Saho 03
… … …
彼は、私のヒーローだった。
「なんで泣いてるの?」
仲間はずれにされて、一人ぼっちで唇をかみしめ涙をこらえていたわたしに、声をかけてくれたのが彼だった。身体が小さく、周りの遊びになかなかついていけない私は、みんなから置いてきぼりにされることが多かった。一緒に遊びたいのに遊べなくて、でも涙を見せるのは悔しくて、よく俯いていたように思う。その日は、特に嫌なことがあって。どうしても涙がこらえきれなくて、滑り台の陰に隠れて泣いていた。
「こんなところで何してんの。」
私を見つけた彼は驚いたように目を丸くして、涙にぬれた顔を見てほんの少し眉を下げた。くしゃくしゃ、と乱暴に頭を撫でて、やさしく笑った。
「そんな顔してたら楽しいものも楽しくなんないよ。」
彼は、わたしのヒーローだった。ひとりぼっちで苦しんでいたわたしに手を差し伸べ、苦しみからからすくってくれた、ヒーローだった。差し出された手は優しくて、こちらを見つめる瞳は、きらきらと輝いていた。
「遊びたいんでしょ、一緒に行こう。」
にかっと笑った彼は、暗い気持ちを明るく照らす、太陽のような人だった。
… … …