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妖と怪の大決戦!


 照彦と絢音、小魂は怪軍の本拠地から走って行く。妖も怪も、人間とは掛け離れた姿である事が多く、見た目だけでは判断出来ない。


 照彦は、目の前に襲いかかって来る者達を妖と怪関係なくただひたすら倒していた。照彦の手には、普段の鎌ではなく、フォルシアから貰った骨突がある。それに気づいたフォルシアが、照彦に声を掛けた。

「それ、私の骨突よね?」

「怪や妖達は一癖ありますから、一癖ある鎌で倒そうと思いました」

フォルシアは奥の方を見た。そこでは、ビガラスが風水華で妖達に向かっている。

 風水華は、照彦がビガラスにお土産で渡したものだった。まさかこうして使ってくれるとは、照彦は少し嬉しい気持ちになった。

「私の骨突も風水華も使われてる!嬉しいわね」

「感激するな、ぼーっとしてると襲われるぞ?」

コークスはフォルシアを横目に怪や妖をどんどん倒していく。



 すると、ドルフィンがコークスの横に現れた。ドルフィンは、コークスの技で焼けた地面を水で覆い、火を消していく。

「コークス!遅れてごめんよ」

「ドルフィン、本当に来るとはな」

ドルフィンとコークスは背中合わせになり、一斉に技を放った。その衝撃で二人を取り囲んでいた妖達はあっという間に吹き飛ぶ。

「あの二人、本当に仲が良いのね」

「そうですか?」

照彦は、絢音と小魂がすぐ近くに居るか確認した。

 今の所二人は襲われていない。妖も怪も、お互いの事に必死で、二人の事が見えていないのだろう。

「俺はどちらが勝つかよりも、絢音と小魂が奴らに食われないか心配ですよ」

「そうなの、頑張ってね」

フォルシアは、照彦から離れ、妖達に向かって行った。




 その一方、ペグルと夢叶は妖軍の本拠地で、攻め寄る怪達を撃退していた。

「久々の戦いは疲れますね…」

「夢叶、これは遊びじゃないよ」

ペグルは寒月に指示を出しながら、こう続ける。

「妖と怪の生存をかけた本気の殺し合いだ」

ペグルは、杖に力を蓄えると幾千もの光の矢を繰り出して放った。怪達は蒸発するように消え飛んでいく。

「ペグルさんは容赦ないですね」

「怪に情けを掛ける余裕はないよ」 

ペグルは冷たい眼差しで怪達を倒していく。どれだけ倒してもペグルの表情は変化せず、その様子に夢叶は恐怖を感じた。

「ペグルさん、いつもと様子が違うような気がしますがどうしてでしょうか?」

「違う?僕は普段と変わらないけど?」

ペグルの目には光が宿っておらず、夢叶と話をしているのに顔を合わせていなかった。夢叶はその事を聞こうとするが、ペグルは戦いにこれ以上ないまでに集中している。

 ペグルは周囲の怪が全て消え飛んだ事を確認すると、夢叶を置いて何処かに行ってしまった。



 智はチルと共に、お互いの本拠地の中間地点で、チルと共に妖達に向かって行った。

「智さん、大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない」

チルは自身の霊力で造った紫色のバトンを取り出すと、幻影花の蔦で周囲の妖達を締め上げた。

 妖や怪達にも、産まれ付き持った属性というものが存在する。死神と異なり属性は多色で、同じような属性でも性質が異なったりする事もある。幻影花から産まれたチルは、幻影花を繰り出す草属性の技を得意としていた。


