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ネガティブ小噺【人の夢と書いて儚い】

作者: 橘 一真

 どうも皆々様方、今宵もお越しくださいましてありがとうございます。

 今宵お話しさせて頂くお話は、

 「夢は持っていた方がいい」

ということでございます。


え?前と違ってネガティブじゃないって?

そう決めつけるのは早計ですよ、まぁちょっとは話を聞いてみてくださいな。


 人の夢と書いて儚いなどと申しますがね、最もだと思う半面、あの言葉がどうも鼻につきましてね。というのも夢っていうものは、まさにそのとおりでございまして確かに手に届かない、文字通り儚いものかもしれませんが、ひねくれた私からしますと、この漢字を作った人間?いや読み仮名を付けた人間のいやらしいニヤけづらが目に浮かぶのでございます。


 うんうんと頷いていられる方はそれを叶えた方もしくは叶えられなかった方どちらかはわかりませんが、人間年令に関係なくある程度の経験をするとこう思う次第であります。

 キョトンとしているそちらのお嬢さんはまだ夢見る少女でいる感じですかね。私なんてものはもう夢見る少女じゃいられないって有様です。


 前置きはこのぐらいにさせていただきまして、私にも友人……いやこう言うと相手が嫌な思いをするかもしれませんので、たまにお酒を飲む程度の知人がおりまして、そいつはなんといいますか真面目を人間にしたらこうなるんだな、といったような男でございます。

酒の席とこのような噺の席であれば、私もこのようにハキハキとしゃべることができるのでござます。私の話はともかくですね、ふと思いついていやらしいことを聞いてみたんですよ、

「お前さんいつも真面目に働いてて、あんまり遊んだりしてないみたいだけどなんか夢でもあるのかい?こうでっかいもの買うとか?」

 シラフになった後、思わず私嫌われてないかと確認してしまうようないやらしい質問ですよ本当。ところがそんな質問をしたにもかかわらずその男は嫌な顔をするどころかニコニコしやがったんです。

「なんだいニヤニヤしちゃって?」

「いや、そうだな。あぁ別にお前に気が合ってニヤニヤしてるとかそういうわけではないから安心してくれ。もうすぐ夢が叶いそうなんだ」

「いや、一言余計すぎるだろ」

とまぁ、このように気が合うと行うか同じ穴のムジナって感じの男ですね。

「でも、夢が叶いそうってのはいいことだ。どれ前祝いに一杯奢らせてもらうよ。そこのおねーさん生を一つ頼むよ」

「ありがとう、それでな今その夢がかなった」

「へ?」

 私が店員に生中を頼むと同時にそんなことをいってきたんです。

「いやどういうことだよ?今の一瞬で何があったんだ?ほら、とりあえず飲め、そして今あったことを吐きやがれってんだ」

「落ち着け落ち着け、簡単に言うとだな、今日お前に一杯奢らせるっていう夢が叶ったんだよ」

「へ?」

 思わず気の抜けた返事をしてしまいましたがその瞬間にはそれ以外の言葉が出ませんでした。

「ずいぶん間抜けな顔してるぞ」

「うるせえやい、ともかくそのなんか妙にちっちゃい夢のことを説明しやがれ」

 私の引っかかった事はそれでした。夢と語る割にはずいぶん小さいような、いや夢に小さいも大きいも無いとは思いますがずいぶん期間が短い、そう感じました。

「いやまさにそのとおりなんだ。ちっちゃい夢だ。うん、ちっちゃい夢だな。でもな毎日働いて帰って税金払って寝るってだけじゃつまんねえだろ?そこで俺は夢を持つことにしたんだ」

「あぁ、まぁそれはいいことだとは思うぞ」

「でもな生涯をかけて叶えるような夢ってのは往々にして儚いとか言うだろ?なんかこの儚いっていう言葉が俺は嫌いでな、確かに大きな夢ってのは必要かもしれないけどそもそもその夢が儚くなる前に叶えちまえってことで基本的には毎週単位、気が乗ったら月単位で夢を持つことにしたんだ」

ここで私は思ったんです。こいつの言うことは最もだだとは思いますがある一つの感情が生まれましてね。

「なんかすっげー騙された気がするんだけど……」

「騙してねえよ、それに口八町でどうにかするのはどちらかといえばお前の仕事だろ?」

「いやそりゃそうだけど、なんつーかお前、詐欺師向いてるかもしれないぜ」

「いやいや俺にそんな大それた夢はないぜ。今日はこうして夢も叶ったわけだし。来月の夢を考えるかね」

「まぁ私としても噺のネタにできそうだし、しゃぁない今日の一杯はおごってやるとするよ」

「そりゃありがとな。ところでさ--」

 そんなこんなで、一杯食わされた感はありましたがこの日はその後とりとめもない会話をしてそりゃもう健全に別れたのでございます。

 


 皆様も大きな夢の他にちっちゃな夢を設定して儚いって言葉に抗ってやりましょうやっていうのが今回のお話です。

 え?私の今の夢はって?それはもちろん

「今日の私のこの話を皆々様が面白かったとここには来ていない人に話して笑っていただくことでございます」



 それでは真打ち登場まで今しばらくお待ちくださいませ。私はこの席から下がると完全に電源OFFモードに入ります故トイレで美少女を見かけてもお声がけなさらぬようお願いします。


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