒に来てもらいたいところがあるのだが、来てくれるか?」


「…あぁ、構わないぞ」


 特に予定も無かったのですぐに承諾する。

 母上は嬉しそうに良かったと言い、大盛りの白米を頬張っていた。


 だがふと疑問を抱く。

 母上の手元を見て首を傾げた。右手に箸を持つその手。


(…母上、左利きではなかったか……?)


 ―――


「鎖椰苛、貴女中学生の時と比べて大分優しくなったわよね」


「な、なんだよいきなり」


 鎖椰苛は母親に突然優しくなったと言われ困惑する。

 確かに中学生の時はバリバリのヤンキーだったのは否定しないが面と向かって優しくなったと言われると少し気はずかしい。


「ふふ、なんとなく♪」


「……勝手に言ってろ」


 そう適当にあしらって部屋に戻ろうとすると、妹の依心がお姉ちゃんと焦った様子で鎖椰苛を引き止めた。


「おかあさんやだ!こわいかおしてた!」


「はぁ?何言ってんだよ」


 依心が意味のわからないことを言うのではいはいと聞き流し部屋に戻った。


 ―――


「茜、鎖椰っちとちゃんと仲良くしてる?」


「もちろんやで」


 茜の母親が鎖椰苛のことを聞いてきたので、相変わらずツンツンしているけれど確実にウチのことが好きやと教えてあげた。


「他のみんなとも喧嘩しないで仲良くするんだよ?」


「あったりまえや!みんな仲ええで」


 会話をしていて疑問を抱いた。


(…ママ、今日は関西弁使っとらんな……)


 ―――


「レイ、明日ライムさんと緑さんのお母様と集まる日なのだけど貴女も来てくれるかしら」


 レイ、ライム、緑は親同士も仲が良くて、何度か会って食事に行ったり等をしたことがあった。

 予定がないのでオーケーしたが、急にどうしたのか聞いてみるとふふんと自慢げに鼻を鳴らした。


「アリーシャ隊の事で作戦会議するのよ」


「は、はぁ……」


 それならいいけどと返事をするが疑問点があることに気付いた。


(…私、母様にアリーシャ隊のことを話していないはずなのに…何故?)


 ―――


 翌日。

 倭は母親にちょっと来てもらいたい所があるからと、ラヴィッチや響達も連れてとある草原に連れてこられた。


「あれ……?」


 するとどうしてかライ厶や緑、茜に鎖椰苛にレイと、何と全員がそこに集合していた。

 話を聞くとどうやら他の皆も倭と同じく、母親に強制的に連れてこられたそうだ。


「ねぇお母さん、ここで何を…………って、いない」


 何をするのか尋ねたかったが気が付けば皆の母親の姿が消えていた。

 急いで探そうと周りを見渡すと何処からか幼い子どもの笑い声が響いた。


「きゃはははっ♪まんまと騙されてやーんの♪」


「ニセモノの姿だって気が付きませんでした?」


 奥の茂みの方から現れたのは二人の女の子だった。

 一人は右目を前髪で隠し、茶髪でパーマがかかったようなふんふわした髪の毛。

 もう一人は左目を同じく前髪で隠していてストレートヘアーを肩まで伸ばしていた。

 そして二人は似たような顔つきをしていたので双子みたいだ。髪型のおかげで違いが分かる。

 服装はゴスロリファッションを参考にしたのか胸元に大きなリボンとフリルをあしらい、黒のワンピースを着用していた。


 異様な光景に、彼女達はアリーシャ隊なんだと瞬時に確信してしまった。


「じゃあ本物のお母さん達はどこなの?!」


「えっへへ♪ここだよ♪上!」


 言われた通り上を見ると大きな球体のようなものの中に全員の母親が詰め込まれるように収められているのを発見した。


「はっ、オレ(先生)はそんな卑怯な戦法は教えた覚えねぇけどなぁ。パーラ、ソーラ」


「……タルク先生」


 そう言って倭達の前に出たのはタルクだった。

 二人は彼女のことを先生と呼んでいるということは、アリーシャ隊にいた頃は戦闘訓練でも教えていたのだろう。

 

 隣にいたナイチにあの二人の名前を尋ねると、大人しそうな方がパーラでうるさい方がソーラだとざっくり説明してもらえた。

 フルネームはパーラ・クルー、ソーラ・クルー。


「……タルク先生と戦うなんて、イヤです……」


「オレだって嫌だよ、一応お前らの先生役だったんだから」


「じゃあもう一度こっちに戻って―――」


「悪いねガキんちょ」


 タルクはソーラの言葉を遮ると、己の武器である刀を握り一瞬の隙でパーラに近寄り思い切り振り切った。


「今だけ先生、辞めさせてもらうぜ……ぉらあっ!!!」


「っきゃあ……っ!!!?」


 パーラは防御する余裕もなく斬られ後方に転がりながら倒れてしまった。砂埃が舞った。


「……先生」


「お前らも生徒やめてかかってこい」


「……わかったよ……」


 タルクが真面目な表情で言うと、ソーラは悲しげに眉を下げたが渋々納得して頷いた。


「…アリーシャ隊の目的を果たさないと!」


 ソーラはパーラに手を差し出し握り合うと、タルクに向かって走り出した。二人を薙ぎ払おうと刀を横に振ると、それが当たる直前で手を離し左右に避けた。


「お前ら逃げ足だけははぇーから追いつけねぇな……!」


 一瞬二人の手首に飾られたブレスレットが反射だったのかキラリと光った。


「……が、ふぅ…ッ!?!!」


 すると突然レイの苦痛の声が聴こえ、目を向けると黒い棒のような物が身体に突き刺さり貫いてしまって倒れそうになっていた。

 いつの間にそんなものをと思ったが、先程のブレスレットの光は魔術を唱えたから輝いたものだったと理解した。


「まだまだ来ますよ」


 パーラが自信満々に微笑むと、レイを貫いたものと同じ棒のようなものが上空から四方八方に降り注いで来る。


「やま、危ないから避難するよ……っ!!! 」


 ラヴィッチが倭をお姫様抱っこで抱えながらそれを避けて行く。ナイチは茜を肩に担ぐようにしながら器用に避け、響は鎖椰苛を脇に抱えてぴょんぴょん飛び跳ねて当たらないように守ってくれていた。


