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2.商業ギルド


ー現在装備、使用している追加報酬アイテムー

 《SSレア:不殺剣》

   ・この剣から繰り出される如何なる攻撃は、対象を殺めることをしない。

 《SSレア:死神殺し》

   ・対象の殺意や負の感情と共鳴し、その威力と切れ味を増す剣。刀身の純黒の燻りは、死神の血だと詠われている。

 《SSレア:支配者の衣》

   ・Sレア装備以下の攻撃を全て無効化する。

 《SSレア:大賢者の劇薬》

   ・七色の粉薬。魔法威力の大幅強化、無限の魔力を得る。



ー現在持ち歩いている五臓六腑ー

 《SSレア:吸血鬼神の鮮脾臓》

   ・説明なし

 《SSレア:世界樹の永久肝》

   ・説明なし




「予想はしていたけど……予想以上に滅茶苦茶ね、あなたのスキルは」

「あぁ、俺も初めて知った」

 

 『サブ・クエスト』を授かった当初は、クローバーの説明も事細かで使い勝手の良い素晴らしいスキルだと喜んだものだ。

 何せ達成条件も容易で危険もない、それで常軌を逸したような協力過ぎるアイテムが手に入ったのだから。


 だがクローバーの気まぐれが、ただの嫌がらせか……次第に追加報酬の内容が不明瞭に。果てにはレア度すら分からなくなって……どうにか処分していたら、世界の危機なんて冗談のような話まで発展してしまった。


 そして最上位の鑑定スキルを持つロゥレルのおかげで、やっと手持ちのアイテムの解析が出来た訳だが……本当に滅茶苦茶だ。


 まさか、世界を滅ぼしかねない『五臓六腑』の内、二つを麻袋に突っ込んでいたとは……爆弾を持ち歩いていたのと同じだ。


「で、手持ちにない追加報酬のアイテムは全て売ったか、誰かに渡したと……何を誰にいつ渡したとか、リストも作ってないのね?全く、どれだけ無計画な生活だったのよ……」

「しょうがないでしょ。俺だって生きるのに必死だったんだよ」


 毎日サブ・クエストに駆け回り。

 そのアイテムをどうにか換金しようと交渉し。

 あのパーティーでは、本来のクエストの報酬も減らされ。

 クローバーの説明はどんどんと雑になる。


 俺だけ、他の冒険者とは全く違う冒険の毎日だったよ……。


「だからこうして商業ギルドに向かってるんだろ?あそこは取引内容を全て記録する義務があるからさ」


 俺の曖昧な記憶では、世間に出回った追加報酬の数々の足取りは掴めない。確実にその場所を突き止めるには、正確な情報が必要になる。


 そこで、商業ギルドの物流リストの出番という訳だ。


「しかし、易々と客の情報を見せるとは思えないけど……」

「ふふっ、『五芒星』の権力を甘く見ないことね。各国から認められ、完全に独立した世界機関は伊達じゃないわよ」

「ロゥレル、ぱちぱち……」

 

 誇らしげに胸を張る彼女。そこに俺に背負われたミミがパチパチと拍手するものだから、益々調子に乗って肩の紋章を押し付けてくる。地味に痛いです。

 凄いとは思うけど……それはロゥレルではなく、五芒星という組織が凄いのでは……?







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ふぅ……やっと全てのリストの確認が出来たわ」

「やっとって……凄いな、一時間でギルドの書類全部とか……」

「あなたのスキルに比べたら、どうってことないわよ」

「いや、純粋に誉めて……こらミミ!そのインクは飲み物じゃないぞ!」

「ん……ぶっとぶ味……」

 

 口から黒いインクを垂れ流しているミミの介抱をしながら、改めて整理された書類を確認する。




 『Cレア:始祖竜の三焦』

  ・買取額……銅貨四枚にて取引

  ・取引額……銀貨一枚

  ・取引先……シフィア王国商業ギルド長:ティリス

  ・輸送状況……完了

 『Cレア:幻妖精の(はらわた)

  ・買取額……銅貨二枚

  ・取引額……銀貨一枚

  ・取引先……バレッジ奴隷商会会長:バレッジ

  ・輸送状況……完了


 ※追記……アイテム名は送り手の命名。詳細は不明瞭かつ不確かであることを留意されたし




「……あなた、一人で買い物とか出来るの?」

「これが当たり前だと思ってたんだ!」


 ロゥレルには分かるまい!

 売り手を求めてさ迷い歩き、やっとのことで銅貨四枚と二枚と言う収入を得た俺の気持ちを!それで買ったささやかな食事に涙した俺の感情をぉ!!


