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半仙、活躍する


 ペグルの父親らしき仙人は、ようやくペグルに会えたと思い、喜びを隠せなかった。ペグルは、生前と変わり果ててしまった姿を見て、戸惑い、混乱する。

「父さんが、まさかここまで変わってしまうだなんて…」

「それはペグルもそうなんじゃないか?」

「そう…?」

ペグルは、自分の髪の毛を触った。すると、天久が屈んでペグルと視線を合わす。

「そうなったのは僕のせいだ、すまないね」

天久がそう謝ると、ペグルは、どう返せばいいのか分からなくなってしまった。


 ペグルの父親である霧山久は、仙人になってからは天久と名乗っていた。霧山の仙人は神界では有名な存在で、天久は他の仙人からも一目置かれている。

 霧山家の長男は、死後仙人になる事が決められていたが、他の仙人達は、生前徳を積んだ者が生まれ変わった存在だった。仙人は皆、髪の毛は白くて長く、常に穏やかな表情をしていた。


 ペグルは、今まで聞きたかったが中々聞けなかった事を父親に聞いた。

「そうだ、父さんはどうして急に仙人になったの…?」

すると、天久は眉を潜めた。

「白蛇の怪に殺されたんだ」

「白蛇の怪に…?」 

ペグルは、以前その怪に襲われた事を思い出した。



 白蛇の怪は、かつて霧山家が封印したと言われるが、ペグルの目の前に現れ、執拗に襲って来た。白蛇は封印した霧山家を恨んでいるのだろうか、ペグルの父も同じように狙われた。

「絵巻物で見たあいつが復活したとはね…、荒くれ者の白蛇は元々夢守が使役していたはずなんだが、その夢守が居なくなってからも暴れて、ご先祖様が封印したはず…。」

「ペグルが妖を使役するように、怪を使役する夢守も居るって事…?」

照彦は、あの白蛇を使役する程の人物が居たという事に驚いた。

 そして、妖と同じように怪も使役できるという事を知り、照彦は小魂も使役出来るんじゃないかと考えた。



 ペグルは、周囲に居る仙人達と、真莉奈を見比べてこう言った。

「仙人はみんな髪の毛が白いけど、真莉奈さんだけは違いますね」

「私は、仙人を模した姿だからね。ペグル君や他の仙人達とは違うんだ」

「そうですか…」

照彦は、分かったような、よく分からないような気持ちになった。



 すると、天久は立ち上がって歩き始めた。どうやら何かの目的があるらしい。照彦とペグル、それからルピナスとオリフィスは一緒になって付いて行く。

「そうだ、ペグルに頼みがあるんだ。」

天久は、仙人が棲む域の端を指差した。そこには、石で出来た小さな塔がある。

「ここには四つの宝塔がある。だが、その塔は下界の怪の侵食を受けているんだ。それを直してくれないか?」

 照彦は、天久の突然の頼みに戸惑った。ペグルは、何があっても大丈夫だと、杖を手に頷く。

「そうだ、もし戦う事があっても、相棒は呼び出せないよ」

「そうなの…?」

ペグルは、いつものように寒月を呼び出そうとしたが、近くには居ないらしく、姿を現さなかった。


 ペグルは、普段寒月に戦う事を任せていた。ところが、その寒月は此処には呼び出せない。ペグルは、自分の力で戦わなくてはならないのだ。

 ペグルは急に不安になった。相棒が居ない中、自分はどうやって戦えばいいのだろう。



 すると、照彦がペグルの横に立った。

「ペグル、俺が居るから大丈夫だよ」

「照彦君…」

真莉奈は、照彦を見てこう言った。

「そうだ、水晶の話は昴から聞いてるわ。この宝塔には有水晶、無水晶が安置されている。元々この二つは世界が始まったと同時に産まれたもので、天帝様が二神の命によって預っていたんだけど、危機を受けてここに移動させたんだ。」

「そうだったのですか…」

照彦は、ポケットの中に入った組紐を見つめた。

 そこには既に二つの水晶がある。そこに有水晶と無水晶が加わるという事は、水晶は四つになるという事だ。照彦は、思ったよりも水晶が順調に集まってきているなと思った。



 そして、照彦とペグルは、二人で宝塔の前に立った。宝塔の石は崩れ、中の二つの水晶が見えている。照彦がその水晶を手に取ると、二つの水晶は一人でに動き、組紐に付いた。

「これ、俺達が持って行って大丈夫なんですか…?」

「私は何も存じませんが、天帝様は良いと仰っておりました」

照彦は、世界が産まれた時に産まれたという貴重な水晶を、自分が持って行って良いのかと不安になった。

 だが、天帝の許可が出ているのなら良いのだろう。照彦は、ガラス細工を持つような手で、組紐をポケットの中にしまい直した。



 その後、照彦とペグルは、一つ目の宝塔を積み直した。そして、二つ目、三つ目も同じように積み直す。宝塔は崩れていたが、侵食した下界の怪の気配らしきものは感じない。ペグルは、それを不審に感じた。

