とある一つの物語
死ぬ、死ぬって何だろうか。
殺す、殺すって何だろうか。
死とは何か。生とは何か。
他人はどう思うのだろうか。俺は、死ぬというのは……。
「うわ、あいつまた来たよ」
「キモっ、何でここに来るんだよ」
「来なければいいのに」
「邪魔だよね」
いつも通りの言葉。俺はそれを無視する。
「出たよ、シカト。バカにしてんのか?」
俺は無視する。
「おい、あいつに声かけるとか、馬鹿じゃねぇの?バイ菌移ったんじゃね?お前絶対近寄るなよ」
何時もの事だ。
「うわっ、キモイキモイキモイ!こっちくんな!」
俺の周りではじまる鬼ごっこ。
予鈴が鳴る。
「はーい、授業始めるわよ。席につきなさい。日直さん号令」
「起立、礼」
何時も通りの日常がはじまる。
そして、終業のチャイムが鳴り……地獄が始まる。
「おい、豚肉、お前いい加減に死ねよ」
もちろん俺は答えない。
先生はこの場にいない。
止めるものなど誰一人としていない。
いるわけがない。
皆が俺を嫌ってるから。
今日は何時もより度が過ぎていた。
「ほら、今なら自殺すれば許してやるよ」
そう言って、カッターを抜身で投げられる。
カッターの刃で俺の手は切れる。
血が出る。
俺は何かが吹っ切れた。
「自殺すれば、許してくれるの?……ふーん」
俺は、血が流れるのを見ながら、カッターを手に取る。
カッターが血塗れになる。
周囲は俺の血を見てギャーギャー騒いでいる。
俺は自然と笑みが溢れる。
「ちょうどいい機会かもね」
俺は誰に言うでもなく呟くと。
「うわぁ!こいつ、自分で喉を切り裂きやがった!」
「流石にヤバイって!先生呼んでこい!」
そこには阿鼻叫喚の地獄絵図が完成した。
俺は笑いが堪えられず、笑おうとした。
が、喉から血が出るだけで、音がしない。
身体は壊れていたのだろう。
痛みも何も感じない。
(ざまぁ……)
俺はそこで意識が途切れた。