 またラヴィッチが一番に自分を守ってくれたことが嬉しくて、真剣な表情が何だか男らしくて倭はじっと見とれてしまった。それ所ではないのはわかっているのに。


 どうやらあの姉妹はライ厶達魔術師を最初に狙っている事に気付いた。戦闘に加わっているのはタルクだが二人はあまりタルクを相手にしていないように見える。


「えぇい……!」


 緑が四方八方から飛んでくる黒い棒を魔術を発動させて弾き、跳ね返って何本もクルー姉妹に向かって戻っていく。

 それは二人の身体を貫いていく。その衝撃で首から下げていたお揃いのネックレスがパキンと音を立てて割れてしまう。


「あ……ああああああああぁぁぁ」


 貫かれた部分から出血し、膝から崩れ落ちる。正直幼い女の子が血塗れになっていく様は見るに堪えない気持ちになった。


「……よくも……」


 ふらりとよろけながら立ち上がると、先程の子どもらしい声とは一変、恨みに満ち溢れた低い声で叫び出した。


「パーラお姉ちゃんとお揃いの物を……!!!」


「ソーラとお揃いの物を……!!!」


「っ!!!?」


 ハモリながら怒りをあらわにすると、緑の足元から突然黒い棒が飛び出してきた。不意をつかれて緑は腹部を貫かれてしまう。


「……ぃ、たぁ……ッ!!!」


「あ……緑ちゃん!!!」


 鎖椰苛を攻撃が当てらない場所で避難させ終わった響が緑を心配して抱き上げる。


「響君危ない!!!」


「……!!」


 しかしその隙にクルー姉妹は響と緑目掛けて棒を両手で握りながら飛びかかってきた。響は気付いていなかったので倭が注意喚起で呼びかける。


「っらぁ!!」


「ふん……!!」


 すると攻撃を食らう直前にタルクとライ厶が前に現れ、庇った。

 タルクは刀でソーラを斬り、ライ厶はパーラを自慢の長い脚で蹴りあげる。


「響はそいつをハーモニーんとこ連れてって回復してもらえ!!」


「早く!!」


「わかった……!行くよ緑ちゃん……!」


 二人に促され響が緑を抱きかかえるとすぐに後方に身を潜めるハーモニーの所へ行った。既にレイを治癒させようと術を使っているがあちらはもう大丈夫だろう。


「…どう、して……邪魔するんですか……!」


「それはね……君達を目覚めさせる為だよ」


「きゃあぁああっ……!!!」


 倭を避難させたラヴィッチがパーラを剣で遠慮なく斬りつける。綺麗だったワンピースが所々破け、血を溢れさせて倒れてしまった。


「…ぱ、パーラお姉ちゃ……っぐ…ッ!?!!」


 今度はソーラを少し離れた所からナイチが銃で乱射した。


「揃いの物を破壊されると怒りで錯乱状態になり集中力が欠け、隙だらけになる。…まだまだだったな、クルー姉妹」


 ナイチに弱い所を指摘されソーラもそのまま倒れてしまった。

 二人とも損傷が激しく最早動けなさそうだ。隣同士で倒れ、命が尽きるのを覚悟したのか手を繋いでいた。


「みん、なの……お母さん、攫ってごめん、ね……」


「…きちんと、ご自宅、に……帰して、あげました……から……」


 ふと突然母親のことを謝罪され、バッと上空を見ると例の球体は忽然と消えてしまっていた。今日の出来事を本人に何と説明したらいいのか悩む所だがそこは後で皆と相談することにする。


「良かった……ブレスレット、だけは……壊れてなかったみたい……」


「えへへ……よか、った……お姉…ちゃん」


 ブレスレットを見つめて嬉しそうに笑い合う二人に心が傷んだ。

 サランに協力してなければ、幼い人生に幕を閉じる事など無かったというのに。


「……パーラ……ソーラ……」


 タルクが二人の前に座り込み、辛そうに名前を呼んだ。ハーモニーに回復をお願いしたかったがまだレイと緑の回復で手一杯になっている。


「タルク先生に、充分教わったつもりで……いたけど……っ、まだまだ、未熟だったよ……」


「やっぱり……み、なさん…お強い……ですね」


「……先生が、お前らを見届けてやるから……っ、ゆっくり……休め……っ」


 タルクが二人の手を包み込むように握り、大粒の涙を零し泣いていた。タルクの泣き姿を見るのは初めてだ。

 倭は彼女とクルー姉妹の関わりを全く知らないが、本当に教師と生徒という感じで仲が良かったのだろうとその涙を見て思った。


「せんせ……今まで……ありがと……」


「かな、らず……サラン様……を、止めて…ください」


 すると二人の身体は優しい光に包まれ、あっという間に消えてしまった。

 シャラ…と腕につけていたブレスレットが音を立て地面に落ちる。


「……っう、うぅ…………っ、く……」


 タルクはしばらくその場で泣き続けていた。



短くて申し訳ございません!


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