「宝塔が崩れているのもおかしいけど…、侵食した怪が居ないのはおかしくない?」

「そうかな…」

照彦達はそう言いながら、四つ目の宝塔に向かった。


 四つ目の宝塔は、今までの宝塔と同じように崩れていた。照彦達は、石を積み上げ直して、塔を完成させる。

 ところが、今までと様子がおかしい。完成させた塔は真っ黒で、禍々しい気配を発している。

 天久は弓を持って矢をつがえた。そして、宝塔に向けて矢を放つと、石の隙間から黒いドロドロしたものが漏れ出す。




 そこから現れたのは、狸の姿をした真っ黒な怪だった。ペグルは杖を構えて一歩前に出る。

「ペグル!俺も戦うよ!」

照彦が鎌を取り出して向かおうとすると、ペグルは首を振った。

「待って!僕にやらせて」

ペグルは、一人前に出て、狸の目の前に立った。



 そして、ペグルは、自分に技をかけると、自ら進んで狸の前に突っ込んでいく。狸は、姿を変えながら、ペグルをけしかけるように逃げて行った。

「逃さないよ!」

ペグルは、杖で円を描くと、白い光で狸を拘束した。ところが、狸はそれをすり抜けて行く。

「『仙術・白霞』!」

ペグルは、霞で狸の動きを封じると、光で狸を焼いた。狸は光によって浄化されていく。

「やった!」

 ところが、狸は最期の力を振り絞って、光から逃れた。そして、巨大化してペグルに襲いかかる。

「危ない!」

照彦がペグルの前に出て、狸に光の槍を突き刺した。狸は、叫びながら浄化され、消えていった。


 ペクルは、照彦の圧倒的な力に驚きと戸惑いを隠せなかった。

「凄いね…、やっぱり照彦君は強いよ」

「そう…、かな」

照彦は、鎌をしまいながらそう呟いた。

「でも、ペグルも一人で戦えてたね。良かったよ」

「そう…?ありがとう」

ペグルも、杖をしまって頷いた。



 その後、照彦とペグルは、天久に現世の暮らしについて聞かれた。

「ペグルは、今も照彦君と二人なのかい?」

「ううん、転校生の日岡絢音ちゃんっていう子とも仲良くしてるよ」

「友達かい?」

「うん!照彦君もそうでしょ?」

照彦は、ペグルのように素直に答える事が出来なかった。

「絢音は俺の…、何だろう」

ペグルと同じように友達と言うべきなのだろうか。照彦はペグルよりも絢音と親しくしている。

 それなら、恋人と言うべきだろうか、だが、それにしては二人の関係は薄い気がする。

照彦は、それをはっきり答える事が出来なかった。





 その後、二人は天久と真莉奈にお礼を言った。

「父さん、それから真莉奈さん、ありがとうございました。」

「何かあったら、またおいで」

天久は、照彦とペグルの両方を見ながら、笑顔で手を振った。



 そして、二人は冥府の王宮に続く光の塔まで歩いて向かう。照彦の頭の中は、絢音への謝罪の言葉の文面が次々に浮かんで、いっぱいいっぱいになっていた。

「帰ったら絢音にちゃんと謝らないとな…」

「そうだね」

 照彦は、あれから絢音の事をずっと気にしていた。今頃、絢音が照彦の何かを考える暇が無い程に、かんかんに怒っているに違いない。


 照彦は、用事を終えたので、飛んででも絢音の元に行きたかった。

「何とかして、絢音に謝らないとな」

「頑張って、僕も一緒に謝るから」

ペグルも絢音に謝ると聞いて、照彦は安心した。昔から謝ることは苦手だが、二人で謝るなら、心強い。

 照彦は、ペグルと一緒なら、絢音とよりを戻せると期待した。


 そう話しながら、光の塔に辿り着いた二人は、その中に入った。そして、その中に入ると、一瞬で神界を後にした。




 その様子をオリフィスとルピナスは、空から見下ろしていた。ルピナスは何やら気になる事があるらしい。

「風見照彦、下界の死神で、冥府神皇昴の孫であるはずですよね?」

「あの子供の死神が、どうされたのですか?ルピナスさん?」

「何故私達と同じような力をお持ちなのでしょうか…?」

ルピナスは、先程照彦が放った技の事を気にしていた。



 光の力というのは天帝の力であり、その力を分け与えられた天使の力だ。だが、それを神界とは関係ない、下界の死神である照彦が持っている。

 本人にはその自覚はないようだが、ルピナスは下界の者が光の力を使うなど、言語道断だと思っていた。

「注意すべきでしたのでしょうか…、何故、死神が光の力をお持ちなのでしょう…」

「所詮は子供の死神でしょう、たまたまですよ」

オリフィスはそう呑気に言うものの、ルピナスは真剣に考えていた。

「天帝様は何をお考えになられているのでしょうかね…」

 二人は、そう話しながら翼を広げ、何処かに飛んでいってしまった。

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