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火山屋で一息


 照彦は、小魂を肩に乗せながら、馬車乗り場まで向かった。小魂は、これから何処に行くのかと思いながら、照彦を見上げている。

「にしても、良かったね照彦君、使役する怪が出来て」

「使役って…、こいつ、一緒に戦えるのか?」

「ピッ!」

小魂はそう自信満々に答えた。

「ホントに?見た目弱っちいのによ」

「ピッ……」

 弱っちいという言葉に反応したのか、小魂は怒って身体を膨張させた。十センチくらいだった体長は、十メートルになる。身体は黒くなり、尻尾の炎も赤く燃え上がった。そして、大きな口を開けて、照彦の身体を呑み込んだ。

「照彦君!」

「お前…、よくもやってくれたな…」

 照彦は、小魂の身体を難なく抜け出し、光の矢で突き刺した。小魂の身体はあっという間に縮んでいく。

「ピュ〜……」

「さっきの事は謝る、だが、これはあんまりだぞ、小魂」

小魂は、照彦の頭の上に乗り、謝るように頭を下げ、ヒレを合わせた。

「小魂ちゃんも反省してるみたいだね?」

「そうか…?」

照彦は、頭に居る小魂を撫でながら、不思議に思った。


 そして、馬車に乗って照彦達は火山屋に帰った。居間に上がってフォルシアに会おうとすると、そこに冥府神霊の一人のヨッタが居た。

「あれ?ヨッタが居る」

「こんにちは、照彦様」

ヨッタは、剥き出しの腸を下げて、お辞儀をした。

「知り合いなの?」

「似た者同士という事で仲良くしております」

すると、そこにフォルシアが現れた。フォルシアは、ヨッタが肩に来る程に背が高く、男性並みである。

「フォルシアさんって身長高いですね…」

「そうなの、血筋とかは関係ないんだけどね。奇形の影響かしら?」  

「いいなぁ…」

絢音は、自分が背が低い事を気にしていた。


 男子はおろか、同年代の女子よりも遥かに背が低い絢音、小児科の先生は、発育には問題ないものの、このまま大人になっても大きくはならないだろうと仰っていた。

「どうやったら背は伸びるのですか?」

「絢音ちゃん、背伸ばしたいの?」

「うん…」

すると、照彦が絢音の前に座って、そっと肩を持った。

「何そんな事気にしてるんだよ、絢音は絢音のままでいいって」

「そう…、なの?」

絢音は照彦を向いて首を傾げた。



 フォルシアとヨッタは、近くに寄って話を始める。

「私とヨッタ君はよく一緒に戦ってるよね?」

「この前もフォルシアに助けもらってね〜、ホント危なかったよ」

「そうじゃそうじゃ、コークスといいフォルシアといいどうして鍛冶屋なのに戦闘狂なのじゃ?鍛冶屋は戦う死神の為に武器を造るのが常じゃろう」

マグマが横槍を入れるが、誰も気にしない。

「フォルシアさんって現世で修行してたんですか?」

「そうよ、三目良枝っていう偽名を名乗ってね、楽しかったわよ」

フォルシアはそう言って皆に現世の話をした。


 フォルシアは、火山屋に弟子入りする前に現世の鍛冶屋で修行をしていたのだ。新米だったフォルシアは、そこで鍛冶について学び、実践してきた。そこで一人前になったフォルシアは、その鍛冶屋を継がず、冥界に帰って火山屋に弟子入りしたのだ。


 パミスとスコリアもやってきて、フォルシアの話を聞いた。話が終わった後、矢継ぎ早に質問を飛ばす。

「現世って楽しい?」

「食べ物美味しいんでしょ?」

パミスとスコリアは、まだ現世に行った事がない。それで、フォルシアの話を興味津々に聞いていたのだ。 

「ええ…、いい所よ。今度二人も連れてってあげるわ」

「「やった〜!」」

二人は、大喜びしてはしゃぎ回った。

「でも、目があるのに現世に行って大丈夫だったのですか?」

ペグルが、言われないと気づかないような素朴な疑問を口にした。

「ああ…、そうね。マフラーは外さなかったし、インチキだけど霊能者に頼んで封じてもらってね、一応大丈夫だったわよ?」

 フォルシアは、今はマフラーを着けている。恐らく、そこに封印をする為の何かが入っているのだろう。照彦達は、フォルシアがマフラーを外した所を見た事がなかった。


 照彦はフォルシアに先程、小瓶を買っていない事を報告していない事を思い出した。

「あ、申し遅れました。小瓶について俺のだけ特注で造らないといけないって言われて…、まだ出来てません」

「そうなの?分かったわ」

「今、冥界ではナイトメアっていう怪が暴れまわってるんだ」

「ナイトメア?」

「悪夢隊とも呼ばれる怪どもです。ご存知ないですか?」

照彦が首を振ると、ヨッタが説明を始めた。



 昴が王宮を出て行ってしばらくした後、突然ナイトメアと呼ばれる封印されたはずの怪が、冥界の各地で暴れ始めた。ナイトメアはどれも強力な怪で、冥府神霊でも実力者であるはずのヨッタでも苦戦する程だった。

 ナイトメアである証拠は、頭にある目の紋様、照彦達はそれに覚えがあった。

「目の紋様…、あの蛸や蠍の怪にあったよね?」

「あの蛸の怪…、夢前と一緒に居た」

「えっ?!」

それを聞いて一同は驚き、声を上げた。

「夢前と…、一緒に?」

「恐らく、あいつと関係があるんだ。ナイトメアは青波台…、現世でも現れている」

「そうなのですか…、それは初耳です」

照彦は、何故冥界で暴れているはずの怪が、自分達の所にやって来ているのか、疑問に思った。


 その一方で、小魂は、小桃と一緒に何か話している。小魂の方は顔を赤く染め、少し恥ずかしがりながら喋っていた。どうやら、小魂は小桃に恋をしているようだった。

「魂喰虫同士仲良くしてるのね」

フォルシアはその様子を微笑ましく見ていた。

 照彦達には小魂と小桃が何を話しているのか分からなかったが、きっと楽しい話をしているんだと思っていた。


 そして、ヨッタは王宮に帰ってしまった。その日の晩も、照彦達は火山屋に泊まった。照彦達が眠っている間、一人の女性が大きな包みを持って、火山屋を訪ねる。


 フォルシアが扉を開けてみると、そこにはクリスが居た。クリスは照彦の瓶を完成させてわざわざ届けに来てくれたのだ。

「フォルシアちゃん、夜遅くにごめんね?」

「クリス伯母さん?!どうしたのですか?」

クリスは、包みに入った瓶を取り出した。

 その瓶は、店に売っている小瓶よりも大きく、ワインが入った大瓶くらいはある。蓋には太陽の装飾が施され、中には橙色の液体が溜まっていた。


 フォルシアは、まさか自分が頼んだものがこういうふうに返ってくるなんて予想していなかった。

「特注の瓶ってこれですか?!でも…、これでやっと照彦君の鎌を直せます、ありがとうございます!」

「私の事は良いわよ、さっ、頑張って完成させてね!」

フォルシアは、照彦の瓶を持つとすぐに作業場に向かった。そして、夜通しで照彦の鎌を打った。

 コークスとマグマが途中起きてきて、手伝おうかと言うが、フォルシアは、これだけは自分の手で完成させると言って聞かなかった。

 そして、日の出と同じ頃、照彦の鎌はようやく完成した。照彦の鎌は、日の光を浴びて輝いていた。




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