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3.追放の理由


 ニヤニヤと嘲笑に晒される。


 街行く人々は珍しいものを見たいのか、距離をとってその光景を眺めるだけ。いや、中には俺の"詐欺師"の蔑称を知っているのか、クスクスと瀬世笑う音も聞こえた。


「それで?今回のゴミはいくらで売り捌いたんだ?」

「え~と、銅貨一枚……だな」

「マジかよ!逆に金取られても不思議じゃないゴミだぜ!?感謝しなよ、フェーくんよぉ~!」


 そう言いながら、俺の肩をバシバシ叩いてくる一党のリーダー的存在の剣士……名はゲスト。

 そしてフェーくんとは、以前この一党に入っていたときのあだ名……とは名ばかりの、俺を見下す意味を込めた蔑称だ。


「まだこの街で放浪しているのですか?ゴミ収集は別所でやった方が捗りますよ、役立たずさん」


 クスクス笑いながらそんなセリフを吐いたのは、医術士のペール。特徴、クスクス笑うこと。

 あまりにもクスクス笑うから、『それはあなたの鳴き声ですか?』と以前尋ねたら、クスクスと怒られたこともある。


 だけどこの一党を追放されたのは、他に理由がある。


「そうそう。その追加報酬が得られるスキルも、今やゴミしか排出しないんだからよぉ」

「その達成条件でさえ厄介な役立たずだと言うのに、その報酬もゴミとは……あなた自身もゴミなんじゃない?あはは!」


 そう。魔術師、あははお姉さんことソークの言う、"それ"が理由だった。



 『サブ・クエストのスキルは、ゴミしか報酬として出ない』

 『達成条件が厄介で、行動において役立たず』


 

 確かに、サブ・クエストから得られる報酬はその価値も用途も不明で、扱いそのものが困難であり、結果ゴミ判定を受ける。

 しかし彼らが俺をパーティーに誘った当時は、その報酬で貢献していたし、彼らもその恩恵を受けていたはずだ。


 報酬は、何も素材アイテムに限らない。

 希少な武器に防具、魔道書、そして各々の能力値を増幅させる秘薬……十分な成果を出していた。

 だが最近、彼らの欲にそぐわない報酬ばかりになり……結果見限られ、今の状態になってしまったのだ。


 

 そして最大の理由。

 『サブ・クエストの達成条件が厄介』



 確かに、奇天烈で困難なものも多かった。

 それでも彼らは、協力すると、一緒に条件を成し遂げようと語って、俺をパーティーに誘ったのだ。


 ……しかし、すぐに気付かされる。


 彼らは"俺"という存在ではなく、サブ・クエストから得られる報酬だけが目当てだったのだと。

 強力な装備や魔法薬を手に入れたいだけで、そのために俺を誘い、勝手良く使わされていたのだ。



 そして今や、価値も用途も分からない報酬ばかりになったスキルと俺を『用済み』として追放した……。


 

「分かったら、早いとこ出ていきな。ゴミ臭くて仕方がねぇよ」

「シエールなんて、報酬で出た装備すら脱ぎ捨てたのですからね。汚わらしいのだから、とっとと去りなさい」

「え、いや、私そんなつもりは……!」

 

 言われて気付く。女戦士であるシエールは確かに、身につけた装備が俺と初めて会ったときのそれになっていた。

 

 本人は何か言いかけていたが……これ以上騒ぎを大きくしたくはないし、嘲笑を受けて喜ぶ性格でもない。


 

 三人の笑い声、一人の戸惑いの声……そして多くの視線。


 それらを一身に受けながら、その場を後にする。


 



  ……フェーくんってあだ名、気に入ってたんだがなぁ……

 



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