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7.状況把握


「なるほど……亜人だったのね。それも幼い……ミミックの亜人なんて初めて見たわ」

「あぁ、そうだな」

「宝箱に潜んで活動を極端に減らすことで、体力を温存していた……それにしても、こんな街外れの廃屋で宝箱に擬態しても意味なかったでしょうに。その宝箱すらボロボロだし……」

「あぁ、そうだな」

「取り敢えず、納得したわ」

「あぁ、そうだな……」


 納得いただき嬉しい限りです。

 では、俺からも一言。


「ツルハシを俺に突き付けるのは止めてくれ」


 あなたの"体が"納得していないようですが?

 俺をツルハシでガツンとしても、何も採れないよ?赤い液体がそのツルハシを錆び付かせるだけだから、止めることを推奨する。


 と言うか、俺の火柱で暖を取って衣服を乾かしているのだから、もう少し優しくしてくれ……。


「まず、あんた誰だ?ここの廃屋の主?」

「違うわよ……この肩の紋章を見れば分かるでしょ?」


 やっとツルハシを折り畳み、腰に差したかと思えば、今度は肩の部分の布を見せつける。

 そこには、盾を背景に、五つの星……?


「何だ?何処かの探検家の一党か?」

「違う!保護財団『五芒星』!!歴史的な遺物を保護して回ってる世界組織!知らないなんて、何処が出身なの……」


 ここではない、異世界ですが。

 そう答えたい所だが、それは天使クローバーに固く口止めされているため、誤魔化すように苦笑する。


 そもそも、俺だって元の世界の記憶は皆無だし。クローバー曰く、この世界の言語や魔力に対応するための処置を施した際の弊害だとか言ってたけど……。

 他にも、元の世界の肉体的・言語的知識を維持するのも大変だったとか言ってたっけ?それで記憶が飛んだとか何とか……。


 それに、俺が異世界に来たのも最近だし、あの街からほとんど出ていない。サブ・クエスト達成の日々に、あのパーティーでの散々な仕打ち……そんな大層な組織を知る機会なんてなかった。


「あんたが大層な組織の人間だってのは分かったけどさ……」

「あんたじゃないわ。私の名はロゥレルよ」

「ロゥレルね。で、なんでここに来たんだ?雨宿りか?」

「違うわよ、大きな声が聞こえたから、それで……って、それも違うわよ!そうよ、こんなことしてる場合じゃなくて……!」


 今度は何だ。いきなり自己否定し出したぞ……。

 唐突にツルハシを突き付けられたし、この人ヤバい人なんじゃないかな……いや、それは俺がミミックの幼女亜人に被さってたからか。


 ……あれ、ヤバい人って、もしかして俺の方かな?


「あなた、フェークという名で間違いはない!?」

「ああ、正しく俺の名だけど……どうして知ってる?」

 

 何だ?まさかクラウデッド街で、詐欺師という蔑称が俺だと聞いて、嫌がらせでもしに来たか?だとしたら、この雨の中ご苦労なことだが……。


「フェーク、あなた……あの街で二人の子供に、宝石と鎧の胸当てを渡した……間違いないわね?」

「……あぁ、あの兄妹ね。渡した渡した!いやぁ、聞いてくれよ。あの二人が喧嘩してたからさ、仲裁のつもりであげたら凄い可愛い笑顔になっt」

「他の所でも、同じようなことをした!?」


 あんなにも純粋な笑顔で貰ってくれた二人を思い出し、つい話し込もうとするも、物凄い剣幕の質問で止められた。

 えぇ……最近の数少ない幸せエピソードだったのだから、少し位共感してくれても……。


 そもそも、なぜ彼女はこうも必死なのだ?

 雨粒に濡れたそれとは違う、焦燥に駈られたような汗まで流して……。


「同じようなことって……まあ、売れなかった物は欲しい人にあげたりしたけど?」

「だ、誰に!?どのくらい!!?」


 ホントに必死だな。俺の肩に掴みかかっちゃってるよ。めちゃくちゃ顔近いし。

 ただならぬ気配を察したのか、ずっと黙り混み様子を見ていた亜人の子が『痴情のもつれ……だ……』と呟いた。

 

 いや違うから。あと何処で覚えたの、箱入り娘。




 いやしかし、何故こうも必死に……あ。




「そう言うことか!全く、遠回しに言わないで、早く言ってくれればいいのに……」

「は……?」

「はい、これ」

「え?これって、な……に……」


 麻袋を漁り、掴める分だけ掴んで彼女の手の中に。







   ~アイテム消費~

     ・古代スルク王国の秘宝石×29






「ほら、()()()()()()からさ。鎧の方は()()無いから、これで我慢してくれよ?」

 

 そうだ。彼女はこれらが欲しかったに違いない。

 同じように渡してる人が多くいるなら、私も欲しい……しかし、直接的に伝えては浅ましく思われるから遠回しに……。

 彼女の内心は、こんな葛藤をしていたのだろう。


 そんな遠慮しないでいいのに!

 俺に使い道がないんだから、それを求めてる人にあげた方が、アイテムも報われるんだから!


「あ……え……お……」

「そんな震えちゃって……言葉に出来ない程なんて、こっちも嬉しくなるね」

「……きゅう……」



 

      ーロゥレルが、バタリと倒れたー




「ちょ、おい!どうした!?何も卒倒しなくても……!」

「……ちじょーの、もつれ……」

「だから違うって!あーもー、何なんだよ!?」


 俺は慌てふためき、ロゥレルは気絶し、亜人幼女が呟く。何なんだこの状況は……!




 彼女の両手から溢れた宝石がバラバラと散らばり、その廃屋を少しだけ豪華に照らした……

 

 

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