 と言うかギルドの役人めぇ……鑑定スキルが機能しないからって、Cランクとか適当過ぎるだろ……。


「……と、とにかく、あなたが商業ギルドで売買した五臓六腑はこの二つだけみたいね。他はギルドを介さずに取引したか、そもそも追加報酬で出ていないのか……」

「五臓六腑じゃない追加報酬のアイテムは、ロゥレルの知識にもないから探しようがないな」


 ロゥレルが専門とするのは、あくまで古代遺物(オールド・アイテム)だ。俺が装備する不殺剣なども鑑定スキルは反応するが、今までに見聞きしたことのない代物だと驚かれた。


 古代遺物以外も、相当な数を安値で売ったりしたが……どうしようもない。

 五臓六腑の回収をしつつ、その情報も集める他ないだろう。


「まずはこの二つの五臓六腑の回収ね……しかし厄介な買取手だわ。簡単には進めそうもないなぁ……」

「そりゃ一度確定した取引から回収するんだから、簡単ではないだろうけど……そんなに難しいか?」


 取引相手を見るに、そこまで権力があるようにも思えない。

 それこそ、五芒星の権力とやらで融通が効くのではないか?


 そんな俺の憶測を、ロゥレルは否定する。


「この二人は、どちらもレア度Cのアイテムの最上限価格で取引している……つまり、確実に買い取りたかったのよ。普通だったら、名称も不明瞭と書かれたCレアの謎アイテムを銀貨一枚で取引するはずがない」

 

 商業ギルドでは、アイテムのレア度によって取引額の下限上限が定まっている。

 Cレアの場合、銅貨一枚から銅貨十枚まで……つまり銀貨一枚までで取引せねばならない。そうしないと、商業ギルドが銅貨一枚で買い取った物を金貨十枚で売る、なんて事態が発生しかねないからだ。


 そのための、アイテムのレア度という基準。

 

 ま、俺はSSレアのアイテムを銅貨一枚で売っていた訳ですがね……泣いていいかな?



 ……話を戻そう。



「最上値を払って確実に手に入れたかった……つまり」

「この二人の買取手、または属する組織自体がこれらのアイテムの本当の価値を知っている可能性が高いと見るべきね」


 つまり、『五臓六腑』と分かっていたのだ。

 古代の魔物の長、その封印された姿だと知っていたとすれば……


「……なるほど、厄介な相手になりそうだ」


 ロゥレルのように保護や回収が目的ならば問題ないのだが……そう希望通りにはいかないだろう。

 

「何に使われるか分からない。早急にコンタクトを取らないと」

「シフィア王国は隣国だからな。となると、この街に本部を構えているバレッジ奴隷商会からか」

「『始祖竜の三焦』は五芒星の他のメンバーに任せましょ」


 これからの指針は決まった。

 俺たちは『幻妖精の腸』の回収……つまり奴隷商会と話を付けなければならない。


 奴隷商会か……直接関わったことはないが、やはり良い響きではない。

 街中でも凄惨な仕打ちを受ける魔族は見かけるし……その会長が五臓六腑を買い取ったとなれば、簡単に事は進まないだろうな。




「あ、そこの君。情報提供ありがとね。もう済んだから、これで失礼するわ」

「わ、分かりました。私の方からギルド長には伝えておきますので」

「フェーク、ミミ。行くわよ」

「パパ、背負ってー」


 俺が思考に耽っていた間に、ロゥレルは撤収の準備を終わらせていたようだ。さすがに手早い。


「それじゃ、俺たちはこれで……」

「あ、あの!あなた方って、先日のサキュバス襲来を収めて下さったお二人ですよね!?」

「え、えぇ、そうよ?正確には五芒星の有する秘密兵器的なあれで、あれしたってのがあれだけど……」


 唐突に、若い女性役人が聞いてきた。

 

 と言うかロゥレル!情報操作ちゃんとやってくれよ!俺の存在を世間に曝さないための大事なことって言ったの君だよ!?


 昨日の騒ぎは強力なサキュバスの襲来で起きた事件。

 そこに偶然居合わせたロゥレルと俺が、偶然持ってた五芒星の秘密兵器的な何かで撃退し、事を収めた……。

 そういう設定で街の人々を説得し、広場の惨状の説明もつけたんだぞ!?しっかりしてくれ!


「あの、ご存知なくとも仕方がないのですが……内のギルドの役員が一名、行方不明となっておりまして……お二人なら何か知っていたり……」

「……申し訳ないけど、私たちも必死だったから……分からないわ」

「そ、そうですか……すいません、変なことを聞いてしまい……」

「大丈夫よ……じゃ、失礼するわね」

 

 ……多分、いや十中八九。

 あの銅貨三枚野郎……キュリアスを復活させたと言う男のことだろう。


 その件に関しては協力しようがない。

 むしろ俺たちが知りたい位だ。なぜ復活させ、どうやって復活させたのか。彼は何者だったのか。


 しかし、今となっては知る術もない……


「……これは、仕様がないわ。私も想定していなかったもの」

「いや、俺のミスだ。ミミが魔物の血が混ざってることに注意を払うべきだった」

「終わったことはどうしようもない……()()()本人も、この調子だし」

「パパ、次は、ご飯?」


 背負っているミミが、たしたしと無邪気に俺の頭を叩く。

 

 

 

 ……彼女の食事管理は徹底しよう。

 何を食べるか、分かったものじゃないからね。



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