 チルはふと妖側の方を見た。そこでは、緑丸が刀を振って怪達に立ち向かっている。

 それを見て、チルはせっかく妖の緑丸と分かり合えた気がしたのに、こうして戦っているのか分からなくなってしまった。

「どうして私、妖と戦ってるんでしょう…」

「妖と怪の対立は昔からあった、俺も詳しい事は知らないけどな」

智はチルから離れると、怪達に向けて鎌を振りかざした。



 その一方、妖の本拠地では緑丸と兄の紅丸が向かい合わせになって立っていた。怪達はペグルによって撃退されてはいるものの、完全ではなく一部が奥の方に向かってくる。

 二人は朝日の一方手前でそれを止めようとした。

「兄さん、行くよ!」

「おう!出遅れるなよ!」

紅丸は拳を、緑丸は刀を握り締め、一斉に技を放つ。

「『旋風翼』!」

「『赤獄炎』!」

二人の技は合わさって渦を巻き、怪達を吹き飛ばした。それを見て、近くに居た真白も飛んでくる。

「私もいきます!『大吹雪』!」

真白が団扇を大きく振ると、吹雪が吹いて、残った怪達は全て氷漬けにされ、遠くに吹き飛んでいった。

 そうして、八咫烏の三人は、朝日のすぐ目の前で、怪達を食い止めていた。




 朝日は、周囲の霊力や妖力の分布を見て、突然大将の椅子から立ち上がった。

「なぁ緑丸、俺も戦っていいか?」

「朝日様はこちらでじっとしていて下さい!僕達が食い止めますので!」

「太一は戦ってるみたいだぞ?」

 朝日は、怪側の『風』の中に太一のものがある事に気づいていた。怪軍の大将である太一が戦ってるなら、自分も戦わなければならない。

 朝日は、自身の鎌『妖閃』を手に持つと、大きく前に出て技を繰り出した。

「『妖緑火』!」

 朝日の技は他の妖達とは比べ物にならない程強力で、妖の本拠地の周囲の怪達が一瞬にして消えてしまった。




 戦いの現状は誰も知らない。妖と怪、どちらが今のところ勝っているのか、押されているのか、戦っている本人達も分からないようだった。それぞれ、目の前の事に必死で、視野が狭くなっている。

 そんな中、太一は他の鬼達に混じって戦っていた。太一は、左腕に巻いている数珠を外して戦っている。だが、完全には封印を解いていなかった。

「なぁ太一、封印を解いたらもっと強くなれるはずなのになんでやらないんだ?」

蘇芳がニヤニヤしながら太一に近づき、左腕を見る。

「封印を解いたらどうなるか僕も知らないから…」

太一は、封印を完全に解いたら自身や周囲に危険が及ぼす事を何となくだが察していた。鬼の身体になった自分を戒める為に、数珠以外にも幾つか封印が施されている。

 太一は、左腕に巻きつけられてあった数珠を握り締めると、蘇芳を退けて妖達の方へ向かって行った。



 照彦は、絢音と小魂を怪達から守りながら戦っていた。先程まで二人に気づいていなかつた怪達が、どうやら二人に気づいてしまったらしい。


 人間も魂喰虫も怪にとっては格好の餌食だ。いつどのように襲われるか分からない。それが分かっていた照彦は、

「二人とも、気をつけろよ!」

照彦は二人に集中していて、背後に被さる怪に気づいていない。それに気づいた小魂は身体に似合わない大声を上げる。

「てるひこ、あぶないっピ!」

 小魂は照彦の前に現れると、光の弾を繰り出して怪達を退けた。照彦は、小魂が技を使えるとは思わず、一瞬手が止まる。

「小魂、いつの間にかそんな技使えるようになってのか?」

「てるひこの力をもらってたら、いつのまにかつかえるようになってたっピ」

「そうなのか…」

照彦は、小魂と一緒になって技を放つと、周囲の怪は浄化され、消えていった。



 それを見て照彦が一安心したその時、絢音の足元の地面が崩れる。どうやら、怪達が暴れた影響で、地盤が脆くなっているようだった。

 照彦は絢音の腕を掴んだ。だが、照彦の足元の地面も崩れ、二人で一緒に落ちていく。

 小魂は二人を助けようと飛んだが、間に合わず、底に落ちていく二人をただ茫然と眺めていた。

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