表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

欲という魔物をさがして

作者: 海老茶

一つの言葉に対する解釈は人それぞれなのかもしれない、というお話。


欲というのは、目に見えない魔物です。


可愛いお姫様は、そう言いました。


お姫様の家庭教師である私は、こう言いました。


「欲が無ければ、人は無気力になります」


それを聞いたお姫様は、では欲は活力なのね、と返しました。


「そうですね。そうとも言えるかと思います」


それなら、わたくしは活力のないお人形さんですわ、とお姫様がポツンと言いました。


「では、欲を探してみてはいかがですか?」


私はそう励ましました。


なるほど、とお姫様は言いました。





ある日、家庭教師が可愛いお姫様のもとを訪れると、そこはがらんどうでした。


私は驚いて、お姫様に聞きました。


「どうなさったのですか?」


私の言葉を聞いて、お姫様は目を輝かせて言いました。


わたくしは、欲を探してとうとう見つけたのです、と。


「それは、何ですか?」


と私が問うと、にっこりと微笑んでお姫様はこう言いました。


自由です。




しばらくすると、可愛いお姫様はすべてを捨てて、どこかに行ってしまいました。そのことを知った私は、「ああ。お姫様はとうとう自由を手に入れたのだ」と思いました。





私はまたある日、別の綺麗なお姫様に出会いました。


そのお姫様はきれいな衣装を身にまとい、毎日あれがほしい、これがほしいと我がままを言っています。


私はお姫様にたずねました。


「何でも持っていらっしゃるのに、まだ欲しいのですか?」


そのお姫様は不思議そうに言い返しました。


欲はあとからあとからあふれてくるの。欲は生きる活力なのでしょう?と。


なるほど、と私は思いました。


「では、すべての欲を手にしたお姫様は幸せですか?」


私がそう聞くと、お姫様はポツンと言いました。


幸せかしら。自由がないのに。


お姫様は、とても悲しそうでした。


その時、私はふと自由を手に入れたお姫様のことを思い出しました。


「私は、自由になって幸せそうなお姫様を知っています」


そう言うと、お姫様は首をかしげて聞きました。


どうやって、自由になったの?と。


私は頷いて話しました。


「すべてを捨てたのです。自分自身以外のすべてを持たず、自由になったのです」


なるほど、とお姫様は言いました。





ある日、家庭教師が綺麗なお姫様のもとを訪れると、そこはがらんどうでした。


私は驚いて、お姫様に聞きました。


「どうなさったのですか?」


私の言葉を聞いて、お姫様は目を怒らせて叫びました。


あなたの言うとおりすべてを捨てたら、わたくしはたった一人になってしまったのよ!これは自由じゃない、孤独よ!ああ…なんて可哀想なわたくし…。


とうとうお姫様はわあわあ泣き出してしまいました。




やはり欲は魔物か、と私は思いました。







お読み頂きまして、誠にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 幸せのとらえ方は人それぞれ、ということでしょうか。 興味深く読ませていただきましたー。
2023/04/25 14:13 退会済み
管理
[一言] 捉え方は人それぞれ、ですねぇ……。 自由が幸せなのか、孤独なのか。 前者のお姫様はきっと、自立していたんでしょうね。芯も強く、揺らぎがなかった。 後者のお姫様は、それだけ周りに甘えていたのか…
[一言] 言葉の取り方は人それぞれ。 願いを叶えるために最適な工程も人それぞれ。 一言に自由と言っても、どういう自由を望んでいるのかは違うのでしょう。 誰かに対して有効だったアドバイスが他の誰かに対…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