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永遠に輝く星


 昴は今、照彦達が居る夢原に来ていた。普段は着ない黒い服を着て、気配を消している為、誰も昴に気づかない。照彦の事は桜弥から貰った『風の目』でずっと見守っていた。水晶も順調に集まっているようで、安心している。



 昴は、妖と怪の戦いが起こった事をそれで知った。朝日と太一が居たので敢えて首を突っ込まなかったが、長年妖と怪の争いを目の当たりにしているグルーチョは、心配していた。

「妖と怪は今も争い続けているのか…」

「グルーチョは知ってんのか?」

「ええ…、我が生まれた時から続いております…」

グルーチョは冥府神霊、かつて属していた獄炎の輩の中でも年長者だった。かつて世を蔓延っていた竜の生き残りで、鬼界の事をよく知っていた。


 そんなグルーチョが生まれた時から続いていたという事は、妖と怪の因縁はそれ程深いものかも知れないと昴は思った。

「夢前蒼汰が霧山家を恨んだのも、元々は妖とが啀み合ってたからだよなぁ…」

「ええ…、もう少しお互い大人しくなった方が宜しいのですが…」

グルーチョは何度も争いに巻き込まれられた。妖に一族を殺され、自身も何度も命を落としかけた。そんな事を繰り返せば自然に妖に恨みを抱くのも分からなくもない。

「蘇芳が八咫烏を使いにしてると知って驚きました、獄炎の輩達も妖に殺されたと言うのに…」

昴は、自分が無闇にこれに関わるべきではないと考え、グルーチョを置いて近くの店に入った。


 しばらく経って、昴はわらび餅を二つ買って戻って来た。昴は一つをグルーチョに渡して、もう一つを食べた。

「現世の食べ物って美味いと思います」

「まぁな…、死神もそうだがそれ以上に、人間は食べ物に執着する生き物だ」 

昴はそう言いながらせっせと爪楊枝でわらび餅を食べた。

「俺だって怪の臓物は食いたくねぇよ」

「あれまだ根に持ってるんですか」

グルーチョは、昴が冥府神霊のヨッタの臓物を食べさせられ、結局食べなかった時の事を思い出した。怪である自分には分からないが、昴にとっては不味かったらしい。

「俺は食わなくても飢えねえし死なねえ。年から年中霊力不足で飢えてる祖父さんとは違うんだよ。それに、どうせ食うなら美味いもの食いたいし」

現世に来てから昴は、食べ物ばかり買っているとグルーチョは思った。現世で育ったのでそちらの食べ物の方が口に合うのだろう。


 食べられそうなものは魂でも死体でも食べていたグルーチョには、食べ物にそこまで執着する理由が分からなかった。

 それでも、現世の食べ物は普段食べるものより美味しいとグルーチョは思う。だが、妖との争いを考えているせいで、味がしなくなった。

「争いは繰り返され、仲間を失い、憎悪と苦しみの渦中に我らは居る…」

「それでも、俺はこの世界で生きていかなければならないって事よ」

昴は、そう言いながら最後の一つのわらび餅を食べた。


 自分を知る者が一人も居なくなっても、昴は生き続ける。永遠の命はある意味不自由なものだと昴は思った。

 照彦を介して夢前の情報を手に入れた昴は、夢原を後にした。次に行く場所はもう決まっている。二つはそこに向かって行った。



 





 昴が留守の冥界は、今も混乱している。そんな中、智は妖と怪の争いに首を突っ込んでいた。それを知ったエメルダは、王宮に智を呼び出し、話をする。

「智さん!どうして妖と怪の争いに首を突っ込んだのですか?!」

「チルがどうしてもって言うから…」

智は背中にずっとくっついているチルを見て、そう言った。チルは、智を責めるエメルダが怖いのか、顔を伏せていた。

「何で怪と共に居るんですか?放っておいても生きていけるでしょう?」

「チルは俺の友達だ、それに…、放っておいたらまたナイトメアに襲われるかもしれないし」

智はチルの頭を撫で、身体を寄せた。

「死神は死を司る者です、生きる者には極力関わるべきではありません」

「どうしてそんなに現世の事を、他の世界を嫌うんだ?」

「私達は冥界に住まう者、他の世界にはあまり干渉しないほうが宜しいのです」

智は、保守的な考えを持つ死神は、現世を穢れた世界と言って毛嫌いしているという話を思い出した。


 智の父親の廉がその話を聞かせてくれたが、現世を嫌う死神の考えを変えるのは難しいと、エメルダを見て思う。

「現世が穢れていると考えているのならそれは違う、現世の人々や状況を見て、俺達も変わり続けてなければならない」

エメルダは唇を噛んで、逃げるように去ってしまった。

「エメルダ!」

智はエメルダを呼び止めたが、追いつかない。



 智はエメルダを追うのを諦め、チルと並んで座った。すると、誰かがこちらに向かって来る。

「智様、どうされましたか?」

エメルダの事で頭を悩ませている智の前に現れたのは、ジクだった。ジクは智の横に来て、お辞儀をする。

「エメルダが俺の言う事を聞いてくれないんだよ…」

「エメルダの事をお気にされているのですね」

ジクは智の横に座った。

「冥府の役人の多くが純系の死神である事はご存知ですか?」

「純系の死神…?」

「月輪様の娘達に最も近い血筋をもつ死神の事ですよ」

ジクは、智にその説明を始めた。


 考えてみれば、ジクも智も純系の死神だった。特に智は、月輪の長女、紅姫の子孫で、他の火の死神よりも強大な力を持っている。血が濃いという事も、智が慕われる理由の一つだった。


 だが、智は血筋よりも実力の方が大事だと思い、あまりその事を考えた事がなかった。

「純系の死神は保守的な考えの者が多いのです…、廉様もよく智様が玲奈さんと結婚し、子供を産むことを許しましたね」

「父さんもその辺の事は気にしない人だったよ。それに、俺は奇形だからあまりその辺の事とやかく言えないし」

ジクはエメルダが行った方を向いた。

「エメルダは氷の死神、氷姫の子孫です。あの一族は保守的な考えの者が多く、医者の家系です。エメルダも若いはずですのに、その考えに染まってしまって…」

智は、エメルダが気の毒に思えてきた。


 若い時に現世に行って、様々な人の考えや知識を吸収すべきなのに、頭ばかりが大きくなってそれが出来ない。

 幼い時から現世に居て、玲奈達に出会えていなかったら今の智は居ないだろう。自分も、生き方によってはエメルダのようになってしまっていたかもしれないのだ。

「智様、考えても仕方ありませんよ。行きましょう」

ジクは立って王宮の奥に入っていく、智も立ってそれに付いて行こうとした。

 すると、チルが智の裾を引っ張ってこう言う。

「智さん、私も現世に行きたいです!」

「いつか連れて行くよ」

チルは跳ね回って喜んだ。智はそんなチルの頭をくしゃくしゃと撫でた。


 そして、チルはコウモリの姿になってフードの中に入っていった。それを見てから智は、ジクが行った場所へ向かって行った。

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